転生とらぶる
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ペルソナ3
1884話
「ほう……ここがお好み焼き屋か。香ばしい匂いがしているな」
お好み焼き屋の前で、桐条が小さく笑みを浮かべながらそう言う。
昼休みに掛かってきた電話は、今日の放課後は特に仕事もなく空いているので、以前言っていたお好み焼きを食べに行きたいのだが……という誘いの電話だった。
幸い俺も放課後は特に用事がなかったので、それを受けたのだが……後でゆかりにこの件を言ったら、何故かジト目を向けられる事になった。
ともあれ、このお好み焼き屋は、東京でも有名なお好み焼き店だ。
……ちなみに、現在俺達がいるのは池袋で、月光館学園からはかなり離れた場所だった。
当然だろう。もし俺と桐条が2人でお好み焼きを食べている光景を見られると、色々と妙な噂が立てられるだろうし……何より、やっぱりどうせ食べるのであれば美味いお好み焼きを食いたくなるのが当然だろう。
そして俺には影のゲートという転移魔法がある。
そんな訳で、俺と桐条はこうして2人で池袋までやってきた訳だ。
「食べ放題とか、何分以内に食べれば無料とか賞金とか、そういう企画がなかったのは残念だったな」
「……いや、私はそこまで多くは食べられないのだが」
俺の言葉に、桐条が苦笑を浮かべつつこちらを見てくる。
まぁ、桐条グループの令嬢がお好み焼きを何十枚と食べたりしているのは、色々な意味でもの凄い光景になりそうだけどな。
そんな風に考えながら、俺は桐条と共にお好み焼き店に入っていく。
「いらっしゃいませ!」
店に入った瞬間、店員の声が聞こえてくる。
お好み焼き店というだけあって、カウンター席にもお好み焼きを焼く為の鉄板があり、テーブル席の方にもきちんと鉄板が用意されていた。
「カウンター席とテーブル席、どちらも空いてますが、どちらにしますか?」
「あー……どっちにする? 俺はどっちでもいいけど」
本当にどっちでも良かったので、桐条に尋ねる。
すると桐条は、少し考え……カウンター席の方を見て、口を開く。
「では、カウンター席でお願いしたい。折角美味いと噂の店に来たのだ。近くで調理するところを見てみたい」
「分かりました。では、焼くのはどうしましょう?」
「む? 焼くをどうするか、とは?」
店員は20代程の男なのだが、桐条を相手にしても薄らと頬を赤くするだけでテンパったりしている様子はない。
この辺り、店員の質やその教育をしている点が好感を持てる。
中には、入ってきた客を口説き始める店員とかもいるらしいからな。
「当店では、お好み焼きをお客様がご自分で調理する事も出来ますし、店の者に調理を任せる事も出来ます」
「……どうする?」
「まぁ、今日は店に任せた方がいいんじゃないか? 自分で調理をするのも面白そうだが、美味いお好み焼きを食いたいのなら」
ホワイトスターにいる時にお好み焼きを作った事があったが、お好み焼きはひっくり返すのが何気に難しい
下手をすると、ひっくり返した時に失敗し、お好み焼きがバラバラになってしまう危険もある。
……まぁ、フライパンでひっくり返すのと鉄板でひっくり返すのは違うと思うが。
何気にフライパンの方が難易度は高いんだよな。
「なるほど。では、折角のアルマーの忠告なのだし、そうさせて貰おうか」
「かしこまりました、ではこちらにどうぞ」
店員に案内され、俺と桐条はカウンター席に座る。
その瞬間、目の前にある鉄板からの熱気が漂ってきて、お好み焼きに対する期待が高められた。
「ほう、これは……」
それは桐条も同様なのだろう。
ただ鉄板の前に座っただけだけというのに、それだけで期待が高められていた。
「メニューをどうぞ」
そう言い、先程の店員がメニューをこちらに渡してくる。
「ふむ……そうだな。アルマーはどうする?」
「俺は、このよくばりセット、特大だな」
「な!?」
メニューを見ながら俺の口から出た言葉に、店員が驚愕の声を上げる。
当然だろう。欲張りセットというのは、豚玉、イカ玉、ミックス、モダン焼き、焼きそばの5つがセットになっているものだからだ。
いや、それだけであれば、それぞれが0.5人前ずつで、多少多いが、食べ盛りの男なら何とか食べられる程度の量でしかない。
