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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百三十話 最後の花火その九

「そこは同じなんだ」
「いい人も悪い人もいる」
「そのことは」
「うん、悪い奴はね」
 本当にだ。
「男女共にいて」
「悪いことをしているのね」
「そうなのね」
「そうなんだ」
 本当にだ、遠井さんを振ってから貶めていた人達も裏切って攻撃する側に回った人達もだ。話を聞いて本当に酷い連中だと思った。
「人間を止めた様な人達もね」
「邪悪?」
 ダオさんはふと言った。
「つまりは」
「ああ、悪い人の中でも」
「そう言っていい人もよね」
「いるね」
 遠井さんに害を為した人達はむしろ卑しい人達だ、悪人ではあっても質の悪い卑しむべき人達だと思う。
「そうした人達もね」
「結局そういう奴がいない世界ってないのね」
 ダオさんは顔を顰めさせて言った。
「どうしようもない屑って」
「そうだよね」
「ヤクザ屋さんみたいなのが」
「そのものだったりするよ」
 まさに文字通りのヤクザ屋さんがだ。
「詐欺師だったり泥棒だったり」
「泥棒もいるわね」
「そうした人がいない国はないよ」
 例えどんないい国でもだ、このことは残念ながら普遍のことだ。
「いい人も何処でもいるけれどね」
「そうよね」 
 ラブポーンさんは自分の花火が消えてそれをバケツの中に入れて完全に火を消しつつ応えてくれた。バケツの中にはもう使った花火達が突き刺すみたいに置かれていえる。
「そこはね」
「だから世の中捨てたものでもないよ」
 遠井さんのことでもだ、あの人も苦しかったけれど支えてくれる素晴らしい人がいてくれて立ち直って今の幸せに至れた。
「実際ね」
「そうよね」
「うん、希望だね」
 その遠井先輩の名前でもある。
「いい人を希望としたら」
「希望は何処にでもあるってことね」
「そうだよ、いつも傍にいるんだ」
 腐り果てたばかりの中でもだ。
「希望、いい人達もね」
「そういうことね」
「まあ悪い人とは付き合わないことだよ」
 それこそ最初からだ。
「この人はよくないって思ったら」
「もうどうしようもない悪人とは」
「そうするべきね」
「自分が嫌な目に遭うからね」
 危害を加えられることも実際にある、遠井先輩がそうだった様に。
「だからね」
「本当に最初からね」
「そうした方がいいわね」
「そう思うよ、見極めたらね」
 善人か悪人かの見極めは難しい、人間なんてそうそうわかるかわかったら苦労なんてしない。ついでに言えば世の中善人だけか悪人だけだとこんなにやりやすいことはないと親父が僕に言ったことがあった。僕がまだ子供の頃に言った言葉だけれど覚えている。
「付き合わないことだよ」
「そうね」
「その方がいいわね」
 ダオさんもラブポーンさんも僕に応えてきた。
「嫌な思いをするのは自分だしね」
「余計にそうよね」
「そうした奴は嫌われるしね」 
 そうなることが必定だ、ヤクザ屋さんや詐欺師を好きな人はいない。少なくとも普通の人ならば好きにはならない。
「放っておいたらいいんだ」
「嫌われて破滅するから」
「それでよね」
「そうだよ、本当にそうした人はいなくなるから」
 これは親父に言われたことじゃない、もっと言えば畑中さんにも言われたことはない。天理教の教会の人に言われたことだ。 
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