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ヘタリア大帝国

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199部分:TURN19 イーグル=ダグラスその十


TURN19 イーグル=ダグラスその十

「そうした意味でイタリンやドクツと同じだがな」
「そういえば両方共資本家やそうした存在を制限するわね」
「ソビエトみたいに完全に潰しはしないがな」
「けれど全てを国家の、アイドルの下に統率する」
「それは資産主義じゃない」
 ダグラスはこう看破した。ファンシズムに対しても。
「独裁だ。そしてソビエトもな」
「イタリンやドクツ以上の独裁主義ね」
「あのカテーリンって娘のな」
「我が国ではそれ程多くはないけれど」
「今世界中に共有主義者がいるな」
「日本もそうね」
 彼等がこれから戦うだ。その国もだった。
「あの国も今は」
「よりによってゾルゲが来ているらしいな」
「そうらしいわね。ソビエトの工作員の」
「相当な奴らしいがな」
「ええ、超人的な身体能力に明晰な頭脳」
 その二つを併せ持っているというのだ。ゾルゲは。
「しかも巧みな弁舌に変装能力」
「まさに完璧だな」
「工作員としてはね」
「そのゾルゲが日本担当か」
「日本にも共有主義者は増えているわ」
「それなら。日本をぶん殴った後は」
 日本帝国に勝った後、その後はどうかというのだ。
「あの国の中の共有主義か」
「プレジデントはどうか知らないけれど」
 クリスもルースが共有主義、ソビエトには好意的なふしがあることは知っていた。このことはガメリカの政府や軍の高官達の間では比較的知られていることだった。
「それでもね」
「共有主義がガメリカの一番の敵だな」
「貴方もそのことはわかっているのね」
「当たり前だ。祖国さんだってそうだしな」
「祖国さんはそもそもロシアと仲が悪いわね」
 国家同士の関係もあった。
「だから余計にね」
「ああ、勿論俺は祖国さんにつく」
 ガメリカ人として当然のことだというのだ。
「そしてソビエトをぶっ潰す」
「そうするわね。それじゃあ貴方は」
「何度も言うが俺が目指すのはヒーローだ」
 鋭い目はそのままだった。
「ガメリカのヒーローだ。そうなる」
「では私はその貴方に協力させてもらうわ」
「悪いな。それじゃあな」
「ガメリカの為に。けれどね」
「けれど。何だ?」
「不思議なことがあるの」 
 クリスは少し怪訝な顔になりダグラスに述べた。
「どうもね」
「不思議なこと?何だそれは」
「ええ。貴方のことは占ったわね」
「ああ、これから俺の人生の中で一番輝くんだな」
「だけれどどう輝くのかはわからないの」
 こうダグラス本人に話すのだった。
「そして祖国さんもね」
「あの人のことも占ったのか」
「祖国さんのことはいつも占っているわ」
 ガメリカ人としてだ。どうしても気になるからだ。クリスはその占いの結果をアメリカ兄妹に話して忠告もしている。愛国心のある占い師でもあるのだ。
「その結果祖国さんも妹さんも凄い運勢が上昇してるけれど」
「だったらいいだろ」
「いえ、その上昇の仕方がおかしいのよ」
「おかしい?どういう風にだ?」
「普通はこうした場合は何の混ざるものもなく上昇するけれど」
 だがそれがだというのだ。
「色々な。一時的みたいだけれどよくないものも混ざってね」
「そのうえでの上昇か」
「祖国さんも妹さんもね。こんな占いの結果ははじめてよ」
「不吉じゃなくてもか」
「ええ。どういうことかしら」
「だが祖国さん達にとって悪い結果じゃないんだな」
「最高の結果ではあるわ」
 占いの結果。それ自体はだというのだ。
「だから余計にわからないのよ」
「そうなのか。けれどな」
「いい結果ならというのね」
「それでいい。なら祖国さんは戦争に勝つな」
 ダグラスはクリスの占いをこう捉えた。
「色々苦労をしてからな」
「そうなるのかしら」
「ああ。じゃあこれからデスクワークだ」
「デスクワークもするのね」
「司令長官ともなれば必須だからな」
 軍人にデスクワークは付きものだ。とりわけ提督以上にもなればだ。それはダグラスとて例外ではない。だからこそだというのである。
 それでだ。ダグラスは言うのだった。
「確かにあまり好きじゃないがな」
「少なくとも貴方はサインをしている方が似合うわね」
「だろうな。だがこれもサインだ」
 書類へのサインである。
「務めは果たすさ」
「では頑張ってね、そちらも」
「ああ、そうさせてもらう」
 クリスに軽い余裕のある笑顔で応えてだ。そうしてだった。
 ダグラスはデスクワークもするのだった。それも日本との戦いのことだった。ガメリカと日本の開戦の日は刻一刻と確実に迫っているのである。


TURN19   完


                        2012・4・15
 
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