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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百二十九話 リューネブルクとクレメンス


大変お待たせしました。

先日の台風で自宅の屋根が壊れ、再建する為、引っ越しをする事となり、今年いっぱい掛かるとの事で、荷物が多くて引っ越しが大変なので、更新速度が遅くなる可能性がありますが、ご了承ください。
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第百二十九話 リューネブルクとクレメンス

帝国暦483年8月5日 午後0時22分〜

■オーディン ノイエ・サンスーシ 謁見の間

「皇帝陛下、御無事でございますか!」
粉塵の中、ランズベルク伯の声が響き渡っていた。

それに気がついたノビリンク大佐達4名はその声に向かってブラスターを乱射し始めた。
粉塵の中に次々にブラスターの閃光が突き刺さっていく。

大声を上げたランズベルク伯の装甲服にブラスターの攻撃が何発も弾け飛ぶ。
「阿呆、こんな時に大声上げるな!」
ランズベルク伯の装甲服の襟首を掴んで攻撃ラインから助け出したキルドルフ大佐が小声で怒った。

その攻撃が偶然にも皇帝陛下やライムバッハー上級大将達への関心を薄くする結果となり、その間にライムバッハー上級大将達は陛下、リヒテンラーデ侯、クラーゼン元帥を直ぐさま確保し穴の方へと自らの体で護って移動しする事に成功した。
「陛下、遅くなりました。此方へ」
「うむ」

オフレッサー大将は勢いよく炭素クリスタル製戦斧を構えながら強襲揚陸艇から飛び出すと、部下達と共に謁見室の中央へと向かい、視界の晴れた中でライムバッハー上級大将達が陛下をお守りして穴の方へ向かうのを確認すると、ルードビッヒ皇太子、クロプシュトック侯、リューネブルクに相対した。

「おのれ、逃げるかフリードリヒ!」
「クロプシュトック、どうするのじゃ。このままでは、予は・・・・」
「フン、来たなミンチメーカ!」

反逆者達は、三者三葉の対応をしてくるが、オフレッサーはそれを一蹴する。
「装甲擲弾兵副総監オフレッサー大将である。既に企み潰えた、神妙に縛につけ!」

「おのれ、この下郎が!」
皇太子がオフレッサーを汚く罵るなか、リューネブルクが喋る出す。
「オフレッサー、ミンチメーカーか、原始人らしく時節の流れに鈍感な様だな、最早この状態で有れば、フリードリヒの威厳は崩れ去っただろう。幾ら鈍感な平民でも宇宙から攻撃を受ければ騒ぎ出すだろう」

「なに、地上攻撃を行うと言うのか。予は聞いておらんぞ。その様な事すれば、予の威厳も傷つくではないか、新帝命令だ、直ぐさま止めさせよ」
ルードビッヒ皇太子がリューネブルクに命令するが、リューネブルクは薄ら笑いするだけである。

「フッ。それは出来ませんな、即在の世界を崩さぬ限り我らの悲願は達成できないですからな」
リューネブルクの言葉にオフレッサーが冷や水を浴びせかける。
「リューネブルクよ残念だったな。叛乱艦隊は今頃帝国軍でも最精鋭の艦隊により撃破させている」
「何だと、10,000隻が6,000隻に負けたというのか」

「テレーゼ皇女殿下の親衛艦隊10,000隻も参加しているのだ」
「テレーゼ、テレーゼだと!奴は死んだはずだ!」
「皇太子殿下、残念でしたな。テレーゼ皇女殿下は御無事で、この戦いの指揮をお取りだ。2度言うが貴様等の企みは潰えたわけだ!」

「テレーゼ!テレーゼ!貴様か!予の行おうとする義挙を邪魔するわ!兄弟と同じ様にあの時処分が成功していれば!おのれーーーーー!」
オフレッサーの言葉に皇太子がテレーゼに対する怨嗟の声を上げる。

「おのれ!!我が悲願があんな小娘に依って失敗するわけがない、リューネブルク!オフレッサーを倒せ!」
「何が悲願ですかな?」
リューネブルク、クロプシュトック侯は小馬鹿にしたように皇太子に対応する。

「父上を亡き者とし、予が新帝になると言う事だ!」
「おっそうでしたな、愚か者の皇太子を担いで謀反を起こさせ、共倒れにする事でしたな」
「ハハハハハ、クロプシュトックよ、そうだったな。見事に馬鹿な皇太子はそれに乗ってくれたわ」

