レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十五話 最後の修行その二
「その様に」
「そうですか、では」
「はい、譲二いえ円心殿と共に」
「座禅を組まれて」
「心身の鍛錬をさせて頂きます」
「わかりました」
こうしてだった、英雄と正も譲二と共に禅堂に入った。その禅を組む場所以外は何もない場所でだ。
三人は禅を組んだ、そうしてだった。
無我の中に入りそこからだった、時間を過ごしたが。
ふと目を開けた時にだ、目の前にいた老師に告げられた。
「終わりです」
「もうか」
「はい、無我に至られましたね」
「眠った訳ではない」
このことはしっかりと述べた英雄だった。
「決して」
「それはわかっています、禅を組まれますと」
「無我に至るか」
「何も考えず、邪念なく組めば」
「俺達の様にか」
「そうです、そして無我に至った時は」
それはどれだけであったかというと。
「幾らだったと思われますか」
「わからない」
英雄は即座にかつはっきりと老師に答えた。正と譲二も共にいて三人共目は開けているがまだ足は禅のままだ。
「それはな」
「そうですね。ですが」
「無我に至ったことがか」
「大きいのです」
「禅を組んだことはさっきも言ったが」
「はじめてですね」
「それで無我に至ったのか」
このことについてだ、英雄は不思議そうに述べた。
「そうなのか」
「そうです、禅は組んでいくことが大事ですが」
「それが次第に無我に至るからか」
「貴方達は何の欲もなく禅を組まれましたね」
「それがよかったのか」
「仏門は我を捨てること」
その教えのことも話すのだった。
「左様ですな」
「この世界でもそれは変わらないか」
「はい、ですから」
「最初から我なく禅を組んだからか」
「無我に至りました、そしてそれがです」
「最後の修行だったか」
「円心の」
彼のというのだ。
「そうだったのです」
「見たところかなりの修行を積んでいるが」
譲二の落ち着いた態度と気を見てだ、英雄は老師に述べた。
「それでもか」
「何度も無我に至っていますが」
「最後にか」
「もう一度です」
「無我に至ってもらう為にか」
「禅を組んでもらうつもりでして」
そしてというのだ。
「そのうえで約束をしていました」
「無我に至ったことを覚えてもらう為か」
「その為の修行でした」
「成程な、そして俺達もか」
「無我に至りました、そして無我に至れば」
「それだけだな」
「力が強くなります」
そうなるというのだ。
「気が」
「そういうことか、ではな」
「はい、その強くなった気をです」
「これからの旅にか」
「役立てて下さい」
「わかった」
確かな声でだ、英雄は老師に答えた。
「それではな」
「武士は術も使えますので」
老師は英雄にこのことも話した。
「貴方もだと思いますが」
「確かにな、使えることは使える」
その通りだとだ英雄も答える。
ページ上へ戻る