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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
1章 すべての始まり
  4話 救出劇と再会

 
前書き
 どうも、白泉です!再びテストからの現実逃避をしております!
 先ほど恋愛小説を数本読んでいたのですが…最近涙腺が緩くなってしまって、それだけで泣いていましたwでも、自分では感動できることはとっても大切だと思っていますが、友達と映画などに行ったときに、一人だけ顔がぐちゃぐちゃになっているのはいささか悪いかなぁと思っておりますw
 さて、今回はいよいよ原作の主人公が出てきちゃいます!うちのオリキャラとの絡みや関係が気になるところです。では、どうぞ! 

 
 現在、リアとツカサはまだ日が昇らぬうちに、次の村へとフィールドを疾駆していた。SAO配信がされて、茅場のチュートリアルがされるまでの4時間半の間にかなり過激なレベル上げをしたために、すでに二人のレベルは5と、ほかのプレイヤーよりもかなり前進していた。そのため、レベル1でも安全に通り抜けられるルートを走っている彼らはらくらくと余裕を持つことができていた。


 ポップするモンスターを最小限の一撃で瞬殺しながら草原を突っ切ると、今度は深い森へと入ることとなる。迷路じみた小道を抜けなくてはならないが、この辺りはリアもツカサも熟知しているため、こちらも最短距離で駆け抜ける。それでもその先の”ホルンカ”という村が見えてきたときにはすでに日は昇っていた。


 それもそのはず、はじめに述べたように、この浮遊城アインクラッドは円錐形の形をしており、最大となる1層の直径は10キロにも及ぶ。次の村でさえかなりの距離を走らなくてはならない。


 このホルンカという村は、小さいが、ちゃんとした圏内で、宿屋や武器屋、道具屋などもあり、しかも周辺の森には、麻痺毒や武器破壊といった危険で厄介なスキルを持つモンスターはいないため、ソロで行動する者にとっては格好の狩りの拠点だろう。


 焦点を合わせても十数棟しかない小さな村に、同じく小さなゲートから入る。すでにあのチュートリアルから2日も経ってしまっているのだから、彼女らと同じβテスターがこの村に来ていてもおかしくはない。だが、まだ日が昇ったばかりなので、宿屋にいるものがほとんどだろう。

「始めに何する?」
「そうだな、じゃあ武器屋に行って装備を新調するか?」
「うん、そうしよう」
 

 短い会話をしてから、「INN」と書かれた看板がかかっている宿屋のもう一軒奥の店に入る。もちろん、プレイヤーが経営しているわけではなく、NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)と呼ばれる、システムが作り出した、人に似せたキャラがアイテムの買取や注文を受ける。

「らっしゃい。何をお探しで?」


リアとツカサが店内に入ると、胡散臭そうな老齢の男性NPCが話しかけてきた。特に仕事の容量と容姿とは関係ないので、そこは安心できる。
 2人は初めの狩りで手に入れたアイテム素材を売り、少し増えたその金額でリアは簡素なベストと胸当て、ツカサは革のハーフコートを購入する。そのまま即時装備ボタンをタッチすると、その買った装備がすぐに初期装備の上にオブジェクト化された。


 少々の安心感が増すのを感じながら、さっさと店を出る。


「どうする?どっちからやる?」
 主語がない問いかけだったが、すぐにそれが何かということはツカサに伝わったらしい。
「…先にめんどくさいほう終わらせよう」
「了解!」


 リアが弾んだ声を上げる。2人はそのまま連れ立って、村の奥にある一軒の民家に入った。台所で火にかけた大きな鍋をかき回している”村のおかみさん”的なNPCがこちらを振り迎えった。


「おはようございます、旅の剣士様たち。お疲れでしょう、何か食事でも差し上げられるものがあるといいのですが、今は何もないの。出せるのはお水一杯ぐらいのもの」
「それでいいですよ」


