真田十勇士
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巻ノ百九 姉妹の絆その四
「かえって危うい」
「そのことも」
「もう右大臣になっておるから遅いが」
「これ以上の官位は」
「今は早い」
むしろ早過ぎたというのだ。
「そしてこのこともな」
「妾が」
「言って欲しい、そなた達のことは聞かれるな」
「はい」
お江、そしてお初の言葉はというのだ。
「昔から聞いて頂けます」
「ならばな」
「私とお初姉様で」
「止めてもらいたい」
「わかりました」
「治部や刑部なら止められた」
苦い顔でだ、秀忠は関ヶ原の結果刑場や戦の場で消えた彼等のことも思った。そのうえでの言葉だった。
「こうした時もな」
「確かに。あの方々なら」
「我等が死なせたが」
それでもと思い仕方がなかった、お江の気持ちを思うと。
「そなたの姉君を止められる者がいなくなった」
「大坂には」
「さすればそなたもそここまで苦労はしなかった」
こう思い苦い顔になるのだった。
「やはりな」
「はい、ですが」
「言っても仕方がない」
石田や大谷のことはというのだ。
「我等が死なせただけにな」
「尚更ですね」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「言っても仕方ない、だから止めよう」
「わかりました」
「しかしな」
「今の大坂はですね」
「止められぬ者は同調する者達だけじゃ」
大坂城にいるのはというのだ。
「まことにな」
「それではですね」
「危うくなる一方じゃ」
「だから余計にですね」
「そなたとな」
そしてお初にというのだ。
「頼みたい、よいな」
「承知しています」
お江も必死だった、それで大坂の姉に必死で文を送り続けた。茶々にしても流石に妹に言われては大人しくなる。
それでだ、その度にこう言うのだった。
「承知はしました」
「お江様のお文ですね」
「それのことは」
「そうです」
こう周りの女御衆に言う。
「まことに」
「ではこの度は」
「お江様に免じて」
「動きませぬ」
こう言うのだった。
「そうします」
「わかりました、それでは」
「その様に致しましょう」
「修理達にも伝えるのです」
大野、そして片桐等家老達にもというのだ。
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