鋼の錬金術師 貴方を守りたい――12人の巫女と1人の神――
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ブルースの背中に乗ってしばらく走っていると、古ぼけた本屋さんの前で止まった。
この本屋さん……カビやコケに混ざって血の匂いがする……。
レンリとブルースは着いてすぐ本屋さんの中に飛び込んで行った。
私もあわてて跡をついていく。
本屋の中に入ってみるとそこは血の海だった……。
辺りの壁に血が飛び散ってなにもかもが、真っ赤な血の色い染まっている。
それに足元には猫の死体がゴロゴロ転がっている。
アルト「なにこれ…まるで……あの時の光景その物じゃん………。」
これは私の意思なのかなんなのかよく分からないけど、レンリの腕をつかんでブルブル震える。
『ゴトッ』
全「ッ?!!」
店の奥の方から何かが動いた音が聞こえてきた。
私たちはゆっくり、慎重に奥へと進む………。
そしたら、私がずっと会いたかった人がそこにいた!!
アルト「父さん……?」
父さんがそこにいた。
猫を食べながら、確かにそこにいた………。
やっと、会えた…父さん……。
アルト「父さん・・・・生きてたんだ・・・・私ずっと探してたんだよ?とう・・・(レ「アルト、違う!!それは、穢れだァァ!!」えっ?」
レンリが言った時はもう遅かった。
父さんの左腕が刃物に変身しそのまま、私を切りつけた。
アルト「グハァ……どうして……どうして…だよ……父さん………ガクッ」
そのまま、私の意識は飛んで行った。
なんでだよ……どうしてだよ………私はただ…父さんとまた……楽しく……暮らしたかっただけなのに!!
あの人をとるんだ、私はもう父さんにとって要らない存在なんだ!!
そう思ったらどんどん父さんのことが憎くなってきた。
そんな時、女の声が私に問いかけてくる。
女「親父が憎いか?」
父さんが憎いかって?そんなの当たり前じゃん!あいつは……あいつは真で当然の奴なんだよ!!
私よりもあの女の方が大切な父さんなんて!!!
女「そうか。ならば我がお前の憎しみの記憶を取り除いてやろう……」
え?取り除く?憎しみの記憶を取り除いたら楽になれるの…?
女「そうだ、お前も楽になりたいだろう……すべてを無に帰してなかったことにしたいだろう………。
その願い、我が叶えてやろう……。」
意識が戻ってきて少し目を開けると、紅色のコートを着た銀髪で黄色い
目をした女が私の心臓の方に手を伸ばしてきて………
アルト「きゃああああああああああああああああああああああああああ」
何かが取り出される……記憶が…私の記憶が……なくなる………。
なにこれ…壊れる……私が私でなくっちゃう!!!
いや……いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
~エドside~
ここで先まで見えていたアルトの過去が終わってさっきの黒い空間に戻った。
そうか、アルトもシレーナや俺と同じように人体錬成を………だからシレーナは「私と…あなた…は…同じ……」って言ったのか。
アルト「どう?人の過去に土足で入ってきて見た感想は?」
エド「アルト………。」
振り返るとアルトが薄暗いライトが当たってる場所に立ってこっちを見ていた。
俺は勘違いをしてたみたいだ、てっきりこいつがアルトだと思って居たがこいつは………
エド「お前は、誰だ?」
アルト「えっ?」
アルト「えっ?何言ってんの?私はアルトに……」
エド「お前はアルトじゃない。本物のアルトは何処だ?!」
俺の質問に偽アルトは驚きながらも、すぐに状況を理解して「ふふふ」と笑い出した。
アルト「凄いね、さすがは蠍座の巫女の心を溶かしただけあるね。
そうだよ。私はこのスピルーンの持ち主じゃない、ただの守り人よ。
本物アルトはこの先にある、氷の中で寝てるわ。」
偽アルトは、薄暗く光っている道の先にある小さな扉を指差しながら言っている。
守り人……あの紅色のコートを着た女がこの結晶を取ったことによってアルトと入れ替わったんだな。
アルトをこれ以上傷つけないために……。
エド「……アルトを守ってくれてありがとな。」
守り人「ッ?!!」
偽アルトにアルトを守り続けてくれた礼を言いながら俺はあの扉に向かって歩いて行った。
守り人「……蠍座の巫女が心をあいつに開いた理由が分かったかも。」
偽アルトはエドの背中を見ながら静かにそう言った。
*氷の間*
『ギィ……』
扉を開けて、中に入るとすぐにデッカイ氷があった。
氷の下にたぶん本物のアルトが体育座りをしてシクシクと泣いていた。
アルト「うっうう……なんで…」
エド「アルト……。」
泣いてるアルトにそっと近づき、声をかける。
アルト「エド……。」
涙をポロポロ流しながらアルトは俺の方を見る。
アルトの目線に合わせてしゃがむ。
エド「アルト……お前は親父の事や母さんの事の真実が知りたいんだよな?」