 彼女は古びた水差しからコップに水を灌ぐと、2人の前にあるテーブルに置いた。


 読者の皆様にはもうお分かりだろう。彼女らは片手剣アニールブレードが獲得できる”森の秘薬”クエストをやるためにここにきた。アニールブレードは強化すれば3層まで使えるというなかなか良い片手剣あり、片手剣使いならばこのクエストは必須とまで言われているほどである。


 一方ツカサのメイン装備は槍であり、このクエストをやる意味はないといえばないのだが、アニールブレード獲得のこのクエストはかなり面倒なものである上に、剣の性能はいいので、アニールブレードはかなり高値で取引される。この先かなりの頻度で武装を買い変えなければいけないことを考えると、コルを稼げるときになるべく稼いだほうが良いだろうというのが2人の見解である。


 長い距離を長時間全速力でかけてきた2人は、ありがたくその水を飲みほした。そのまましばらく待っていると、隣の部屋から、コンコン、という咳をする声が聞こえてくる。おかみさんが悲しそうに肩を落とした。さらに数秒待つと、おかみさんの頭の上に金色のクエスチョンマークが点灯した。これがこの世界におけるクエストが発動した証である。


「何か困っていることでも?」
「旅の剣士さん、実は…」


 要約すると、娘が重病にかかってしまい、市販の薬を与えても無駄なので、この周辺の森に生息する捕食植物の胚珠から作る薬を与えるしかない。だが、その植物はとても危険で、しかも個体数が少ないため、取ってきてもらえないだろうか、もしとってきてくれたらお礼に先祖伝来の長剣を差し上げましょう、という内容だ。

 話を聞き終わると、視界の左上に表示されたクエストログのタスクが更新されたことを確認してからその民家を後にする。

 村を後にし、西にある深い森に入ると、すぐに一体のモンスターがポップした。ウツボカズラを思い出させる下部に、移動用の根が蠢き、頭に当たる部分では、捕食用に口が粘液を垂らしながら開閉している。これがこの森にほとんどの確率でポップするモンスター”リトルペネント”である。リトルとついていて小さいように思うかもしれないが、実際には一メートル半ほどの身長を持つため、165センチと女性にしては長身なリアよりも頭一つ分ほど低いぐらいである。

 しかし、このペネントは、彼らが探し求めているものではない。今回のクエストで求められている“リトルネペントの胚珠”というのは、今彼らの目の前に出現しているネペントの頭に大きな花が付いたものから出現率100パーセントでとれるものである。一般的に“花付き”と呼ばれているそれは、出現率が1パーセント以下というなかなかにレアなものなのだ。だが、ノーマルタイプのネペントと倒していれば、“花付き”の出現率はアップしていく。

 しかし、注意せねばならないのは、“花付き”と同様の確率でポップする“実付き”と呼ばれるネペントである。そのネペントの頭には大きな赤い実がついており、うっかり縦切りの片手剣単発ソードスキルであるバーチカルなどでその身を割ってしまうと、巨大な破裂音とともに割れ、嫌なにおいをまき散らすのである。その煙にはなんのデバフもないが、その匂いにつられ、大量のネペントが集まってくるという、非常に危険な特性を持つ。
 
 今彼らの前にいるネペントには実がついていないことをよく確認してから、リアとツカサは武器を抜いた。ネペントの攻撃パターンは、触手による切り払いと突き、そして腐蝕液噴射である。この腐蝕液は、掛かると武装や武器の耐久値を減らすだけでなく、粘り気が出て数秒間動きを鈍くしてしまうという、なかなかに厄介なものである。もちろん、それがかかれば、の話であるが。

「シュウウウウ!」
 という音を口から吐き出しながら、触手を2人に向かって叩き込んでくる。その攻撃をかわすと、ネペントのサイドに分かれ、弱点である上部と下部の接続部分にリアは単発ソードスキル、スラント、ツカサは同じく単発スキルソニック・チャージをたたき込んだ。そもそもレベル5の彼らとレベル3のネペントとのレベルの差、そして2人で同時にソードスキルで弱点を撃たれたことにより、それだけでネペントはその体を幾千のポリゴンとして散らせた。
 
