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レーヴァティン

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第二十六話 騎士その三

「異端であろうが誰であろうが虐殺した」
「十字軍らしいな」
「そうですね」
「ああ、その十字軍も世界史の授業で出たな」
 高校時代のだ。
「南フランスを完全にフランスに取り込んだんだったな」
「ですが異端も誰もを殺して回りました」
 教皇庁からの使者が異端かそうでないかをどう見極めればいいのかと聞かれ全て殺せ、神があの世で見分けられると答えたことからはじまったという。そして実際に南フランスは血の河が流れ街も村も徹底的に破壊された。
「その犠牲者百万だとか」
「物凄い数だな」
「全くですね」 
 第二次世界大戦中の日本の民間人の犠牲者がそれ位だという、当時のフランスの人口からすれば恐ろしい割合の犠牲者だ。
「そうしたこともありました」
「酷い話もある国なんだな」
「他にもサン=バルテルミーの虐殺も」
「あれは俺も聞いてるよ」
「酷かったですね」
「寝込み襲う形でな」
 真夜中に起こった、それ以前から不穏な空気があったにしろ。
「いきなり殺しまくって手当たり次第にだろ」
「新教徒以外にもユダヤ教徒や嫌いな相手でも」
「殺しまくってな」
「パリからフランス中に広まりました」
 その虐殺劇がだ。
「そうなりました」
「宗教で血が流れることも多かった国なんだな」
「その一面もあります」
「そうしたことはこっちの世界ないからな」
 キリスト教は存在してもだ。
「随分ましだな」
「はい、どうしても宗教が悪く絡みますと」
「ややこしいことになってな」
「血生臭くもなります」
「それはフランスに限らないか」
「欧州ではよく観られたことです」
 それこそ欧州各国でだ。
「魔女狩りや異端審問も然りで」
「虐殺とかそんなのになるか」
「はい、そうです」
「嫌な話だな」
「日本人から見れば想像出来ないですね」
「宗教が違ってもな」
 その日本人の感覚からだ、久志は答えた。
「別にな」
「構いませんね」
「カトリックやプロテスタントでもな」
 あえてキリスト教に例えて話した。
「別にな」
「私もそう思います」 
 順一もあちらの世界の日本人として述べた。
「それはかえってです」
「神様の教えじゃないな」
「はい」
 そう考えているというのだ。
「まさに」
「そうだよな、宗教は大事でもな」
「そうした狂気には陥らないことです」
「それに謀略にも使うな、か」
「フランス王の様に」
 フィリップ四世だ、そのテンプル騎士団を陥れた。
「やはりこうした話も欧州には多いですが」
「異端ダの信仰が違うだの言ってか」
「謀略に悪用することも」
「やばいよな」
「その場合はテンプル騎士団の二の舞で」
「アルビジョワ十字軍もか」
「結局は征服を覆い隠す大義名分でした」
 フランス王国が南フランスを併呑するそれに使われた、この十字軍もその実態は他の十字軍と同じ侵略戦争だったのだ。
「教皇庁がお墨付きを与えた」
「侵略だけじゃなくて虐殺のか」
「貴方はそうしたことはお嫌いですね」
「好きな筈ないだろ」
 即座にだ、久志は順一に真顔で答えた。 
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