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真田十勇士

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巻ノ百八 切支丹禁制その十

「僧であるからそこでもう充分と思っていてな」
「だからよいのですな」
「あの方については」
「そうなのですな」
「そうじゃ、謀だけではないし権勢も強く欲せぬ」
 正純とは違いというのだ。
「だからよい、しかし上総介はな」
「天下が定まるとですな」
「かえって危険ですな」
「ああした御仁は」
「史記を読み異朝の話を聞くとな」
 即ち明朝のだ。
「国を建てた功臣は滅ぼされておる」
「韓信、黥布、彭越と」
「漢ではそうでしたな」
「そして明でもですな」
「太祖がかなり殺していますな」
「本朝でもあった」
 そうした話はというのだ。
「これまでの二つの幕府でな」
「ですな、九郎判官殿にしても」
「初代の室町殿も弟君をと言われていますし」
「本朝でもありますな」
「そうしたことは」
「今の幕府はそうしたことはせぬつもりじゃが」
 しかしというのだ。
「あの者はな」
「権勢が強くなれば」
「どうしてもですな」
「放っておけぬ」
「そうなりますな」
「どうしても」
「本来ならな」 
 こうも言った秀忠だった。
「この場合功臣を消すとなると」
「あの御仁ではないですな」
「大抵武勲を挙げた者がですな」
「粛清されていますな」
「そうじゃな、先に名が出たが」
 まさにというのだ。
「韓信、黥布、彭越とな」
「そうした者達ですな」
「武威があり所領も多い」
「そうした者ですな」
「力が強くなり過ぎますし」
「放っておけず」
「そうなりますな」
 周りの者達も言った。
「どうにも」
「左様ですな」
「そこは」
「そうじゃ、それでじゃ」
 まさにというのだ。
「普通はこの場合は上総介ではないが」
「しかしですな」
「あの方のご気質故」
「どうにも」
「何度も言うが王道じゃ」
 幕府が求めるものはだ。 
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