 完璧なコンビネーションで、2人は次々とネペントを屠っていった。およそ15分で20体ほどと、この効率で狩れば、数時間でこのあたりのネペントは枯渇する勢いだ。
 
 しかし、その時だった。リアとツカサの耳に、かすかだが、確かな叫び声が聞き取れた。それはモンスターのものではない。人だ。

 リアとツカサは顔を見合わせ、その瞬間言葉を交わすことなく二人はブーツを地面へめり込ませ、声が下方向へと疾駆した。走っているうちに、すぐに異変に気が付いた。まったくネペントがポップしないのだ。あの叫び声と、今のこの森の様子を合わせると…

「誰かが実を壊した…?」

 ツカサがつぶやいた。リアは無言でそれを肯定する。と、その時、まだ目視はできないが、索敵スキルをとっている2人の視界にピュアレッドのカーソルが浮かぶ。それはネペントがいる証であったが、それは一つや二つでない。視界を埋め尽くすほどのカーソル。軽く30はいるだろう。

 その時、右の奥のほうから、カシャアアァァァン、という儚げな破壊音が響いた。それは、モンスターがポリゴンに変わる音ではない…プレイヤーの死亡エフェクト。すなわち、この世界では…

「間に合わなかった…!」

 ツカサが悔しそうにつぶやいた。

「まだソードスキルの音が聞こえる。誰かまだ戦ってる!今ならまだ間に合うよ!」

 リアはそう叫んだ。一刻を争う事態である。おそらくパーティーを組んでいた人間の誰かが死んだが、まだ残っているプレイヤーがいるのだろう。

 リアは疾駆してきたそのままのスピードを保ちながら、一番後ろにいるネペントを踏み台にして、高く飛び上がった。そしてネペントたちが集結しようとしている中心に身を躍らせる。そこには、茶色い革のコートを着た、黒髪のプレイヤーがボロボロの装備で押し寄せてくるネペントと戦っていた。リアやツカサよりもいくつか年下、というような感じだ。

 彼の後ろへときれいに着地し、間髪開けずに一番手近なネペントにホリゾンタルをお見舞いする。一瞬ひるんだネペントをさらに切りつけ、その身を爆散させた。

 ようやくその音で気づいたのか、黒髪のプレイヤーがこちらを振り返った。その顔には驚愕の色が張り付いている。

「あなたは…!?」

「そんなことよりもさっさと片付けよう!後ろは任せて!」

 黒髪のプレイヤーは、この状況のためリアの言葉に従うことにしたようで、狭い来るネペントを再び最小限の動きで狩っていく。

 考えることは何もなかった。ただただ無心で、ネペントの弱点にソードスキルや通常攻撃をたたき込む作業を淡々と繰り返すだけであった。

 やがて残りの数も少なくなり、外側から攻撃していたツカサの姿も見えてくる。そしてついに、黒髪のプレイヤーが腐蝕液噴射のモーションに入り、停止していたネペントを片付けて、ネペントとの攻防は終わりを迎えた。

 
「終わったー…」

 別段疲労した様子もなく、リアが背伸びをしながらそう言った。

「いきなり飛んだりするからびっくりしたよ」

「あはは、ごめんごめん」

 そういいながらも、リアとツカサはハイタッチを交わした。そして、二人の視線は呆然と立っている黒髪のプレイヤーとむけられた。

 リアとツカサの防具や武器の消耗もかなりのものだが、彼のはもっとひどい。どうやら本当にぎりぎりだったようである。

「お疲れ様」

「…え、ああ…」

 彼はやっとリアの呼びかけでこの世界に戻ってきた、というような感じであった。やがて焦点がリアとツカサに向く。

「助けていただいて本当に、ありがとうございました」
「ううん、いいのいいの。君だけでも、無事でよかった」

 頭を下げた彼にリアは精いっぱい温かい言葉をかける。

 彼は頭を上げた後、もう一人がなくなった場所へと足を進めていった。リアたちもついていくと、木の根元あたりに、彼と同じくらい消耗した円形盾とスモールソードが落ちていた。おそらく亡くなった彼の装備品だろう。黒髪のプレイヤーは、その剣を根元にさし、盾を木に立てかけると、アイテムメニューを開き、そこから“リトルペネントの胚珠”をオブジェクト化して、それも木の根元に置いた。