だが、特大というのは、それぞれが2人前の代物だ。
つまり、5品それぞれが2人前で、合計10人前となる。
2.5人前の通常サイズならともかく、10人前の特大サイズは……普通ならちょっと食べきれない代物だろう。
勿論それはあくまでも1人だけで食べるのであればというのであり、5人くらいで注文すれば丁度いいのかもしれないが。
「その、大丈夫ですか? 特大サイズとなりますと、量が……」
「ああ、大丈夫だよ。こう見えて俺は大食いだから、心配しなくてもいい」
「……分かりました。尚、食べきれなかった分はテイクアウトも出来ますので、安心して下さい」
店員はそれ以上言っても意味はないと判断したのか、そう告げてくる。
これは、完全に俺が残すと考えてるな。
……まぁ、現在の俺の体型を見れば、その辺りの心配はしょうがないだろうが。
「相変わらずよく食べるな」
「このくらいならな。それで、桐条は何を食べる?」
「ふむ……折角だ、お勧めを食べたいのだが、何かないか?」
桐条の言葉に、店員はメニューの1つ……店のイチオシメニューと書かれているメニューを示す。
「スペシャルお好み焼きはどうでしょう? 他のお好み焼きより若干高いですが、当店自慢のメニューです」
その言葉に、桐条と俺は改めてメニューを見る。
そこに書かれている説明によれば、使われている小麦粉からだし汁に使っている乾物、それ以外の具材も殆ど全てが普通に出されているメニューよりも1段高級な具材を使っているというものだった。
当然スペシャルと名前の付くようなお好み焼きだけに、他のメニューより値段は高い。
もっとも、高いには高いのだが、それでも他のメニューの倍もする訳ではないので、常識範囲内なのだろうが。
「ふむ、では私はそのスペシャルにしよう」
「かしこまりました。もう少々お待ち下さい」
そう言い、店員は去っていく。
「楽しみだな。この匂いは食欲を刺激する」
「そうだな。ソースの焦げる匂いってのは、何でこうもいい匂いがするのやら」
そんな風に数分程話していると、やがてカウンター席の向こうで準備が出来たのだろう。
何人かの店員が材料の入ったボウルをかき混ぜ始めた。
桐条の前に1人、俺の前には2人。
俺が頼んだメニューに比べると人数が少ないのだが、その理由を尋ねると一気に全てを作ってしまうと見た目で食欲が落ちるからという理由らしい。
その気持ちは理解出来る。
幾ら腹が減っていても、お好み焼きが大量に並んでいるのでは見ただけで腹が一杯になってしまってもおかしくはないだろう。
だが、それはあくまでも普通の場合だ。
お好み焼きを焼くのは何気に時間が掛かるだけに、出来れば一気に焼いて欲しい。
そう告げると、店員は本当に大丈夫かと聞きながらも、こちらのリクエストに応じてくれた。
どうやらこの店はキャベツを千切りにするのではなくみじん切りにするらしい。
そのみじん切りにされたキャベツと生地、それ以外の具が色々と混ざったものが鉄板の上に流し込まれ、ジュアァッ、という音が聞こえてきた。
「おお!」
いかにも食欲を刺激する音に、桐条の口から感嘆の声が漏れる。
店員も、桐条のような美人に驚かれるというのは気分がいいのか、若干得意そうな表情を浮かべていた。
ちなみに桐条の方はスペシャルということで、生地にエビやイカといった具材が入っている。
肉は、生地の上に乗せて焼くらしい。
俺の方は最初に豚玉とイカ玉なので、そこまで特別って訳じゃないが……それでもやっぱり、いい匂いが周囲に漂っているのは間違いなかった。
「今度寮の皆を連れてきてやりたいな」
「別にいいんじゃないか? 焼肉の時みたいな感じで」
「……出来れば、アルマー達も一緒にいてくれれば嬉しいのだがな」
そう言い、少しだけ憂鬱そうな表情を浮かべているのは、やはり俺と順平の関係を気にしてのものだろう。
「そう言えば、この前授業で……」
折角こうしてお好み焼きを食べているのに暗くなるのもどうかと思い、話題を変えて桐条との会話を楽しむ。
そして少し時間が経ち……
「お客さん、いよいよ完成ですよ」
その言葉に、俺と桐条は改めて鉄板に視線を向ける。
そこでは既に焼き上がっており、後はソースを掛けるだけといった様子のお好み焼きが存在していた。
