Fate/Phantom Record
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第一部
第1話「一人の少年」
前書き
お待たせしました。第1話投稿です。
西暦2009年
日本・某県・阿浪市
太平洋側に面したこの町は、人口は25万前後。町の面積は200km²程の広さを持つ。
その町に、学校が20程存在する。
その中の1つ私立、阿浪東高校。
生徒数600名程で、男女共学のこの学校は今、午後4時半を過ぎた時刻の放課後となり、部活や委員会等に参加している生徒は活動準備を、それ以外の生徒は下校し、教員達は職員室で作業や各部活での指導と各々が行動をとっていた。
季節は、春を過ぎて梅雨に入ろうとしている。
[2―2]と書かれたプラカードが貼られてある教室に、一人だけの男子生徒が自分の席に付いていた。彼は、机の上でA4サイズ程の紙に何かを書いていた。彼は、このクラスの生徒で、彼は今日の日直であり、今は日誌を書いていた。本来、この学校の日直は、男女一人ずつでの二人一組でやるのだが、彼と同じ日直である女子生徒は、部活の用事を急いでいた為、彼が受け持ってくれた。
日誌を書き終えた彼は、自分のカバンを背負い、教室の戸締まり確認をし、ドアに鍵をかけ、日誌を持って職員室に向かった。
職員室に行った彼は、彼自身のクラスの担任教師に日誌を渡した。
「はい、ご苦労様」
女性の担任教師は、日誌を受け取った。
「それでは、帰ります」
彼は、そう言って退出しようとした時、
「赤月君」
担任から呼び止められた。
「はい、なんですか白山先生?」
赤月と呼ばれた彼は、振り返り担任の名前を言った。
「あの、少しお話があるんだけどいいかな?」
そう言って、少し申し訳なさそうな顔をする。白山は、いつも生徒には偉そうにせず、対等によく接する教師であり、根が優しいこともあって、うちのクラスをはじめ、学校では人気の先生の一人である。
「はい、いいですけど・・・」
「そう。それじゃあ、先に相談室に行ってもらえる。私も後で直ぐに行くから」
そう言われた赤月は、彼女から相談室の鍵を渡されて職員室を出た。
「はぁぁ」
廊下へ出た彼は少しため息をつき、そのまま相談室へ歩いた。
それから赤月が相談室に入り、椅子に座って待つこと10分が経過した。
彼が壁の時計を確認していると、廊下からパタパタと音が近づいて来て、ドアが開いた。
「ごめんね。待たせて」
「いいえ、大丈夫です」
そう言って、二人が席に座ったことで、本題に入ろうとした。
「それで、話はないでしょうか?」
「えーと、その。どうかしら、もう2年生になって2ヶ月位になるけど。学校生活は楽しく送れているかな」
「えぇ、まぁ。ぼちぼちと」
「そう。何か悩みとか」
「いえ、今はありません」
「そ、そう。それで、委員会とか部活動には入ってはいないけど何か興味があることとかあるかな」
「いえ、別に」
「それじゃあ。将来、進路とか何か悩みとか」
先程から先生が色々質問をしてくることに何か隠しているような気がした赤月は、先生に言った。
「先生」
「は、はい。何かな」
突然、呼ばれた彼女は少し動揺した。
「もしかして、こないだのことですか。もし、そうならもう大丈夫なので心配要りません」
「え、その、そうだけど。けど」
「あの、すいません」
「は、はい」
「僕のことを気にしてくれるのは有り難いですが、余りプライベートのことは触れないでくれませんか」
「あ、そ、そうよね。・・・ごめんなさいね」
少し落ち込んだ様な顔をした彼女を見た赤月は、
「僕は、今でも十分に学生生活を楽しんでいますから。もう大丈夫です」
そう言った。
「そ、そう。そうか。・・・ごめんね・・・時間を取られちゃって」
「いいえ、では、これで」
そう言って、カバンを背負った赤月は、ドアを開けて先生に向き直り、頭を軽く下げた。
「さようなら」
「えぇ、・・・さようなら」
彼女は、ただそれしか言えないまま、赤月は学校を出た。
彼の名は、赤月怜一(あかづき りょういち)。今年で、高校2年になる。
彼には、家族はいない。厳密に言えば、8年前までは居た。父親と母親、そして、4つ上の姉を含めた4人家族だった。そう、あの日までは。
