新しいスパイク
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第三章
「神様のお陰よ」
「神様が導いてくれた」
「そうだっていうのね」
「そう思うわ、だから次の試合でもね」
まさにと言うのだった。
「あのスパイクを履いて頑張っていくわ」
「そう、そうしてね」
「センターフォワードのあんたが活躍してくれたらうちも有り難いし」
「チーム的にもね」
「そうしていくわね」
笑顔で応える莉乃だった、そしてだった。
莉乃はそのスパイクを履いて次の試合でも活躍した、彼女の高校時代の部活はそのスパイクと共にあった。
しかし部活を引退する時にそのスパイクを見て気付いたのだった。
「あれっ、もうね」
「もう?」
「もうって?」
「かなりボロボロになってるわね」
ずっと履いてきたそのスパイクはというのだ。
「三年履いてて」
「ずっと快適で履いてて」
「三年履いてたら」
「もうすっかりなの」
「ええ、ボロボロになってたわ」
このことに今気付いたのである。
「一年の春に買った時はピカピカだったのに」
「それがなのね」
「もうなのね」
「ボロボロになってたの」
「そうなってたわ、いや本当にね」
実際にと言うのだった。
「ボロボロよ、けれどここまで頑張ってくれて」
「スパイクが」
「そうしてくれて」
「嬉しいわ、ずっと有り難う」
スパイクに笑顔でお礼を言ったのだった。
「一年から三年の間ね」
「部活に励んでくれて」
「そうしてくれてよね」
「有り難う」
「そう言うのね」
「心からね」
笑顔のまま言う莉乃だった、そしてそのスパイクは家に持って帰って奇麗に洗ってから自分の部屋に置いた。高校時代の思い出の一つとして。
新しいスパイク 完
2017・10・28
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