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DQ8 呪われし姫君と違う意味で呪われし者達(リュカ伝その3.8おぷしょんバージョン)

作者:あちゃ
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第八話:見た目重視か、中身重視か、

 
前書き
ウルポンを活躍させたらなんとか書けた。
抗がん剤に勝つウルフ君。
凄いっす…… 

 
(リーザス村)
ラングストンSIDE

ウルフ殿の突然の告白に、流石のリュリュさんもドキドキしてる感じですが、絶対言葉通りの台詞では無い事が解る私は、一応閣下に確かめてみた。
先程の真意を……コッソリ。

『まるで愛の告白でしたが、本心とは思えませんでした。如何いう事ですかな?』
『愛の告白のつもりは無いけど、リュリュさんの事が好きなのは本心だ。……ただ、今回の冒険中に恋仲になる気は無いけどね、俺の方に(笑)』

『となると、本気でリュリュさんの身を案じてらっしゃると思って良いのですか?』
『思って良いですよ。何やかんや言っても彼女はリュカさんの娘……怪我をされては困るんだよ』

『つまり……先程の愛の告白風発言は、彼女に怪我をされない為の抑止発言だと?』
『そんなヌルくない。もっと深い意味が含まれてるよ』
『ほう……それは?』
『あの女を戦わせたくない』

『……もう少し万人に解る様な言い方が出来ない物でしょうか?』
『だから……先程も言ったけど、実戦こそ最大の訓練なんだよ。上手く騙してリュリュさんを闘技大会に参加させ、仕事を内勤にして訓練させない様にして、更に知人の猛者共を参加させる事に成功したのに、最高の訓練を受けて優勝されては困るんだよ』

『知人の猛者?』
『ラインハットのデルコさんとか、カタクール候の飼い犬共だよ』
『リュリュさんに大々的敗北を受け入れさせる為に?』
『そうだよ、このままじゃ何時まで経っても歪んだ欲望を捨てやしないからな』

『そ、そう言う事情があったんですか!?』
『そうだよ。お前も闘技大会に参加するんだろ? 誰でも良いからリュリュさんの優勝を阻んで欲しいんだよ。今回リュリュさんが戦いそうになったら、お前が代わりに戦えよ』

『解りました……リュリュさんが不満に思ったら、『怪我をされては困りますから』と、取って付けた様な言い訳をしてですね』
『そうだ』
……と、やはり裏が満載の事。

リュカ様とウルフ殿の深慮深さと性格の悪さは存じてましたけど、これ程大々的に娘を罠に嵌めるとは思ってなかったです。
とは言え、こうまでしないとリュリュさんの変態性は押さえ込めないので、致し方ない事でもあるのでしょう。
私は裏事情を知らなかった事にして、自らの優勝を目指すのみ。

さてさて、ウルフ殿の深慮深さと性格の悪さを思い出していると、更に彼の性格の悪さを浮き彫りにする出来事が勃発。
リーザス地方のリーザス村に入って直ぐの事……
純真無垢な二人の少年が突然我々に近付いてきて、

「やいやい、この辺じゃ見ない顔だな!? さてはお前等がリーザス像の宝石を盗もうとしてる盗賊だな!? 俺が成敗してやる」
と素っ飛んだ因縁を付けてきました。あぁ、もう一人はトロそうに「成敗……してやるぅ」と追随するだけ。

「はぁ~!? こんなイケメンな盗賊が居るわけねーだろが! 本物の盗賊を見た事ねーのか馬鹿ガキ共!」
はい。例の彼の台詞です。
初対面の見ず知らずのお子様達に向かって、何で彼はこうも遠慮せずに言えるのでしょうか?

「み、見た目なんかカンケー無いだろう! そ、それに……そっちのオッサン! 見るからに盗賊じゃねーか!」
見た目が関係ないと言いながらも、見た目が盗賊風のヤンガス殿に狙いを付ける。
悪い事は言わない……トラウマを受ける前に逃げなさい。そのイケメンは、内面がイケてないのだから。

「はっ! 馬鹿ガキは何処まで行っても馬鹿ガキだ。白昼堂々と盗賊が“ワタクシ盗賊ですよぉ”ってツラして村に入ってくるワケねーだろ! 逆に信用出来るわ。こんだけ盗賊風味満載なオッサンは!」
そうですか?