「お前のだ、コペル…」

 つぶやき、彼は立ち上がった。地面に放置された剣たちはやがて耐久値が切れて消滅してしまうだろうが、これが彼のけじめというものなのだろう。

「もしよかったら、一緒に村まで戻ってもいいかな?」
「あ、はい。同じクエ受けてるし」
 
 リアが尋ねると、彼もうなずいて、ともに村へと続く小径を歩く。おそらく、あまり話したい気分ではないのだろう。リアもそれを察し、村に戻るまで会話はなかった。

 クエストを受けたあの民家に入り、おかみさんに胚珠を渡すと、おかみさんは顔を輝かせてそれを受けとる。そしてそれを鍋にそっと入れてから、部屋の隅にあるチェストから、赤鞘の剣を人数分取り出した。リアもβテストの時にはかなり使い込んだ剣”アニールブレード”だった。重量はスモールソードの1.5倍ほどはあるだろう。視界にクエスト達成のメッセージが浮かび、獲得経験値が表示される。

 リアはそのままスモールソードと入れ替えで腰に、ツカサと黒髪のプレイヤーはストレージにそれを入れた。

 なんとなく3人で鍋をかき混ぜているおかみさんを見ていると、やがておかみさんは戸棚から木製のカップを取り出し、リトルペネント入りの薬をお玉でそれに注ぐ。そのカップを持ち、せきこむ音がする奥の扉へと進む。その部屋には8歳くらいの白いネグリジェをまとった女の子がベッドに横たわっていた。顔色はとても悪い。

「アガサ、旅の剣士様が森から薬をとってきて下すったのよ。これを飲めばきっとよくなるわ」
「うん…」

 アガサは小さな手でおかみさんの手からカップを受け取ると、その薬をゆっくりと飲みほした。少しだけ頬に赤みがさしたような気がした。そして、アガサは一番彼女の近くにいた黒髪のプレイヤーに、
「ありがと、お兄ちゃん」
「……………あ…………」

 彼は何も答えることができずに、声だけ漏らして大きく目を見開いた。そして
「うっ………くっ……」

 彼ののどから嗚咽が漏れる。そして彼はよろけると、アガサのベッドに膝をついた。白いシーツを握りしめ、また低い声を漏らす。シーツに深く顔を伏せ、歯を食いしばって嗚咽を押し殺し、その頬には雫が伝って、それはシーツに吸い込まれていた。

 リアとツカサは顔を見合わせる。先ほどこの世界から消滅した仲間を思っているのか、それとも現実世界を思っているのか。
やがて、リアは彼の隣に膝をついて彼の黒髪をそっと撫でた。

 リアのその行動を機に、部屋には彼が発する鳴き声が響いていた。







「すみません、あんなみっともないところを見せてしまって」

 彼の頬は恥ずかしさからか、赤く染まっている。リアは首を振った。
「いいよ、気にしないで」

 リアの隣で、少しながらツカサもうなずく。それを聞いて、彼も少し安心したようだった。そして思い出したように言う。

「今日は本当にありがとうございました。あ、俺はキリトです」
「私はリア」
「ツカサだ」

 キリトと名乗った少年はリアの名前を聞くと大きく目を見開いた。

「へぇ、キリトっていうのね…どうかした?」

 キリトの様子に気づき、リアが声をかけるが、キリトは首を振った。

「いえ、俺の従姉と同じ名前だったので」
「……」
 リアの表情もぴたりと止まり、キリトの顔をまじまじと見た。

「…ねぇ、ルール違反で申し訳ないけど、その従姉さんって、今どうしてるの?」
 ネットゲームの世界では、リアルのことを聞いたり詮索したりするのはルール違反という暗黙の了解がある。ある程度はネットゲームをたしなむ彼女ももちろんそのルールは知っていたが、それを破ってでも、知りたかった。