皇帝やオフレッサー達と対峙しながらもクロプシュトック侯やリューネブルクは皇太子を愚弄し始める。
「何だと、貴様達は・・」
ズサッという音と共に皇太子の背中から胸にかけて銃剣の剣先が突き出てくる。

いきなりの事態にリューネブルクとクロプシュトック侯以外の人間が呆然と成った。
「なっなっなにをす・・・・・・・・・・」
皇太子は大量の出血をしながら、驚いた表情でクロプシュトック侯とリューネブルクを見ながらうつぶせに倒れていく。

「フッ、この状態では策潰えたか」
「誠に申し訳ございません」
「ハハハ、クロプシュトック気にするな。復讐は半分は成功したのだからな」

クロプシュトック侯がリューネブルクに丁重な仕草を行うのが更に違和感を作りだす。
「クレメンス殿下、殿下の無念、多少なりともお晴らしになれたでしょうか」

「馬鹿な、クレメンス大公は叛乱軍への亡命中、事故によりお亡くなりになったはずだ。しかも貴公はリューネブルクであろう」
「ハハハ。世の中には便利な仕組みがありましてな」

「ヘルマン・フォン・リューネブルクという人物は実在しないのだよ!」
「馬鹿な、確かにリューネブルク侯爵家にヘルマンという男児が居たはずだ」
「確かにヘルマンは居ましたが、私が処分したのですよ」

「なんと!」
リヒテンラーデ侯も驚きを隠せない。
「アレは帝国暦452年、リヒャルド皇太子が死を賜わる際にリューネブルク家のヘルマンを捉えて、実験したのですよ。そしてクレメンス殿下をヘルマン・フォン・リューネブルクとして、亡命させた」

「年齢が合わないではないか」
ライムバッハー上級大将も疑問を投げかける。

「ハハハ、何故ルドルフ大帝が何故我が先祖アルブレヒト・フォン・クロプシュトック侯爵を内務尚書に任じ、更に血のローラーを行ったか。卿等には判るまい。ルドルフ大帝は不老不死を目指しておいでだった、更にご自身の遺伝子欠陥を知り、驚愕しておられた。その為の人体実験用に数百億反逆者共を使ったのが、血のローラー裏の顔なのだよ!」

「そんな馬鹿な!」
フリードリヒ4世が驚きの声を上げる。

「フリードリヒよ、貴様の先祖の目指したは皇帝陛下による、永遠の銀河系支配であった。それを崩そうと企む貴様は、ルドルフ大帝に対しての不忠者よ。だからこそ、再生技術《クローニング》でクレメンス殿下をヴァルハラより、お呼びしたのだ!ルドルフ大帝以来、社会秩序維持局が進めてきたプランの集大成こそ、此方におわすクレメンス殿下である」

クロプシュトック侯がリューネブルクを指してそう発言した。
「そう言う事だ。私はヘルマン・フォン・リューネブルクではなく。クレメンス・フォン・ゴールデンバウムだ。尤も同盟に亡命中は記憶処理を行いヘルマン・フォン・リューネブルクとして生きてきたがな」

粉塵の中でリューネブルクが不敵な笑みを浮かべている。

「き・き・貴様、予を騙したな・・・」
荒い息の皇太子が口から血を吐きながらリューネブルクとクロプシュトックを睨み付けるが、既に立ち上がる力も残っていない。

「フッ。騙しついでに教えてやろう、グリューネワルト伯爵夫人の懐妊はグレーザーの捏造に過ぎない、良いように踊ってくれたわ、ハハハハハ」

「き・・・・きさ・・・・・・・・グファ」
リューネブルクがルードビッヒ皇太子にノビリンク大佐達が持って来た炭素クリスタル製戦斧を突き立てとどめをした。

「フッ、此でフリードリヒ、貴様の男系の直系は絶えたな、謀反人ルードビッヒの息子エルウィン・ヨーゼフは跡継ぎには成れん。残るは小娘3人のみ、2人は屑貴族の紐付きよ、此で帝国は内乱になり滅びるだろう。俺の継げぬ帝国など消えて無くなればよい。ハハハハハハハ」

ノビリンク大佐達も皇太子が殺害され混乱の最中にあった。
「リューネブルク貴様!皇太子殿下に何をするか!」
いち早く混乱から立ち直ったノビリンク大佐が、リューネブルクを撃とうとするが、それも敵わず瞬時に4人ともリューネブルクに切り伏せられる。

