とある3年4組の卑怯者
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56 中華麺(ラーメン)屋
前書き
社会科実習を行うことになったみどりクラス。みどりは不良のようなクラスメイト、平井やすあきを怖がりながらも、自ら積極的に動こうとする。そして、質問を自分で考えることになったみどりは班の仲間に気を使われ、質問づくりに協力してもらえることになった!!
翌日の朝、みどり、倉山、茅原は昨日、質問の作成に参加できなかった麦田に考えた質問を見せていた。
「これが私たちが考えた質問なんですが・・・」
「どれどれ・・・」
昨日、三人が考えた質問は以下の通りだった。
・このお店は何年間続いていますか?
・お客さんに対してどのような配慮をしていますか?
・どのような気持ちでこのお店を営んでいますか?
・経営をしてきて辛かったことはありますか?
・このお店には他にはない自慢のメニューはありますか?
「へえ、いいじゃない。私もいいポスターにできるよう頑張るわ!」
「あ、ありがとうございます!」
みどりは麦田に感謝した。その時、平井が教室に入ってくる。
「あ、平井君、おはよう!」
茅原が平井に挨拶した。
「オオ、何だよ?」
「あの・・・、私、質問を作ってきたんです」
「オウ、何々ィ・・・?」
平井はみどりのノートを見た。
「イイじゃねェか!吉川もやるなァ!ンでよォ、俺の方は土曜の3時以降なら店長の手が空くからそン時に取材してイイって言われたぜェ!!」
「じゃあ、その時、行くか。土曜は午前で授業が終わるから帰ってからでも十分間に合うな」
茅原が確認するように言った。
「アア、茅原、ノート忘れンなよ!倉山もカメラ忘れンなァ!」
「うん!」
茅原が返事をした。
社会の授業では麦田がポスターの構成の相談を持ちかけた。
「私、地図も載せたいと思うんだけど、どうかしら?」
「そうだな、そうすればどこにあるかわかるしな、平井君、いいかい?」
倉山が平井に聞いた。
「アア、そンならイイポスターになるじゃねエか!」
「ありがとう、じゃあここに地図を載っけて・・・。右下に皆の名前を書こうか・・・」
五人は話し合っていき、こうしてポスターの体裁も決まった。
みどりは休み時間、倉山に話しかけた。
「あの、倉山さん」
「なんだ」
「朝の事なんですが、倉山さんと茅原さんも考えてくださったのに、平井さんには私だけのお手柄のようにみえて倉山さん達に気が引けてしまって・・・。本当にすみません」
「なに、別に気にしていないよ。お前が質問を考える係なんだから、それに俺達はただ手伝った身なんだし・・・」
「そ、そうですね・・・」
「じゃあ、取材、頑張ろうぜ!」
「はい!」
みどりは土曜の取材でドキドキした。
取材の日がやって来た。みどりの班はラーメン屋へと学校から帰り、取材の準備をしてラーメン屋へと向かっていた。
「父さんからカメラ借りたよ。フィルムも新しいのを入れてくれたよ」
「ノートも持ってきたぜ!」
「よォし!」
(私も迷惑かけないように頑張らなければ・・・!!)
みどりは緊張していた。
「吉川さん、緊張してる?」
みどりは麦田に聞かれた。
「は、はい・・・」
「大丈夫よ、私が手伝うわ」
「え、いいんですか?」
「うん、地図はもう作ってるし、それに私は手が空いてるから今日は手伝いに回るわ」
「あ、ありがとうございます!!」
ラーメン屋に着いた。店名は「ラーメンわかば」というところで、典型的なラーメン屋で、これといった派手さはなかった。
「こンにちはァ!社会科実習の取材に来ました。店長いますかァ?」
平井が店員に話しかけた。
「ああ、ちょっとと待っててください・・・」
ラーメン屋の店員は店長を呼びに言った。
「やあ、君達、待っていたよ。店長の甲山だ。よろしく」
「よろしくお願いします!」
「まあ、こちらの部屋へ入ってくれ」
甲山は五人を関係者専用の部屋へと通した。
「店長さん、よく利用している平井でっす。よろしくお願いします!」
「ほう、そういえば君はよく来てくれているね。ありがとう」
みどりは緊張していた。その時、倉山が店長に聞いた。
「あの、お店の外観の写真や、店長さんの写真とかとってもよろしいでしょうか?」
「ああ、いいとも」
「ありがとうございます!」
倉山が礼をした。その時、みどりは緊張していた。麦田が催促する。
「ほら、吉川さん、質問を始めて」
「は、はい、あ、あの・・・」
「何かね?」
「これから五つの質問を用意したのですが、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろん」
「では、まず一つ目の質問から行きます・・・。ええっと・・・」