そうしてソースとマヨネーズがそれぞれ格子状に掛けられ、青海苔と鰹節により、お好み焼きが完成される。
ちなみにソースやマヨネーズを掛ける時、多少鉄板にはみ出るのだが……それによってソースやマヨネーズの焦げた匂いが周囲に広がるのだ。
完成されたお好み焼きが、俺と桐条の前にそれぞれ移動させられる。
桐条の前には1枚、俺の前には2枚。
桐条はこの1枚で終わりだが、俺の頼んだメニューは欲張りセットの特大だ。
寧ろ、ここからが本番だろう。
実際、俺の前にお好み焼きを移動させた店員は、新たに別のお好み焼きを作り始めているのだから。
「これは……どうやって食べればいいのだ?」
「まぁ、特に作法とかはないから、箸で食べてもいいんだが……そのコテを使って食べるのが一般的だろうな。ほら、こうやって」
桐条に見せるように、コテを使ってお好み焼きを切って口に運ぶ。
ふんわりとしたお好み焼きに、絶妙の火加減で火は通っていながらシャキシャキとした歯応えが残っているキャベツ。
ソースとマヨネーズの香りや濃厚さ……様々な食感や味を楽しめ時々ピリリとした辛さの紅ショウガのみじん切りも存在している。
「こう、か……? ほう、これは……」
見よう見まねでコテを使い、お好み焼きを口に運ぶ桐条。
それを見ながら、何日か前にTVでお好み焼きを食べる時にナイフとフォークを使って食べている芸能人が映っていたなと思い出す。
フランス料理か! と突っ込みたくなったが、よくよく考えてみれば食べやすそうではあったんだよな。
ナイフで切る時にフォークで押さえつけておけるし。
……ただ、家で自分が作ったお好み焼きを食べる時にやる分ならともかく、まさかこういうお好み焼き店でそんな真似が出来る筈もないしな。
ちなみにその芸能人は、ナイフとフォークを持ち歩いており、お好み焼き店でも普通にそれを使う剛の者らしい。
その芸能人と一緒にTVに出ていた他の者達も思わず引いていたのが印象的だった
「美味いだろう?」
「ああ、美味い。……以前から少し気になっていたのだが、初めて食べたのがこのお好み焼きで良かった。まさに、アルマーは私の初めての人だな」
ガキィ、と。
桐条の口から初めての人という言葉が出た瞬間、金属音が周囲に響く。
まぁ、その金属音が何を意味しているのかは、確認するまでもなく明らかだ。
初めての人という言葉に、店員が金属のヘラを鉄板にぶつけてしまったのだろう。
間違ってはいないのだが、出来ればもう少し別の言葉を選んで欲しかったところだ。
ここで焦っては色々と騒動が起きそうなのは、店員だけではなくテーブル席に座っている他の客達も俺の方を見ているのだから、間違いない。
特に高校生くらいの男や、大学生くらいの男は、嫉妬に満ちた視線をこっちに向けている。
私服に着替えているだけに、桐条は大学生……下手をすれば社会人に見られていてもおかしくはない。
実際桐条の外見は大人っぽいので、制服を着ていなければ高校生に見えなくても仕方がないのだ。
「中がふんわりとしているのが、美味いな」
周囲の様子に気が付いた様子もなく、桐条はお好み焼きに舌鼓を打っている。
そんな中、俺はこれ以上何かを言っても下手に目立つだけだと判断し、そのままお好み焼きを食べる事に集中する。
美味い店として知られているだけあって、お好み焼きは美味い。
時間の調整に関しても見事なもので、俺が食い終わるタイミングか、あるいは俺が食い終わるすぐ前に新しいお好み焼きを焼き上げ、俺の前に置いてくる。
だが、俺の食う速度は一向に衰える事はない。
店員は驚愕の表情を俺に向けていたが……まぁ、それはしょうがないだろう。
今の俺にとって、食事というのは純粋に味を楽しむという行為でしかない。
腹の中に入った物は、即座に吸収され魔力に変換されるのだから。
周囲から桐条のような女と一緒にいるという嫉妬、初めての人という言葉に対する嫉妬、信じられない速度でお好み焼きを食べているという畏怖……様々な視線を向けられながら、俺は桐条と2人でお好み焼き屋での食事を楽しむのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389
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