「グアー」
4人を素早く始末したリューネブルクは素早く踵を返すとそのまま謁見の間から逃走したのである。
クロプシュトック以外は呆気に取られる。

「リューネブルク逃げるか!」
オフレッサーの声が響き、追撃しようとした刹那。クロプシュトック侯が叫んだ。
「クレメンス殿下、ご武運を、クレメンス皇帝陛下万歳!帝国万歳」

次の瞬間クロプシュトック侯の持っていた杖が大爆発を起こし謁見の間を炎と爆風が吹き荒れたのである。元々密閉状態に近く、外壁の強化がされていた場所での爆発で有ったがため、爆風が外へ抜けずに入り口へと殺到した結果、4カ所の開口部が大爆風が吹き荒れたのである。そして、天井や調度品の破片が部屋を荒らしまったのである。

その隙にリューネブルクは宮殿の中から姿を消したのである。


帝国暦483年8月5日 午後0時30分

■オーディン ノイエ・サンスーシ 北苑 

艦長ドゥンケル大佐の的確な操艦でラプンツェルは北苑の湖に着水した、若干水深が足らなかったがそれは艦長の腕でカバーしたのである。

「艦長、見事な操艦です。御苦労です」
「この様な事しか殿下のお役に立てずに心苦しゅうございます」
「何の、この操艦惚れ惚れとした」

テレーゼが艦長を賞めた後、ラプンツェル乗り組みの、テレーゼ皇女直衛の装甲擲弾兵100名を引き連れたヴィッツレーベン大佐がイオノクラフトに乗りテレーゼのビデオメールを携えてグリューネワルト伯爵邸へ向かった。

数分後、テレーゼの御旗を掲げたイオノクラフトの姿を見た宮中警備隊は歓声を上げ、近衛兵はぽかーんとする者達が続出したのである。

「私は、テレーゼ皇女殿下筆頭侍従武官ヴィッツレーベン大佐だ。殿下のご命令である、双方直ぐさま武器を置け!」
近衛兵も忠誠心厚いヴィッツレーベン大佐を良く知っていたために、多くの近衛が指示通りに武器を置いていくが、元々叛乱に荷担しているハイドリッヒ大佐はそれを無視して攻撃続行を命令する。

「ヴィッツレーベン大佐も裏切ったのだ!奴の言う事など聞く必要は無い!攻撃だ!攻撃!」
その言葉に再度銃を向けようとする者も居るが、普段と違い焦った様子の見えるハイドリッヒに違和感を覚えた古参近衛兵ほど銃を再度取らないで居る。

「貴様等!銃を取れ、取らんと反逆罪だ!」
「大佐殿、あの忠誠心厚いヴィッツレーベン大佐ですぞ、大佐こそ可笑しいのでは・・」
銃声と共に古参下士官の額に穴が空き脳漿を吹き出しながら倒れた為に騒然と成る近衛兵達。

「いいか!銃を取らぬ奴等はこの俺が処分する!」
ハイドリッヒがブラスターを振り回しながら部下達を威嚇しまくる。
死にたくない兵達が銃をヴィッツレーベン大佐達に向けるが、その時、装甲擲弾兵が立体映像を流し始めた。それはテレーゼ皇女自らの説得映像であった。

『近衛兵に告げる、この度の皇太子殿下命令は、クロプシュトック侯により偽造されたもので有る。皇帝陛下も皇太子殿下もその様な命令は出しては居ない。近衛兵に告げる。直ちにヴィッツレーベン大佐の指揮下に入れ。妾は無事じゃ、敵はクロプシュトックに有り!』

その映像を見た近衛の殆どが、涙を流して殿下の無事を喜んでいたが、1人ハイドリッヒだけが、兵からライフルを引ったくるとヴィッツレーベン大佐を狙撃しようと身構えたが、引き金を引く事は出来なく成った。

近衛下士官の1人が素早くハイドリッヒの肩をライフルで狙撃しハイドリッヒはライフルを落としてかがみ込んだ。そしてその近くにいた士官や兵がハイドリッヒを確保したのである。

「小官は近衛第四中隊付き士官バッハ大尉であります。テレーゼ皇女殿下の命によりヴィッツレーベン大佐に指揮権を委ねる事を誓います」
「判った、全員武器を置いて整列せよ」
「はっ」

此によりグリューネワルト伯爵夫人アンネローゼの危機は過ぎたかに見えたのである。

 
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