「…彼女の母親の仕事でシリアへ行って、そこでテロに巻き込まれて…なくなりました」
「……⁉」

 亡くなった、と聞けば、誰もが「ごめんなさい」という感じになるだろう。しかし、彼女違った。たっぷり5秒は停止した後、かすれ気味の声で聞く。
「……もしかしてだけど…和人?」

「…え?」
 二人の視線が交差し、フリーズする。やがてキリトの口から小さな声が漏れる。

「りあ、姉?」
 リアがゆっくりとうなずく。
「そうだよ、和人」
 そういって、和人の体を引き寄せ、抱きしめた。フリーズしていたキリトも、そっとその背中に手を回す。
「ほんとに、ほんとにりあ姉なんだよな?幽霊じゃないよな?」
「うん。ほんとにほんとに私だよ。ちゃんと生きてるよ…」



 

 現在、リア、ツカサ、キリトはNPCレストランに入り、向かい合って座っていた。キリトの目は今でも信じられないという色が浮かんでいる。リアの表情も明るい。が、唯一混乱していたのはツカサである。ツカサは全く状況がつかめずにいた。

「あー、水を差すようで悪いんだが、リア、俺にもわかるように説明してもらっていいか?」
「ああ、ごめんごめん。ほら、前に話したでしょ?私の従妹の和人」
「…ああ。思い出した。リアが可愛がってたっていう」

 ようやくツカサも合致したようだった。
「そう。かず…じゃない、こっちの世界ではキリトだったね。こっちがツカサ君。向こうで知り合ったんだ」
「ツカサだ。よろしく」
「キリトです」

 男らしい、サバサバとしたあいさつを交わす。

「…ずっとあのテロでみんなリア姉も死んだと思ってた。…今までどうしてたんだ?」

「…テロで父さんがなくなったのは間違いないの。それで、そのあと親切な向こうの人がかくまっててくれて、今までずっとそこで暮らしてたんだ。あの時はかなり混乱してたし、すぐに引き取ってくれた人が首都から離れて暮らすになったから、たぶん死亡ってことにされてたんだと思う。でも、半年ぐらい前に日本の自衛隊が再捜査、ってことで来て、そこで発見されたの。日本にもすぐに帰ってきてたんだけど、死亡ってことにされてたし、生存者をいままできちんと探さなかった国家への責任が降りかかるのを上の人が恐れて、家族への連絡もできなかったんだ。…本当にごめんね、心配かけて」

 キリトは首を横に振った。
「いや…それはリア姉の責任じゃないし、生きててくれたことだけでよかったよ、本当に」
 キリトの言葉を聞き、リアの笑顔がこぼれる。

 その時、ツカサが席を立った。リアに何か耳打ちしてから、そのまま外へと出て行ってしまう。おそらく、気を使ってくれたのだろう。

「でも、隔離みたいのされた状態だったんだろ?よくSAOを買ったりログインしたりできたな」
「確かにね、なんか自衛隊の人がくれたんだよね。発見するのが遅くなったお詫びだ、みたいな感じで。…今となっては、最悪だけどね」

 リアの一言で、キリトの顔も曇る。

「…リア姉も、茅場の言葉は本当だと信じるか?」
「ええ。嘘をつくような人じゃないしね。観賞するためだけに創ったって言われても、茅場なら納得できる」
「だよな…」

運ばれてきたコーヒーに口を付けながら、キリトはそうつぶやいた。リアもすぐれない表情でコーヒーをすする。しばらくの沈黙のあと

「な、なぁリア姉」
「ん?なに?」
 やたらかしこまったように言うキリト。リアは首をかしげ、ながら、口元にコーヒーカップを持っていく。

「その、リア姉は、あのツカサって人と付き合ってるのか?」
「っ!?ゴホッゴホッ!」

 突然のキリトの問いに、リアは飲みかけのコーヒーを詰まらせ、大きくせきこんだ。しかし、咳が止まるとそれは笑いに変わった。

「何かおかしいこといったか?」
 そういうキリトの頬は赤い。仮想世界では表情がオーバーに出てしまうという特性があり、それはこのような場面では彼にとって不都合なことだろう。

