心桜「つっちゃー、今日もお便りが届いてるよ!」
七夏「わぁ☆ いつもお便りありがとうです♪」
心桜「じゃ、早速読んでみるよ!」
七夏「はい☆」
心桜「えーっと『七夏さん心桜さん、こんにちは。私、物忘れが凄くひどくて、例えばお出かけした直後に、家の鍵閉めたかなーって不安になったり、封筒にお手紙入れたのに、ポストの前でお手紙入れたか不安になったり・・・他にも、二階から一階に物を取りに行って、一階で何を取りに来たか思い出せなくなったり・・・どうすれば物忘れが直ると思いますか?』・・・んー、物忘れかー。つっちゃーはどう思う?」
七夏「私も物忘れはあります。お買い物帳を忘れて、お店で何を買えばいいのか分からなくなったり・・・」
心桜「それ、なんか微妙ーに違う気がするけど・・・なんだろ?」
七夏「忘れ物?」
心桜「それだっ! 物忘れって言うのはあれだよあれ・・・みたいに思い出せないような事」
七夏「実体が無い事?」
心桜「思い出せたら実体はあるんだけどね・・・そう、あれだよ、ほら、あれ・・・分かるでしょ?」
七夏「あっ、あれの事ですね!」
心桜「そうそう! ・・・って、分かるんかいっ!!」
七夏「物忘れの事ですよね!」
心桜「そうなんだけど、あーなんかもう、訳が分からなくなってきたよ」
七夏「そう言えば、この前、知らない人に声を掛けられて・・・」
心桜「うぉー!! つっちゃーナンパされたの!?」
七夏「そ、そうじゃなくて、私は知らない人なのですけど、声を掛けてきた人は私の事を知っているみたいで・・・私、その人の事忘れているのかなーって思って一生懸命思い出そうとしたのですけど・・・」
心桜「あー、あたしだよ、あたしっ!!・・・って、言われても、相手の名前が出てこない・・・ってやつか」
七夏「はい。一生懸命思い出そうとしたのですけど・・・」
心桜「そういう時は、単刀直入に『名前』を訊くといいよ」
七夏「それって、失礼にならないかなー」
心桜「ここでのポイントは『名前』なんだよ」
七夏「???」
心桜「まず、『ごめん、なんて名前だったっけ?』と訊くと、例えば『時崎です』・・・と、苗字が分かるよね?」
七夏「はい・・・って、どおして柚樹さんの名前が!?」
心桜「まあまあ・・・そこで、『あ、苗字は分かってるんだけど、名前が思い出せなくて・・・ごめん』と続け、名前も教えてもらう」
七夏「なるほど☆」
心桜「『名前が分からない』という事なら、相手もそんなに傷つかないと思うよ。さらに随分変わった(綺麗になった/格好よくなった等)から分からなかったよ・・・と彩を添えてあげれば完璧!」
七夏「ここちゃー、凄いです!」
心桜「しかし、この方法は弱点もあるよ」
七夏「え!?」
心桜「同じ相手に二度使えない」
七夏「さすがにそれは・・・」
心桜「んで、つっちゃーは、その人の事、思い出せたの?」
七夏「いえ・・・。以前にご宿泊くださったお客様だったのですけど、私はお話した記憶が無くて、でも、その人は私の事を覚えててくれたみたいで・・・」
心桜「なるほどねー。つっちゃーは、一度見たら忘れられない魅力があるからね~」
七夏「そんなのないよー」
心桜「あるよーって・・・ちょっと本題に戻さないと」
七夏「本題?」
心桜「つっちゃー、まさかの物忘れですか!?」
七夏「えっと・・・物忘れがひどいという事でお悩みのご相談ですね」
心桜「なんとか、首の皮一枚つながっていたか・・・」
七夏「ここちゃー、それって、事実上つながってないって意味になります」
心桜「あははー。だからこそ、あたしが繋げてしんぜよう!」
七夏「いつの時代の人なの?」
心桜「まあまあ、んで、物忘れにはもうひとつあって『忘れるという事は、今の自分にとって必要の無い事』と考える事もできるよね。大切な事って忘れないはずだから。忘れる事も成長なんだよ」
七夏「忘れる事を記憶される・・・のかな?」
心桜「なかなか難しいね。他にも忘れている方が良い事もあるよ」
七夏「どんな事?」
心桜「例えば、懸賞! 応募した事を忘れている方が当選したりしない?」
七夏「そう言われれば・・・」
心桜「ま、懸賞に関しての確証はないんだけど、あたし個人的にはそんな気がするよ」
七夏「意識しない方が、滑らかに事が進みそうですね!」
心桜「そうそう、幸運の女神様は無欲な心の人に惹かれるんだと思うよ」
七夏「忘れる事で良い事もあるんですね☆」
心桜「そゆこと! そんな訳で、ちょっと物忘れるくらいの方が可愛くて親近感があるなーと思う私たち『ココナッツ』でした!」
七夏「お便り、ありがとうございました♪」
幕間十 完
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幕間十をお読みくださり、ありがとうございました!
本編の方も、どうぞよろしくお願い申しあげます!