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スイミングスクール

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第六章

 そして練習の後でだ、水着とジャージの上だけを羽織った姿の由紀恵に声をかけられた。
「ちょっといい?」
「何ですか?」
「今日ちょっと残れる?」
「今からですか」
「個室の子供の練習用のプールに行きましょう」
 こう誘いをかけてきたのだ。
「そこで教えてあげるから」
「水泳とは別のことを」
「そうよ」
 界人の手をそっと握って引き寄せて囁いた。
「これからね。他の先生達は帰っていってるし」
「だからですね」
「あの部屋内側から鍵かけるお部屋だから」
 鍵を閉めれば後は誰も中に入って来られないからというのだ。
「だからね」
「今からですか」
「そうしない?」
「帰り遅くなりますけれど」
「先生車だから」
 それでスイミングスクールに来ている、由紀恵は界人にこのことも話した。
「だから家まで送ってあげるから」
「遅くなってもいいんですね」
「水泳の特訓で残っていたって言えばいいでしょ」
 界人の両親にはとだ、由紀恵は彼にこうも話した。
「先生とね」
「じゃあ」
「ええ、来て」
 その子供用のプールがある部屋にだ、そこでまだ水に慣れていない保育園や幼稚園の子供に水に慣れることから教えているのだ。
「そしてあそこでね」
「今日もですね」
「教えてあげるから」
「今日も僕が上に」
「先生が上よ」
「先生がですか」
「そう、そうしたことも教えてあげるから」
 あえて多くは言わず二人だけがわかる様に話していく。
「行きましょう、マットもあるしそれにね」
「そrねい?」
「ちゃんと用意してあるから」
 ジャージの上のポケットからあるものを出した、それは由紀恵が界人に水泳のこと以外で教えていることに欠かせないものだった。
「安心してそうしてね」
「今日もですね」
「ええ、教えてあげるわ」
 界人にこう言って彼を部屋に入れた、そうして中から鍵をかけてだった。二人だけの教え教えられる時間を過ごすのだった。


スイミングスクール   完


                 2017・8・23 
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