みどりはノートに書いてある質問内容を確認した。
「このお店は何年間続いていますか?」
「そうだね、このお店は私のおじいさんの代から続いているからね。1911年創業だから、63年続いているね」
「63年ですか・・・!!」
みどりは驚いた。その一方で、茅原は必死に質問の答えをノートに取っていた。
「うん、でも簡単に続けられるわけじゃなかったよ、戦争の時は食材を減らされて足りなくて、売れ行きが悪くなった時があるし、空襲でお店が焼けてしまって再建しなければならなくなったからね。今思えばそれでも今まで親から受け継ぎ店を続けられて行けることに本当に誇りに思っているよ」
「そうだったんですか・・・。では、次の質問です。お客さんにどのような配慮をしていますか?」
「うーん、お客さんがいつも安心して利用できるようにいつも綺麗に掃除したりとか、料理についても味付けの時に調味料の量を正確に測っていることだね。調味料の量を間違えてしまうと、味が薄くなってしまったり、濃くなりすぎてしまったりするから、ちょうどよい味を提供するようにしているんだ」
「ありがとうございます。では続いての質問です。どのような気持ちでこのお店を営んでいますか?」
「そうだね、ウチは飲食店だからもちろん美味しいものをお客さんに食べさせることが当たり前のことだから、お客さんの不評を買わないようにいつでも美味しいラーメンを作って喜ばせたいという気持ちで経営しているよ」
「では、辛かったことはありますか?」
「そうだねえ・・・、さっきの質問で答えたように戦争でお店が焼けてしまって再建しなければならなくなったことかな?あと、これもさっき言ったことと同じだけど、戦争の間は食材が手に入らないときも多くて、上手く経営できないときもあったね」
「そうですか・・・。では、最後の質問です。このお店には他にはない自慢のメニューというものはありますか?」
「ほほう、いい質問するね。ウチの店はタチウオとか、カマスとか清水港で釣れる魚をラーメンの具として入れているんだ。連れる季節によってメニューも期間で変わることもあるけどね。カマスのから揚げラーメンとか、クロダイの煮つけラーメンとかが今のところ自慢のメニューかな」
「ありがとうございます!質問は以上です。ありがとうございました」
みどりはお辞儀をした。
「こちらこそありがとう。君達も是非ともウチのラーメンを食べに来てくれたまえ」
「俺、いつでも行きまっす!」
平井は喜んで言った。
「オイ、倉山!この際店長と写真撮ろうぜ!」
「ああ、いいね」
「よしわかった。ウチの店員に頼んで皆と記念写真を撮ろうか」
甲山は店員の一人を呼んでみどり達との写真を撮らせた。
「ありがとうございました!」
五人は店を出た。倉山は店を出た後に店の外観の写真を撮影した。
「ヨォシ、月曜になったらポスターを作るぞォ」
「そうね」
「写真は完成したら、すぐ持ってくるよ」
「質問の答えも纏めておくよ」
「あの・・・、私は、どうすれば・・・?」
みどりは質問が終わり、その後はどうすればいいか迷った。
「吉川はポスター作る日まで休んでていいよ。今日は質問するのに頑張ってたし」
茅原が答えた。
「は、はい、ありがとうございます!!」
「吉川さんも頑張ったわね!」
「ああ、役に立ったよ!」
「おめェもやればできンじゃねェか!」
「皆さん・・・、あ、ありがとうございます・・・」
みどりは皆から労られて感動した。
(堀さんがいなくても私はできたんだわ・・・)
みどりは嬉しかった。なぜなら自分も班員として貢献できたのだから。
(そうだ!あのラーメン屋さんへ堀さんやまる子さん、藤木さんを誘おう・・・!あそこのラーメン、食べてみたい・・・)
みどりは堀達を誘おうと考えた。
月曜になり、ポスターの作成のために皆模造紙にタイトルや質問とその答えを書き、麦田が作った地図や倉山が撮影した写真を貼り付けていた。みどりは作成にやる気になっていた。今までは積極的にできずに、何もやれずに迷惑をかけてばかりいたが、今はそうでもない。自分から手伝えることはあるかを聞き、皆と共に作業をすることができる。みどりは今回のグループワークを楽しむことができたと感じるのであった。
後書き
次回:「成功」
社会科実習を成功に納めたみどりは、「ラーメンわかば」へラーメンを食べに行きたいと思うようになる。そして、藤木達も招待しようとする。藤木は誘いに乗るのか、それとも断るのか・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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