「じゃ、じゃぁやっぱりお前が怪しいじゃねーか! 如何見ても盗賊に見えねーぞ!」
「当たり前だ馬鹿者。先刻(さっき)も言ったがこんなイケメンが盗賊なワケねーんだよ! 何故なら俺レベルのイケメンは、人から物を盗まなくても生きていけるから」
それは……『ヒモ』って事ですかね?

「な、何でイケメンだと違うって言い切れるんだよ!?」
「わ~はっはっはっはっ! お前の様な未来永劫ノットイケメンには、永遠に理解する事など出来ないさ! 大人しく俺の様な高レベルなイケメンが女にモテるのを指を咥えて眺めてなさい」
子供相手に何言ってんだ、この男?

「う、うるさぁい! イケメンとかカンケーねーんだよ! 如何見たってお前等が盗賊なんだ!」
性悪男の性悪口撃(こうげき)に純粋無垢な無礼者等は押され気味になり、形振り構わず我等を盗賊と決めつける。
普通の大人なら、子供が我が儘で騒ぎ出すと困る物なのですが、彼はニヤリとステキな笑顔を光らせる。

「如何見ても俺等が盗賊ぅ? じゃぁお前は如何見ても寝小便タレだな。うん、間違いない。毎朝布団がビッショリの寝小便タレの顔だ!」
ここは村の入り口付近……とは言え、それ程広い村ではないので、周囲には我々の他にもギャラリーが多数。
その中には、この純真無垢な無礼者達と同い年くらいの少女も……

「な、何言ってやがル! お、俺は寝小便なんてしねーよ!!」
慌ててギャラリーの少女の方を見てから、力一杯にイケメンの発言を否定する少年。
むしろ怪しく見えてしまう。

「見るからにお前は寝小便タレだろ。俺等が見るからに盗賊なのと一緒で、お前は見るからに寝小便タレだ! それも毎晩毎晩ダム決壊レベルでのな(大笑)」
「だ、だから違ーって言ってんだろ!! 俺は寝小便タレじゃねー!!!」

「あははははっ、寝小便タレ、寝小便タレぇ!! 毎晩豪雨な寝小便タレ!」
「ね、寝小便タレなんて垂れてねーってんだよ! 聞けよ馬鹿野郎!」
大笑いしながら頭の上で手を叩いて、彼の事を寝小便タレと連呼するウルフ殿に、顔を真っ赤にして反抗する少年……可愛そうに、ギャラリーの少女も顔を顰めて信じ始めてる。

「さ~て今夜は何リットル放出かなぁ? でも大丈夫、お前の寝小便は全て布団が受け止めてくれるゾ(ゲラゲラ)」
「お、俺は……ヒック……ね、寝小便なんて……ヒック……して……うわぁぁぁぁんんん!!」
遂に泣いてしまった。そりゃそうだ……大人だってウルフ殿の口撃(こうげき)を受けたら泣きたくもなるのに、相手は未だ子供。

「おぉ~っと! 寝小便タレ君、今日は白昼から放水開始ぃ! 今夜の分を貯め込んでおかなくて良いのでしょうか!?」
本気か!?
泣いてる子供に更なる追い打ちを敢行するイケメン宰相閣下!? 彼の精神構造は如何なってるんだ?

「あ、あの~ウルフの旦那。もうその辺で勘弁してあげましょうでがす」
「何を言うんだいヤンガス君!? 我々……特に君は最大の被害者だよぉ! 何もしてないのに見た目で盗賊と言われて蔑まれたんだ。見た目重視で物事を判断するんだから、我々もそれに習うしか無い。となれば……この少年は紛う事なき寝小便タレだよ! さぁご一緒に……こいつは寝小便タレ!!」

子供相手でも容赦ない……
本当に彼はこれから父親になるのだろうか?
生まれてくる子供の将来が凄く心配だ。

「あの旅の方……ポルクとマルクが大変失礼な事を言いました。如何か許してやって下さいませ」
物腰柔らかそうに現れたのは一人の老婆……
多分この二人とは血縁では無いのだろうけど、この村でお婆さんとして慕われてるのだろう。
ところでどちらがポルクで、どちらがマルクですかね?

「何だ婆さん? この寝小便タレの保護者か?」
あぁ……口調からして、口撃(こうげき)の手を休めるつもりは無いらしい。
今度の対象は、このお婆さんですか?

