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レーヴァティン

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第二十九話 怪盗その二

「やはり」
「悪党だしな」
「いざとなれば人も殺す」
「そうした連中だからな」
「色悪とも言えます」
 順一は五人男をこうも言った。
「悪党ではありますが」
「恰好良さもあってか」
「はい、歌舞伎の色悪は独特なものでして」
 恰好のいい美男子である悪役だ、怪談ものでも多く黒い服に整っているが鋭い顔立ちをしているものが多い。
「悪党ではありますが」
「格好良くてか」
「五人男は言うなればです」
「色悪か」
「そちらかと」
「あの連中そういえばな」
 正も五人男のその話に入った。
「服とか立ち回りとか恰好いいよな」
「うん、特に勢揃いの場面とか」
 源三も話に加わってきた。
「紫地の派手な柄の着流しでな」
「傘もですね」
「志ら波なんて書いてあってな」
 白波をこう書いていたのだ、白波は盗賊のことだ。中国後漢末期の乱である黄巾賊を盗賊としてこう呼んだのがはじまりだとされている。
「それでな」
「粋でね」
「恰好よくてな」
「色悪っていうとね」
「そっちだな」
「そうだよね」
「拙者盗賊は仇と思っているでござるが」
 進太はここでも生真面目な口調で述べた。
「怪盗の類は嫌いではありませぬ」
「ルパンとかはか」
「はい、義賊も」 
 彼等もとだ、進太は久志に答えた。
「嫌いではあり申さぬ」
「そうなんだな」
「弱い者から奪うのは賊ですが」
「怪盗とかはか」
「堂々と盗む、しかも強い相手から」 
 貴族等そうした権勢や富貴の持ち主達からだというのだ。
「弱い相手からは奪うことがない」
「それがいいっていうんだな」
「はい、追剥や海賊は違いますな」
「山賊とかな」
「近くの村人や旅人達を襲って奪う」
「それは只の賊か」
「そうした輩共こそです」
 進太はその目の光を強くさせて述べた。
「成敗すべき者達です」
「モンスターみたいにか」
「左様、ですから」
 それでというのだ。
「拙者は常にです」
「盗賊とかをか」
「成敗してきています」
 そうしてきているというのだ。
「常に」
「賊を成敗しているか」
「しかし義賊はです」
 その彼等はというのだ。
「そして怪盗達もですが」
「そうしたことをしないからか」
「嫌いではあり申さぬ」
「同じ盗賊でも違うか」
「はい、また」
 そうだというのだ。
「拙者はそう考えています」
「そうか、じゃあこれから俺達が戦う相手もか」
「はい、噂を聞いていても」
 それでもというのだ。
「決してです」
「嫌いではないか」
「そうです、嫌いではなく」
「正々堂々とか」
「我々も相手をしたいです」
 是非にというのだった。 
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