月夜の下でキミと
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
スカイナイトドリーマー第2話
前書き
工場マニアって知ってる?もうね~美しくも怪しい光が入り乱れ、縦横無尽に鉄の造形物が乱立して、見る者を別の次元に引き込んでゆくのよ。
昼の12時。依子は職場の事務室で手作り弁当を広げ、ぼんやりテレビを眺めながら食事をしている。
昼休憩はいつも一人だ。男が多いこの職場は、みな大体外へ食べに行ってしまう。最近入った新人事務員の由美佳も、いつも先輩たちに昼を奢ってもらいに出かけてしまうので、お陰で静かで平和なひとときを過ごせている。
かといって、仲が悪いわけでもない。どちらかというと依子の方が距離を取りたがっているのかもしれない。
珍しく由美佳が、コンビニの袋を下げて事務室に入ってきた。
「先輩、聞いてください。給料日前だからって、今日は誰もご飯連れてってくれないんですよぉ。」
私の隣の事務椅子に腰を降ろし、机にコンビニで買ったスパゲッティとペットボトルのお茶を乗せた。
「ふーん、たまにはいいんじゃない。」
依子のそっけない相槌にもめげず、由美佳は、あれこれ話しかけてくるが、毎晩の寝不足も手伝ってまぶたが重くなってきていた。
依子がこっくりこっくりしかけた頃、
「あ!」
テレビを見ていた由美佳が急に大きな声を出したので、びっくりして顔を上げると、スカイナイトドリーマーの大ヒットについてニュースに取り上げられていたところだった。
「私、これ一度でいいから使ってみたいの!私、工場マニアなのよ。これで空から見てみたいわぁ。」
由美佳がキラキラした目でテレビにかじりついているので、とっさに
「それ家にある」
依子は言ってから後悔することになった。
工場がいかに美しいかを延々と語られ、さらには
その晩、由美佳は依子のアパートの初めての訪問者となるのだった。
ページ上へ戻る