「はい、その様なものです。如何か許して「この村で最近何があったのかは知らん! 何せ俺等は旅人だからな。何かがあって見知らぬ顔を“盗賊”と蔑んだのだろう。疑うのは構わん……が、見ず知らずの旅人を罪人に仕立てる様な子供を、安易に放置する風潮は許しがたい!」
心底謝ってるお婆さんの台詞を遮って、本気モードで説教を開始するウルフ殿。

「婆さんも、周りの大人も『子供のすること』と放置してたのだろうが、子供のすることこそ放置するべきでは無いというのが解らんのか!? その地域の子供を観察すれば、その地域の大人が見えてくるんだ。何故なら子供は大人の真似をして成長するからな。礼儀正しい子供が多ければ、その地域の大人は礼儀正しい者が多く、無礼な子供が多い地域は、同じ様に大人が無礼者ばかりなんだ。子供の教育こそ、最も重視する事柄で有り、『子供のすることだから』と放置するのは怠惰の証!」

「た、旅の方の仰る通りです……真に申し訳ございません」
私の目から……と言うより、ウルフ殿の目以外から見ると、この老婆が謝る必要は皆無。
だがこのイケメンクレーマーを黙らせるには、誰か大人が代表して謝る必要がある……様な雰囲気になっている。

「何を謝っている? 婆さんだけの責任じゃ無いんだぞ! この村の子供が見ず知らずの旅人に対して失礼な態度をとったのは、この村の大人全員の責任なんだ! 老婆一人を生贄にして事なきを得ると思ってるなんて考えが甘い!」

いや、甘くは無いでしょう。
イケメンクレーマーが辛すぎるんだと思いますけど?
チラッとリュリュさんを見ると、美しい顔を激しく歪めて嫌悪感を露わにしている。

「や、やめろよぅ……ヒック……バ、バアちゃんは……関係ないだろぅ……ヒック」
自称リーザス村警備隊長の少年は、健気にも怒られている老婆を庇おうとする。
ムリせず子供は黙って泣いてた方が良いですよ。黙って泣くって難しそうですね。

「何を言うか寝小便タレ! お前の所為で婆さんが叱られてるんだぞ!!」
「うわぁ~ん! ゴメンなさいバアちゃん」
声こそ大きくないが、厳しい口調のウルフ殿に叱られて、更に泣く少年。

「簡単に泣くんじゃない! 寝小便タレと呼ばれて悔しかったのなら、今晩から寝小便をタレないようにすれば良いんだろ! 泣いたって何の解決にも繋がらない……現状を受け入れて自らを昇華させる事に専念するんだ」
未だ寝小便タレの真偽は定かでは無いのですけど?

「……しょ、昇華って?」
「あぁ済まん。昇華って言うのは、レベルアップさせるって意味だ。身体だけじゃなくて心の方も併せてな」
先刻(さっき)まであんなに虐めてたのに、急に人生の先輩面を始めたぞ。て言うか、寝小便タレの件に何か言わないと、確定事項になりますぞ!

「わ、分かった……俺……頑張る。簡単に泣かないよ!」
「よし、その意気だ! 婆さんも、周りで気まずそうにこちらを伺っている大人共も、今後気を付けるんだ!」
何様ですか、この男は? 周囲の大人は気まずそうに伺ってたんでは無く、我等を“面倒臭い旅人”として認定してただけですよ。

「じゃぁ、このオッサンに謝っておこうか。見た目だけで盗賊扱いされた被害者なんだからな」
「う、うん……ゴ、ゴメンなさい、盗賊とか言っちゃって」
見た目での判断を誤りだと認め謝罪をする少年……ウルフ殿も謝罪するのですか?

「なぁ~に、気にしてないでげすよ。良く言われてるでがすからね(笑)」
「そうだな……元山賊だもんな(笑)」
「え!?」

実際大人なヤンガス殿は、立派な大人な対応で少年を労った。
だが、如何やら謝る気は微塵も無いウルフ殿は、また見た目判断問題が再発するかの様な発言をする。
先刻(さっき)誤りを認めた少年も、納得のいかない表情でウルフ殿を凝視。でも下手なことを言うと、また寝小便タレと言われそうなので、グッと堪えている。学んだ様だ……

「そ、そんな事より……何故アッシ等を盗賊だと思ったんでがすか? 先程ウルフの旦那が言ってましたが、最近この村に何かあったんでげすか?」
自分の事を盗賊と蔑んできた少年に気遣って、ヤンガス殿が話題を別のことに変えようとしている。大人だ……

ラングストンSIDE END



 
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