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とりかえばや 復活風

作者:adan
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第一話

私は恋をしてました。


でもそれは叶わぬ恋、という類いのものでした。





前世というものがあるというのなら、私はどれほどそれに縁のある事か。

これまで、すでに3度、人として生きて来ました。


一度目は、魔女でした。

二度目は、姫でした。

三度目は、女子高生でした。


悔いのある人生は一つもありません。だって私は、必至に生きてましたから。
夕べに死んでも構わないほどに。

だけれど、3度目ばかりは少し、いいえ、後悔してしまった。


恋をしてはいけない人に、うっかり恋をしてしまった。



その人は普通の人で、会社に行って、妻子が居て、温かい家庭を築いていました。
私の家の隣に引っ越して来たとき、挨拶に訪ねて来たその人に、うっかり一目惚れしてしまうとは、とんだ失敗でした。




この気持ちには、とっとと蓋をしました。

だって、壊したく無かったんです。


あんなに、良い人たちでしたから。




とても良い人たちでした。奥さんも、娘さんも、本当に。

家族ぐるみの付き合いとなって、よくお互いの家を行き来するようになって、あの人に『本当の姉妹みたいだね』と言われて、とても嬉しかったのと、ちょっと淋しかったのと。


今さら恋を成就させようなんて思わないから、家族になれたらと、どんなに願ったか。




ちょっと、ぼーーっとしてたようで


信号が赤だったのに、気付かなかったんです。









気がついたら、ベットの上でした。

とても高い天井、どこかで見覚えのある吊るされたくるくる回る飾りをぼぅっと眺めていると、



「あらあらあら、起きたのね、つっくん。」

首が動かないので、見る事も出来ませんでしたが、同じ部屋にその名の子が居るのでしょう。
知り合いに、ツッ君と呼ばれる子が果たして居たかどうか、記憶には無いけれど。


そこで、ようやく目の前に現れた先程の人物。
とてもかわいらしい、見知らぬ女性が私の方に手を伸ばし、


〈!!?〉

私を軽々持ち上げました。

「本当につっくんは大人しい子ね。もうちょっと元気にはしゃいで構わないのよ?」

いささか、子どもに言うのだとしたらどうかと思う注文。




ようやく理解が追いつきました。

私どうやら、4度目らしいです。自分でも吃驚でした。





今度の名前は、沢田綱吉というようです。

男の子になりました。




あれから、年月が過ぎ去るのをぼぅっと過ごしていたわけじゃありません。

でも、夕べに死んで良いとも思っていません。

今度こそ、叶えたい。


私が魔女だった時、心のどこかで願っていました。

独りは寂しい、と。



姫になっても、伴侶や子は居ても、独りにかわりはありませんでした。


女子高生だったあの時は、共に居たいと思う人にはもう、共に居る人が決まっていてどうする気も無くなってしまいました。

願って叶うなら。
次は一緒が良いと。



恋仲でなくとも、友達や、仕事仲間であれたら良いと。
形なんてなんでも良かったんです。


私の心は、もう独りにはならないから。


あの人の幸せを願うだけで、心がいっぱいで、一人だなんて感じないから。


どんなに短い人生でも、一番幸せでした。


でも今度があるならと願ったのは、欲が出たんです。久しくありませんでしたけれど、随分と大きな欲でした。





私が、『僕』と改め、ようやく中学に上がった頃、やっと出会えた。


花舞う樹の下で、涼しげな顔をした恋しい人に。 
 

 
後書き
『夕べには骸に』のフレーズ
元ネタ 論語でしょうか? 朝とても良い言葉を聞けたなら、夕べに死んでも良いほどに1日が素晴らしいものとなる。だったか 
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