先程、先生が相談しようとした内容は、これに関わる。今年の新学期の4月半ば、彼に家族が居ないことを新しくクラスになった生徒3人がそのことで彼を辛かったのだ。その事に、彼は余り気にも留めてはいなかったのだが、その態度に腹が立ったのか3人の内の1人が彼に嫌がらせをしようと彼にちょっかいをかけたのだ。その際、別に腹が立った訳ではないが、彼と軽い喧嘩になり、教員に見つかり問題となった。担任教師の白山本人は、その事を察知出来なかったことを気に病み、それ以来、2週間程に1、2回彼と面談するようになったのだ。
学校を出て徒歩30分程で、赤月は6階建てのマンションに入って行った。
彼は、今現在は一人暮らしだ。元々は県外から、この町の高校に入学をしてきた為、こちらに自宅は無論ないのだが、死んだ母親の兄である叔父が偶然にもこの町に住んで居た。それが、このマンションで部屋は、2LDKである。高校から登校する為に、叔父が入学時からここに住まわせてくれている。その叔父は、仕事で海外転勤が多く、入学してから直ぐに2年近く日本に居ない。故に、高校に入ってからは、ずっと一人でこの部屋を使っている。たまに、母方の祖父母が訪れたりする。また、この部屋の家賃から電気ガス水道の費用は全て叔父の講座から引き出しているので、とても助かっている。とはいえ、本人自信は無駄使いを控えている。その他の生活費は、両親の祖父祖母から仕送りをくれていて、大切に使っている。更に最近、彼はバイトを最近始めようかと考えている所だ。
赤月は、1階にある郵便受けの鍵を開け、広告や出前のチラシ等が入った束を掴みとり、エレベータで4階に上がり、406の部屋まで歩いて行った。
制服のズボンの右ポケットに入った鍵を取り出し、開けようとした時だ。
ドアに備え付けられてある郵便受けに白い封筒の様な物が差し込まれていた。
「ん?」
彼は、少し不審に思った。本来、ここのマンションの郵便物は1階の各部屋の郵便受けに入れられるのだが、なぜか部屋の方の郵便受けに入れられてある。ここまで、入れに来るには1階のパスワード式の自動ドアを開けるか裏口の非常階段の鍵を開けて上がってきて、ここまで入れに来るしかない。
また、ここの住人が入れに来たのか。最初は、家主かと思ったが、家主は基本1階の郵便受けに入れる為、それも違うと分かった。
そう考えていた彼だが、封筒を抜き取り、ドアの鍵を開けて中に入った。
部屋に入った赤月は、リビングの電気を付け、1階で取った広告やチラシをテーブルの隅に置き、カバンをソファーに投げた。
赤月は、例の封筒を手にして、確認した。
封筒には、彼の氏名だけが書かれていた。裏にも表にも差出人の名前や住所等、他の文字が一切書かれていない。それに封筒は、珍しく糊付けではなくボタンが2つ上下に付いた紐式だ。
彼は紐を解いて、封筒を開けると中身を覗いて手で取り出した物を1つ1つとテーブルに置いていった。中から出て来たのは、何重にも折り畳まれた大きい厚紙が1枚、メモされた3枚のカード、片手分だけの右手用の白い手袋が入っていた。赤月は、3枚あるカードの内の一番上の1枚を手に取り、メモを読んだ。
「これは、貴方の願いを叶えてくれる儀式です・・・は?」
そう言って、他のカードにも目を通した。
「なんだ、これ。新手の詐欺商法?それとも宗教勧誘か?」
余りにも怪しい物を目にした赤月は、呆れた顔をしながら、それを見つめたが、そのまま他の中身と封筒を一緒に側にあったゴミ箱に落とした。
「はっ、最近変なのが増えたなほんと」
そう言うと、カバンを持って自室に入った。
部屋で制服を脱ぎ、家着に着替えてから、部屋で少し漫画を読んで軽く寛いでから、部屋にあった菓子を食べながら宿題を済ませた。
7時を過ぎた頃、彼は近くのコンビニで弁当やお茶を買って行き、夕飯を済ませた。
彼は、自炊は出来るが、週に何度かはコンビニやスーパーで買った弁当や惣菜等で簡単に済ませる。元々、料理はそれ程得意ではなく。簡単なこと料理しか出来ない。
食事を済ませた彼は、テレビでバラエティ番組を見てから、10時過ぎに入浴や歯磨き等の済まると、寝間着を着た彼はベッドの上で漫画を手にして、時間を潰した。
そのうち、彼に眠気が襲って来たことで、瞼が少し重くなってきた。
漫画を置き、消灯した後は、そのまま眠りについた。
時刻は、午後11時11分。
後書き
次は、第2話を投稿します。投稿予定は、今週中を予定しています。
いよいよ、次回登場です。
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