天然のあざとさ
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第一章
天然のあざとさ
野江麻友はよくあざといところがあると言われている。
だが当人には自覚がなくてだ、いつも皆に聞いていた。
「私あざといの?」
「うん、結構ね」
「そういうところあるわよ」
「変に可愛いところ出してるっていうか」
「そんなところがね」
「そうかしら」
言われても自覚がなく首を傾げさせる。
「私そんな可愛くみせようとかは」
「思ってないのよね」
「麻友ちゃん本人は」
「そうよね」
「ええ、別にね」
それはというのだ。
「ないわよ」
「いや、麻友ちゃんがそう思ってもね」
「私達が見てもよ」
「麻友ちゃんあざといわよ」
「そうしたところあるわよ」
「実際にね」
「そうなのかしら、一体どんなところがあざといのか」
腕を組んで首を傾げさせて言った。
「私の」
「まあ何ていうか普通に?」
「その仕草とか行動自体がね」
「もうあざといっていうか」
「そんなところあるわよ」
「何でもね」
友人達はこう麻友に言う、彼女達にしてみれば確かに麻友はあざといがそのあざとさは狙っているものではないし性格は基本いいのでこう言えた、だが当人が自覚がなく考えても気付かないことは変らなかった。
それで麻友は考えていくがやはり自分ではわからない、それで部活で部長に自分の何処があざといか聞くと。
部長は麻友にこう聞いた。
「ランナー三塁、麻友ちゃんが打席にいたらどうするの?」
「ランナーはどんな人ですか?」
そのことから聞き返した麻友だった。
「一体」
「足遅いわよ、あとピッチャーは左」
「じゃあここは普通にライトに打って」
左利きの麻友はこう答えた、左投げ左打ちである。
「それでランナーを返します」
「スクイズじゃないの」
麻友がバントが得意なのを聞いての問いである。
「ここは」
「足が遅い人ですと。あと左の人は三塁ランナーに背を向けていて余計に警戒するので」
「スクイズよりもっていうのね」
「普通に打ちます、レフトに流したら下手に打ったらゴロとかで出た三塁ランナーが動けなくなったり出たところをアウトにされたりしますから」
サードが捕球してタッチをしたりしてだ。
「出ないです」
「そうするのね」
「はい、ここは」
「そこまですぐに考えられるところがよ」
「あざといんですか」
「ええ、あと守備の時だけれど」
この時についても聞く部長だった。
「相手の二塁には足の速いランナーがいてバッターはぽわーのないアベレージヒッターだったらどうするの?」
「浅めに守ってセンターにヒットが打ったら飛び出て浅いところでキャッチしてすぐにセンターに投げます」
麻友はすぐにそう動くと答えた。
「深いフライだとダッシュで向かいますけれど」
「センターの麻友ちゃんはそう動くのね」
「そうします」
「そこもよ」
「守備もですか」
「そこまで普通に考えられるのがね」
それがというのだ。
「あざといのよ」
「そうなんですか」
「そう、つまり状況が自然とわかっていてね」
そうしてというのだ。
「考えられて動ける」
「それがなんですか」
「あざといというかね」
「そんな風なんですか」
「女の子って自分を無意識のうちに奇麗、可愛いって思われたいけれど」
そう考えるというのだ。
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