 リアは笑いながら首を振った。しばらく腹を抱えて笑っていたが、やがて笑いを納め、口を開いた。

「面白いとかじゃなくて、あの時からかず…キリトも健全な中学生に成長したんだなって。そんなこと聞くだなんてね」
「そ、そりゃそうだろ。まだあの時は8歳だったんだし」

 さらにキリトは顔を赤くする。再びリアの口からは笑いがこぼれるが、今度はすぐに収まった。

「ツカサ君とは付き合ってないし、変な関係じゃないよ。ただ、テロがあったあと、ずっと一緒にいたから、お互いのことはよく知ってる、大切な人なんだ」
「そ、そうなのか…」
 眼を白黒させているキリトに向かって、コーヒーカップ越しに、リアはいたずらっぽくウィンクした。

「もしキリトがそっちの趣味でツカサ君を狙ってるならあんまりお勧めしないよ。ツカサ君は女にも、ましてや男にも興味ないからね」

「なっ!!リア姉!!」
「あはは、冗談、冗談だって!」

 SAOが本来の仕様を取り戻してから、初めてこの世界に明るい笑いが響いた。









「リア姉はこれからどうするんだ?」
 レストランを出て、村を歩きながら、キリトが聞いた。リアは視線を上にあげる。

「んー、しばらくはこのあたりにとどまるかな。レベル上げとかしてると思う。キリトは?」
「俺は…今日中にはもう次の村に行こうと思う」
「…キリトはソロで攻略するつもり?」

 キリトはリアの人もをまっすぐにみてうなずいた。

「ああ、この世界では、それが一番だと思うんだ。茅場がいつまでも街を圏内と指定しているとは限らないし、これからおそらく犯罪者ギルドも出てくる。それまでに、自分の身は自分で守れるぐらいにしておきたいから」

「そっか。キリトがそこまで考えてるなら何も言わない。だけど、もし何かあったら何でも頼ってほしい。全力で助けに行くから」

 リアの温かい言葉に、キリトは胸がじんわりとするのを感じる。信じられるのは自分と、自分の実力のみというこの無情な世界において、唯一の例外である従姉であり、キリトにとっては姉のような存在だ。ずっと亡くなったと思っていたため、今回の再会は衝撃的なものであったが、彼女は昔と変わらぬ彼女で安心した。

「あ、そうだ、フレンド登録しよう」
「ああ、そうだな」

 メインメニュー・ウィンドウを開き、リアから送られてきたフレンド申請にyesボタンを躊躇なくおす。こうして、彼女はキリトにとってこの世界で初めてのフレンドとなった。

「じゃあ、また必ず会おうね」
「ああ、また」
 リアはキリトに手を振ってから、ゆっくりと背を向け、村を出ていく。キリトはその華奢な背中がフィールドに消えるまで見送った。
 今度こそ、自分の目の前からいなくなってしまわないことを祈りながら。

 しかし、彼の耳には、リアの小さなつぶやきが聞き取れなかった。





「ごめんね…」


 
 


  
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?今回もかなり長くなってしまいました(汗)
 今回は、キリトの救出、そしてキリトとの会話の二本立てでお送りしました。ついに明かされました、キリトとリアは従姉同士という設定です!原作キャラとの絡みはしっかりとしたかったもので!
 そして若干明かされたリアとツカサの過去。そして、2人の関係。リアが言っていたのは本当のことで、この二人は付き合っているわけではないです。最初からなんか甘い雰囲気を漂わせていた二人ですからねwまさか、という感じでしょうw
 

 では、次回もお楽しみに! 
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