レーヴァティン
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第二十九話 怪盗その四
「そうなればです」
「動きを止めるってのか」
「はい、もう一つ結界も張っていまして」
「そちらの結界はどんなのだよ」
「触れれば音が鳴る」
「警戒のか」
「それでわかります」
怪盗が来たことがというのだ。
「二重の結界を張っていますので」
「怪盗が来ればか」
「わかります」
結界に触れることによってというのだ。
「ですからご安心下さい」
「成程な」
「僕も張っておいたよ」
源三も言ってきた。
「順一と同じ様なのを二つね」
「動きを止めて音が鳴るのをか」
「その二種類をね」
「錬金術の結界か」
「大気の中にそうした薬を拡散させているから」
「ああ、薬か」
「錬金術だからね」
僧侶の術とは違ってというのだ。
「そうして術をね」
「使ってか」
「撒いておいたよ」
「成程な」
「合わせて四つ、その四つの結界をかい潜っても」
例えそれが出来てもというのだ。
「僕達五人がいるからね」
「そうそうはか」
「怪盗も取れない筈だよ」
「ああ、ルパンでもテンプラーでもな」
久志も言った。
「止めてみせるぜ」
「そうだよな」
「それで本当にな」
「俺達と同じならか」
「仲間にするな」
そうするというのだ。
「なにがあっても」
「よし、それじゃあな」
「本当にあと少しで時間だ」
久志も砂時計を見た、その砂はまさにあと僅かで全て落ちようとしている。砂の勢いは変わらない筈だが速くなっている様に見えた。
「時間になればな」
「出て来るな」
「実際に」
「さて、じゃあな」
正と進太に応えてだった、そのうえで。
時計の砂が消えた、ここでだ。
順一は即座にだ、灯りの術を使って部屋を照らした。久志はその明るくなった部屋を見回して彼に問うた。
「いきなりかよ」
「こうした時はよくありますね」
「ああ、部屋が急にな」
「暗くなることが」
「それで盗みにかかるんだよな」
「ですから」
それでというのだ。
「こうしてです」
「あらかじめか」
「灯りを点けましたが」
「敵に先んじたってことか」
「はい、あらかじめ」
そうするというのだ。
「そうしましたが」
「そうだよな、さてどう来るか」
「これからですね」
「時間になったからな」
その予告時間にだ。
「来ない筈がないな」
「そうだよな」
こう話してだ、そしてだった。
五人は身構えて怪盗が来るのを待った、だが。
怪盗は来ない、それで源三はこう久志に言った。
「僕の結界に反応はないよ」
「私のものにもです」
順一も言ってきた。
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