質問にアルトは下を向き何も答えずに頷くだけだった。
それでも俺はこれはアルトの返事だと思い話を進める。
エド「俺にもお前の親父や母さんの事は分からないが、お前の過去を見て一つだけ分かった事があったんだ。」
アルト「グスッ、分かった事……?」
下を向いて泣いていたが、親父の事や母さんの事を言うとこっちを向いてきた。
エド「お前の親父はお前の事を誰よりも大切に思って居た。
真理で死にそうになったお前を、命と引き換えに助けたのもお前の親父だ。
だから、親父を憎んだりするな!お前は親父に命を救われたんだ!」
俺の言葉に、考えもしなかった真実に、アルトは驚きを隠せない。
アルト「嘘……父さんは………私よりもあの女の人を…」
俺にしがみつき、アルトは驚いた顔でブルブル震えながら言う。
エド「なぁ、アルト。俺も手伝うから、一緒に真実を確かめないか?」
アルトの頭を優しく撫でながら言う。
今は全然関係ないが、アルトの髪はいい香りがするな///
アルト「本当に?信じてもいいの?」
エド「…///」
ヤバイ!涙目で頬が少し赤いアルトを見て思わずドキッてなってしまった//
俺にはウインリィがいるのに……。
エド「ああ、ほんとだ。約束する!」
アルト「ありがとう……エド…。」
『シュウゥゥゥゥ』
アルトが「ありがとう」と言った途端、シレーナの時と同じように胸のあたりが光り始めた。
もしかして、これがアルトが俺に心を開いた合図か?!
そう思った俺は、コートのポケットから、みんなの思いを込めた黄色い結晶、アルトの記憶や感情がこもった黄色い結晶、を取出し光っている中心に黄色い結晶を押し込んだ!
アルト「ッ!! いやあああああああああああああああああああ!!!」
エド「くっ。」
アルトが暴れだして、結晶が入ってくるのを拒む。
だが、俺は力いっぱい結晶を入れ込む。
そして、結晶の全体すべてを入れ終わったその時!
アルトは目をつぶって涙を流している。
そしてシレーナの時と同じように、あの錬成陣が出てきて中から黄色いカギが出てきた。
アルト「思い出したくなんてなかった………
【怒り】のなんて……
後に続くのは【憎しみ】だから……」
エド「アルト……俺は…。
アルト「憎みたくなかった……
哀しみたくなかった……
それがたった一つの願いだったのに……」
アルトに怒りの感情を戻したこと少し後悔しそうな俺にあの女の声が語りかけてきた。
女「落ち始めた運命の砂時計の砂は誰にも止められない……。
後悔をするくらいなら、この【怒り】司る……
【イエローキー】………を手に取って……?
もう、後戻りは出来ないのだから……。」
覚悟を決めて、イエローキーを取ることにした。
このカギが何のためにあるのか知らないが、あの女が言った通り俺はもう後には戻れないのだろうから……。
イエローキーを抜き終わると光は消え、またあの時のようになにか強い力がスピルメイズの外に追い出そうとする。
俺はグッタリ倒れているアルトを抱きしめ、強い力に身を任せた……。
*一番広い部屋*
『ドンッ』
ウインリィ「エド!みんな!!」
空から落ちたような感覚がしたけど、気付いたらウインリィの店の一番大きな部屋にいた。
俺たち帰って来たんだな……。
腕の中にはちゃんとアルトは居たし、周りを見てみたらアルもシレーナもリンもランファンもいた。
0号は、レンリに戻っていたがちゃんといた。
良かった、誰ひとり欠けずに帰ってこれたんだな………。
それから俺達はまだ気絶している、アルトとシレーナを二回のベットに寝かしてリビングでこれからどうするかの話し合いを始めた。
だが、この話し合いにはレンリとブルースは参加せず、リンは途中から参加した。
あいつらは何処で何をしていたんだ?
~レンリside~
レンリ「えっとこれがこれで~。」
ブルース「あいつらに何も言わなくていいのか?」
私が夜逃げ……あ、間違えた。旅に出る準備をしていたら、ブルースが話しかけてきた。
レンリ「別にいう必要なんてないんじゃない?私が出て行ったって誰も心配しないよ♪」
私が思って居ることをそのまま言うとブルースは難しい顔をして、
ブルース「心配はするんじゃないのか?今回のお前の体の事も凄く心配してたしな。」
あ、確かに心配してたね……なんか怒ってもいたし…。
でも、関係ないと言えば関係ないでしょ。私とエド達は赤の他人なんだから………。
自分にそう言い聞かせて、準備を急いだ。
やっと準備もし終わってそろそろ出ようかなぁ~と思った時、リンがバッと私の前に現れた。
レンリ「何?」
今から出ようと思ってたのに、こいつ何考えてるんだ………?
リン「なにかあったら……」
レンリ「伝書鳩。」
それだけ言うと、私はリンを横切ってブルースに乗ってお店を離れた――
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