| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十九話 怪盗その九

「まだな」
「考えていないんだ」
「何処がいいかとかな」
「その辺りも考えていきましょう」
 順一は考え込んだ久志に微笑んで話した。
「少しずつ」
「そうしてか」
「はい、まずはです」
「あと七人か」
「探し出しそして」
「仲間にしていくか」
「そうしていきましょう」
 こう言うのだった。
「是非」
「よし、じゃあな」
「さて、後はな」
 今度は正が言ってきた。
「団長さんのとこに行ってな」
「おいらのことだね」
「話すか、ただな」
「ただ?」
「今までかなり盗んできたよな」
 怪盗としてとだ、正は淳二本人に尋ねた。
「そうだよな」
「何十とね」
「盗んだお宝どうしているんだ」
「おいらがコレクションにしてるよ」
 悪びれずにだ、淳二は正に答えた。
「大事にね」
「そうか、じゃあな」
「まさかと思うけれど」
「そのまさかだよ」
 これが正の返事だった。
「全部返さないとな」
「折角集めたのに」
「馬鹿言え、返さないとな」
「その罪を問われるっていうんだね」
「わかってるな」
「そりゃおいら盗賊だから」
 淳二もわかってはいてこう返した。
「それはね」
「だったらいいよな」
「ううん、全部返して」
「罪を逃れろ」
「さもなければです」
 進太も言ってきた。
「貴殿は我々の仲間になりましても」
「お尋ね者で」
「そうです、その咎で」 
 財宝達を盗んできたそれでだ。
「首を刎ねられますぞ、若しくは縛り首か」
「ううん、打ち首の方が苦しみは少ないけれど」
 縛り首は吊るされてそのまま窒息か首の骨が折れて死ぬ、一瞬で済む斬首よりも苦しむ時間は長いのだ。
「それでもね」
「どちらもですな」
「嫌だね」
「ではです」
「盗んだものは全部返して」
「そのうえで咎を逃れて」
 そうしてというのだ。
「共に旅をしましょう」
「残念だね」
「ものを返し賠償も支払えば」
「お金はあるよ」
 淳二はこちらもあると答えた。
「それも盗んで手に入れたんじゃないのがね」
「どうやって稼いだんだよ」
「いや、普通にモンスターを倒してね」
「それは俺達と同じか」
「あとそれを元手にしたギャンブルで」
「御前博打もするのかよ」
「趣味でね、こっちの世界でも負け知らずだよ」
 淳二は笑って述べた。
「実は相当なお金を持っているよ」
「一体どれだけだよ」
「一つの街を買える位かな」 
 明るい笑顔でだ、久志に答えたのだった。
「ちょっとしたね」
「おい、それ位あるのかよ」
「うん、それも元手があれば」
「それでか」
「ギャンブルは絶対の自信があるから」
 負けない、絶対に勝てるそれがというのだ。
「人相手とか競馬ならね」
「そういうのはか」
「そう、何でも勝てるよ」
 ギャンブルのジャンルに関わらずというのだ。
「だからお金に困ったら何時でも僕にギャンブルをやらせてね」
「わかった、じゃあな」
「うん、財宝とか賠償金の話も含めて」
「団長さんと話そうな」
「それじゃあね」 
 こうしてだった。進太は仲間になる前にやるべきことが出来た。それは彼にとっては必ずしなければならないことだった。


第二十九話   完


                 2017・8・9 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