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GS美神他、小ネタ集

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アルジャーノン

 
前書き
 当時ユースケサンタマリアさん主演のドラマを見て発作的に書いたものです。原作はダニエルキイス先生が亡くなられた当日、ようやく読みました。
 改行なしでビッシリの「ライ麦畑でつかまえて」は未だに読めません。
カノンSSで再利用しています。 

 
 アシュタロス事件の後、俺は隔離されていた。 
 それから、俺の体や魂だけじゃなくて、頭の中でも何かが起こっていた。 まるで視界を覆っていた霧が晴れて行くように、思考も記憶も次第に明晰になって行く。 
 人間は一度見た物を、必ずどこかに記憶していると言われるが、俺も今それを体験していた。
 子供の頃に見て、頭から排除していたはずの記憶が全て閲覧可能になり、必要ないと忘れたはずの知識が蘇って来る。 
 体の感覚もどんどん鋭敏になって、第六感と呼ばれるスーパーセンスや、退化して人間が失った感覚も、これから進化して得られるであろう感覚をも取得して行った。

 確かにルシオラの肉体部分を失ったのは大きな損失だった。 現在の俺はエンドロフィンの欠乏状態にあり、思考の継続と肉体の制御が困難な状況にあったが、それらの操作も簡単な事へと変わって行く。
 さらに唇の結合によりサンプリングされた彼女の遺伝子データから、肉体の全てを俺の脳の中で再現し、思考活動をシュミレートする事も可能となった。
 即ち現在の状況で彼女がここにいると仮定して。 何を発言するか、俺の質問に対しどう答えるかを計算し、必要であるなら視覚野に映像を展開し、物理的接触や嗅覚、味覚など五感の情報も、脳に対し現実と同様に、無意識に提供する事もできた。
 肉体に与えられる圧力と、加速度Gを再現するのは困難だったが、テレキナシスと呼称される力で再現可能であり、彼女は現実にここに存在するのと同等と言えた。

「ヨコシマ、やっと一つになれたね」
「ああ、やっと… だけどずっと一つだ」
「うれしい」

 愛とは所詮、脳内物質が起こす一種の幻覚である。 よってこの行為を幻と卑下する事はできない。 現実に俺はこの感覚と思考を手に入れ、急速に彼女と同化し、進化しているのだから。
 今の俺には、この愛を分子や酵素の活動として説明する事もできた。 ああ、この満たされた気持ちを数式にして君に送ろう。 ドーパミンと、アドレナリンと、セロトニンと、エンドロフィンの奏でる四重奏を、譜面に書き写し君に捧げよう。

「ありがとう、綺麗な数式だわ、それにこの曲も心臓の鼓動が伝わって来るみたい。 ラブレターやラブソングなんて貰うの初めて」

 俺の中の彼女も喜んでいる。
 人間の脳は使われていない部分、つまり現在のペルソナから切り離された部分と、別の神経のネットワークが存在する。 現時点で余剰な領域を彼女に対して開放しよう。
 こうして俺は、横島と呼ばれた表面的なパーソナリティを維持しながら、ルシオラと呼ばれた魔族の少女に対して、脳の中で自由に活動する権利を与えた。
 現在の俺は管理者としてこの体を維持し、様々な調査から逃れるため、横島忠夫のマスクを被り続けなければならない。 そして監視下にある間は、特異な脳波や能力、強力な身体能力を発揮する事は許されない。
 すでに神か魔の領域に踏み込んでいる俺の思考だが、現状でこの知識を手に入れるのは不可能なはずである。
 ラプラスの鬼と呼ばれる、全ての物理現象を計算して予測する仮想の怪物があるが、現在の処理能力はそこまで到達していない。
 人類の学問の歴史をトレースして、自ら解を求め証明して行く事も出来たが、この短時間ではヒトゲノムや、ましてや魔族であるルシオラのゲノムや酵素の活動まで探求できるはずがない。
 そう、俺は今、大いなる宇宙の意識、アカシックレコードと呼ばれる宇宙の記憶に接続されている。 すでに時間も空間も意味を成さない。 俺は宇宙でもあり、宇宙が俺なのだから。
 ルシオラ個人の記憶データが消失したのも損害と思われていたが、現時点ではそれすら閲覧可能となって補完され、俺の中のルシオラは完全になった。 やがて、現状を悟られる事無く開放された俺は、美神令子事務所に戻った。

「横島クン、大変だったわね…」
「私にできる事があったら、何でも言って下さいね……」

 既に横島として振舞い、会話を交わす程度の活動は、俺とルシオラの思考を阻害するような負荷ではなくなっていた。

「じゃあ、その体で慰めて下さーーいっ!」
「きゃああっ、こんな所でだめですー」
「こいつっ、全然こたえてないわねっ」
「チチ、シリ、フトモモー!」

 歴史には、すでに俺がそうするように記入されている。 ここで俺が演じるべきは、道化役なのである。 
 しかし現在の肉体と、ブドウ糖の消費量が増えた脳を維持し、ある程度快適な生活をするには、今の時給では障害を発生する。 ラーメンなる炭水化物だけでは、体は維持できないのだ。 緊急に上質なタンパク質とブドウ糖を入手する手段を講じなければならない。

「隊長~~ このままじゃ食べて行けないんです~~ 年金とか恩給って無いんですか~~?」
「仕方ないわね、私の所へいらっしゃい」
「何ヘッドハンティングしてるのっ? ママッ」
「先生っ!」
「横島さん… ここにいてくれますよね」
「嫌ならちゃんと給料を渡す事ね、彼は今でも私達の監視対象なんだから」

 思わせぶりに笑っている隊長。 まるで何かを知っているかのような態度だが、その程度の思考は、すでに児戯に等しい。 彼女の行動も記憶も全て閲覧可能で、分岐予測も簡単なのだから。
 ではしばし、この世界の探索を楽しもう。 この者達がいなくなれば、ドクターカオスのようにパートナーを製作して、外部に存在させておくのも良いだろう。
 様々な意味でバックアップは必要である。 俺自身を複数存在させて、この者達と結合し、自分の複製や亜種を製造するのもまた楽しからずや。


 昨日のドラマを見たので、また電波です。 原作は読んでないので全く違いますが、ご容赦下さい。
 
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