ナニイロセカイ
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*寄生虫の世界
地獄の一丁目 自己紹介タイムが終わりました。
そして早くもわたしの中学校生活が初日でオワリを宣告されました。
「じゃあ、班でわかれて話し合ってねー」
次から次へと……本当に忙しいクラスです。
今度は四人一つの班にわかれて話し合いをするそうです。
班内での自分の役割を話し合いで決めていくそうです。
班で一番偉い班長とか。二番に偉い副班長とか。その他地味で楽だけどその分めんどくさいものなどなど。
わたしの班のメンバーは
隣の席に座っていた、黒くて四角いメガネをかけた背の高い真面目系の男の子。
その後ろに座っているのほほんとした平均的な背丈の男の子。
あとはわたしの後ろの席に座っていた、幼稚園の頃仲が良かった女の子。ふぅちゃん。
小学校は違ったから会うのは幼稚園の卒業式ぶりだね。久しぶりふぅちゃ……
「………ハァ」
話しかけようとしたけど、ふぅちゃんから返ってきたのは凄く重たいため息。六年ぶりに再開した幼馴染は別人でした。
幼い頃、仲の良かったあのふぅちゃんはもうどこにも居ませんでした。
頬杖をつき、不機嫌そうな顔をしてわたし達を睨み付けています。
目を合わせるのが怖くてわたしは他の男子二人に視線をうつしました。でも二人もふぅちゃんと同じように、不機嫌な顔でそっぽを向いています。
ああ……班のメンバーすら失敗してしまったようです。
周りの他の班からは楽しそうな笑い声が聞こえてきます。どんどん役割が決まっていってるみたいです。
でもわたしたちの班はというと……
「………」
「………」
「………ハァ」
わたしも含め班のメンバーはみんな消極的人ばかり、積極的に仕切るみんなのリーダーのような人ががいないからみんな黙り込んで、重たい沈黙、重たい空気になっています。
わたしの班だけ、他のみんなの班とは別世界みたい。ここだけくりぬかれたみたいな感覚になります。
みかねた先生が「じゃあ先生も手伝うから一緒に決めようか?」とありがた迷惑のお節介根性まる出しで手伝ってくれたので、一応その場はなんとかなりました。
わたしは役割の中でも比較的楽なものをやることに成功しました。そこだけは死守しました。
面倒くさい役割は全部ふぅちゃんが嫌々引き受けてくれました。それは絶対に誰かがやらないといけないことだから。
話し合いが終わり、本日二回目の休み時間。
わたしは当たり前のように机の上に俯せ、自分だけの世界へとダイブします。
「本当っムカつく!!」
ダイブしようと思ったけど、その前に聞こえたふぅちゃんの怒鳴り声で現実世界に引き戻されてしまいました。
どうしたんだろう? と思い、首は動かさずに耳だけ傾けてふぅちゃん達の会話を盗み聞きしてみます。
あっ。いやっ。大きな声で話しているから、すぐ前の席だから、たまたま聞こえてきただけですよ?
仲のいい友達に愚痴るふぅちゃん。
内容は最初から薄々は気づいていた事だけど、さっきの班の役割決めのときの話。
「なんで私がこんなのやらないといけないのっ」
……ごめんなさい。
「班の奴ら全然喋んないしっ」
……ごめんなさい。
「黙ってればいいってもんじゃないよね!! 話し合いに参加しろっての!」
……ごめんなさい。……ごめんなさい。……ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
「本当だよねー」
背後から聞こえてくるのはふぅちゃんの怒りの声。
ふぅちゃんの友達の笑い声。
二人の声が鋭い刃となってわたしの心にグサリと突き刺さります。
HPポイントはもうレッドを通り越して零です。
瞳から少し零れた雫をそっとハンカチで拭いて、わたしはまた自分の世界へと沈んでいくのです。
幼い頃から他人と話すのがあまり得意ではありませんでした。
その他大勢と群れるより、一人部屋の隅に居た方が落ち着きます。外でも家でも独りだから。
ちょっとしたことですぐに泣いてしまう 泣き虫さん。
涙が枯れても泣き続けました。そうでしか自分の想いを言えなかったから。
集団行動なんて無理。 人混み紛れてそのまま消え去りたい。
話し合いの場はいつも積極的なリーダータイプの人に全部お任せ。おんぶにだっこ。わたしは寄生虫。
優秀な人に寄生する事でしか生きられない寄生虫なんだ。
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