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ヘタリア大帝国

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154部分:TURN15 ハニートラップその四


TURN15 ハニートラップその四

 そしてそれ故にだ。彼は言うのだった。
「しかもそれが成功してもだ」
「はい、エイリス戦ですが」
「まずベトナムや四国までは攻略できる」
 東郷はそこまでは博打ではないとした。
「各個撃破とドクツ式に言えば電撃戦でな」
「しかしインドは」
「インドにはエイリスの正規軍も多い」
 植民地艦隊の他にだ。彼等もいるというのだ。
「そして俺達の東南アジアやオセアニアでの戦い、いや開戦を受けてだ」
「エイリス本土も動きますか」
「艦隊を送られてきますか」
「そうだ。それもそれなりの数が来るだろうな」
「その彼等とも戦い勝たなくてはならない」
「それがなのですね」
「博打だ。それこそな」 
 インド攻略と正規軍との戦い、それもまただった。
「そうそう容易ではない」
「博打に次ぐ博打ですか」
「それに続けて勝たねばなりませんか」
「正直我が国には力はない」
 東郷はよくわかっていた。このことが誰よりも。
「そこまでしないと勝てるものじゃない」
「不可能に近いですね」 
 ここまで聞いてだ。秋山は大きく嘆息してからこう述べた。
「そこまで至ると」
「そうだ。だから博打の連続だ」
「我々の置かれている状況を再認識しました」
 秋山はまた嘆息して述べた。
「嫌になるまでに」
「そうだな。しかし最悪の事態を考えてだ」
「そうしてですか」
「楽観的にいこう。さもないと成功するものも成功しない」
 暗い気持ちでそうしてもだ。どうにもならないというのだ。
「だからだ。気楽にやっていこう」
「その言葉信じさせてもらいます」
 秋山はこれまで以上に生真面目な顔で東郷に述べた。
「是非共」
「ははは、信じる者は救われるだ」
 東郷はいつもの明るさも見せた。
「俺も全力を尽くす。だから秋山も祖国さんもな」
「わかっています。それでは」
「ガメリカとの戦いも勝ちましょう」
「さて、話はこれで終わりだ」
 東郷は明るい調子のまま二人にまた述べた。
「仕事をするか。南京戦の用意をな」
「では長官、書類にサインをお願いします」
 すぐにだ。秋山は少し楽しげな笑みで東郷に言った。
「司令室に持ってきますので」
「おいおい、デスクワークか」
「デスクワークも重要な仕事ですが」
「それはわかっているがな」
 だがそれでもだというのだ。東郷は今度はやや困った様な顔になって。
 そしてその顔でだ。こう言うのだった。
「やはりな。座っての仕事はな」
「御嫌いですか?」
「どうも好きになれない」
 実際にそうだというのだ。彼は実戦派なのだ。
「しかし書類にはサインをしないとな」
「軍は動きません。ですからお願いします」
「わかった。では今からサインをしよう」
「その様に」
 こうしてだ。東郷はあまり好きではないデスクワークも行った。しかしそれが終わればすぐにだ。町に出て遊び人の顔に戻った。その彼の前にだ。
「ねえ叔父様」
「ははは、俺はまだ若いんだがな」
 言い寄ってきた少女、その正体はハニートラップに笑って返した。
「叔父さんって歳じゃない」
「けれどお髭があるから」
「ああ、これか」
 東郷は己の顎に微かに、そしてうっすらとある髭を右手でさすった。髭の感触は確かにある。
 
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