月夜の下でキミと
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
スカイナイトドリーマー第4話
前書き
動悸なのか、恋なのか
9月15日PM8:45:00再生ー
依子は、昨夜由美佳が目撃したという"人影"をこの目で確かめようとしていた。
スカイナイトドリーマーは、録画・再生機能もついている。依子は今まで一度もその機能を使ったことはなかったのだが。
自称工場マニアの由美佳が、
「川崎の工場地帯を飛んでたんです。あまりにもキレイだから高度を下げていったんですよ。それだって地上からはかなり高い場所でした。建物の先端に人が立ってるように見えたんです。」
確かに、川崎市に入ると都心の夜景とはまた違った美しさを見ることができた。十数年前にも、工場ブームがあったようだが、さらに規模が拡大し最新鋭の見たこともない機械がうごめき、怪しく光り、イビツな建物が見渡す限り不気味にそびえ立っている。
由美佳が言った通り、高度が徐々に下がっていく。
工場地帯の中心部に一際大きな建物があり、タワーのようになっていた。
外階段が取り付けられていて、階段の一番上に黒い物体、いや、人影が映っていた。
巻き戻して、ズームしてみる。
リモコンを操作する手がじんわり汗を帯びてくる。
捉えた、少年だ。
白いTシャツにジーンズ。手すりに肘をつき、手のひらに顎を乗せている。
さらに寄っていく。シャープな顔立ち。ひょろっとした体形。
「わわ!?」
操作を誤り、少年の顔がどアップに映し出された。
どことなく微笑んでいるような口元と、吸い込まれそうな薄茶色の瞳。
依子は、まるでキスする直前のような感覚に陥り、慌てふためいて視覚グラスをとった。
胸に手を当てると鼓動がかなり早くなっている。
ドキドキしている。
これは…動悸なのか、恋というやつなのか。
わけのわからぬ感情に依子は、自分が恥ずかしくなり枕に顔を押し当てた。
恋って呼べるのか?こんな恋の仕方ってアリなのか?
その問いは、彼を探すところからはじまるのだった。
ページ上へ戻る