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実はくノ一

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第一章

                実はくノ一
 守口唯の家は実は代々忍者の家系である、古くは幕府に仕えて大坂にいる忍者の家であったのだ。そして今もだ。
 家では日々忍術の修行に励んでいる、しかし師匠でもある祖母にはよく困った顔でこうしたことを言われていた。
「うちは代々正統派の忍者だからいいけれど」
「くノ一だからっていうのね」
「それであんたを見てるとね」
 どうにもという顔で言うのだった。
「顔は可愛いけrど」
「色気がっていうのね」
「ないからね、まあ中学生だけれど」
 だからとも言う祖母だった。
「まだ出ないにしても見ていたら」
「色気はなの」
「ないからね、それを言ったら祖母ちゃんもだけれどね」
 笑って言った祖母だった。
「やっぱり代々色気がないから」
「くノ一って色気がないと駄目っていうわね」
「男をたらしたりもするからね」
 忍び込んだ時にというのだ。
「だから必要なんだよ」
「くノ一だと」
「けれどあんたにはないしうちはそうした忍者じゃないから」
 だからだというのだ。
「まあそれならね」
「私はこのままなのね」
「普通の忍者としてね」
 つまり正統派の忍としてというのだ。
「やっていくしかないね」
「色気に走らず」
「ないなら走れないだろ」
 このことも笑って言う祖母だった。
「それに考えてみたら今時色仕掛けの忍術もないし」
「隠れたり跳んだり手裏剣投げたり」
「そういうのだからね、スタントマンとか探偵はしても」
「お祖父ちゃんもお父さんもしてるし」
 そうして色々と仕事をして生計を立てているのである、今は大学生の唯の兄もこのことは同じである。
「私もなの」
「忍術を活かして生きていたいなら」
 それならというのだ。
「あんたはよ」
「色気を考えずに」
「正統派の忍者として生きるんだよ」
「ご先祖様がそうだったみたいに」
「そうするんだよ」
 こう唯に言い孫自身もだ、色気などは考えずにだった。 
 忍術の修行を続けていた、その結果俊敏で体力も備わり。
 体育の成績はよく部活の陸上部でも活躍していた、選手にもなっているハードルでも見事にだった。
 跳んで駆ける、その彼女を見て顧問の先生は笑顔で言った。
「この調子でいったら今度の大会もね」
「いい成績残せますか」
「いけるわ、守口さん本当にね」
 唯に笑顔で言うのだった。94
「走るのも跳ぶのもいいわね」
「そういうのは確かに得意ですね」
「何かね」
 ここでこうも言う先生だった。
「忍者みたいね」
「あはは、私が忍者ですか」
 内心そうですよと思いつつもこう言われることは慣れていて平然と返す唯だった。
「そんな動きしてますか」
「ええ、高いところに行くのも得意よね」
「そこでのお仕事も」
「それで隠れるのもよね」
「昔からかくれんぼは見付かったことがないです」
「だとしたらね」
 そうした要素が揃っていると、というのだ。
「もうね」
「忍者ですか」
「そんな感じよね」
「じゃあ手裏剣とか投げたり」
「出来る?」
「ダーツは得意です」
 手裏剣ではなくこちらと答えるのが常だった。 
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