俺のペットはアホガール
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その十七「夏だ! 海だ! 水着だ!」
前書き
『アホの子達が一か所に集まると…』最藤 終(さいとう しゅう)side
ツクツクボウシ。ツクツクボウシ。と、夏の蝉の声が五月蠅い、8月某日。夏休みも後半戦と言ったところかっ。
今日は夏休み中ぎちぎちに隙間なく組まれた夏期講習も休み。久々のなにも予定がない本当の休日。
ならする事なんて決まっている。
窓を閉め切り、冷房をガンガンにかけてキンキンに冷えたアイスコーヒーを片手に
「………」
表紙に『超難問! これが解けた奴は天才か!?」と書かれた数学の問題集をパラパラとめくって中を見てみると、確かにこれは難問ばかりだ。まずこれは解ける問題なのかっ!?
と、つっこみたくなるものもあるが、それはそれで解いたときの達成感がすごいもの。
シャーペンを握りしめいざっ勝負だ、問題――!
ピンポ~ン。と、来客が来たことを告げるチャイム音が鳴っている。
本当かっ。これから大事だってのに! 今からチャレンジしようと思っていたのに何故水を差す、宅配の人!
まぁいいだろう。お袋か、二人の妹のどちらかが出てくれるだろう…と、また問題集に視線を移し取りかかろうとするのだが
ピポピポピポ~ン!! ……人の家のチャイムで遊ぶな!!
宅配のおっちゃんかなにかと思っていたがこのウザい鳴らし仕方は違う。たぶん、いや絶対あのアホ共だ。無視したい。無視して自分の部屋に閉じこもり、問題集と向き合っていたい…のだが、ピポピポピポ~ン!!
一向に鳴りやまない、ピンポ~ン。
「うるせーアホ!! 近所迷惑を考えろ!」
根負けして開けてしまった、ドアを。
開けたドアの先に居るのは……予想通りとゆうか……当然のこと、とゆうか…だな
「あっーーくんっ、海に行こう♪」
「行くしー♪」
「フッ。やあ、最籐君」
夏に暑さにやられたアホが三人いたので
「………」
無言でドアを閉めて鍵&チェーンでロックし内側からしか絶対に開けられないようにしておく。
「「「えええーーなんでー!!?」」」
ドアの向こう側でキーキーなにかが叫んでいる気にする。
動物園から猿が逃げたしたんだなー。飼育員のおっさん達大変だな~と自分に言い聞かせ、帰ろう冷房天国へ。強敵の待つ自室へ。
「もう♪ あっくんの照れ屋さんっ♪」
「ふぁ~生き返るしぃ~」
「ちょ、ちょっと……千代紙君! 小野君! た、助け…」
自室には勉強机の他に、ゆっくりするときなどに使う小さい丸机、ようはちゃぶ台が部屋の中央に置かれている。
それを囲むように、世間一般からは幼馴染みと呼ばれる害虫共が勝手に俺の部屋でくつろいでやがる。
もはや自分の部屋のようにくつろいでいるアホ子こと、ちよ子と小野。
そしてまだ侵入途中なんだろうな。隣にあるアホ子の家と向かい合うようにある、ベランダにしがみついて、落ちそうになっているのを必死に耐えている、運動音痴の水仙寺。
「で、何しに来たんだ…よ?」
こいつらがエデンに侵入してきたことはこの際いい。とゆうより一々突っ込んでいたら俺の身体がもたん。
過労死するわっ!
「書店街のくじで~当たっちゃったんだ~、1泊2日の旅行けーん!!」
「「イエーイ」」
とハイタッチする。アホ子と小野。
ああ……そういえばお袋が今商店街でくじをやっているとかなんとか言ってたような、なかったようなー。
まさかこのアホに当たるとは、商店街の親父さん達も思ってなかっただろうな……ご愁傷様です。
「待ちなさい!」
「誰だッ!?」
アホ子、それ俺の台詞だろ、と一瞬思ったがよくよく考えればこの状況はおかしい。いや。アホ共がおかしいのは生まれつきだが、ここは俺の部屋であり地上から2階の位置に存在する。
アホ子達のようにベランダ伝いに侵入してきたのならわかる。本当は分かりたくないけどな! だがしかし今、ベランダは水仙寺が占領している…ってまだ下りられてなかったのか…。
それに声が聞こえて来たのは背後。本来の出入り口であるドアからだ。誰が、何処から、入って来たんだっ! 面倒事は勘弁してくれよ!
「高校生の男女が泊まりで海だなんてそんな風紀の乱れそうな事。
生徒会長である、私が同行しないかぎり許るさないわ!!」
ふんっと鼻息荒く、腕を組み仁王立ちしている高浜。…その後ろには
「どうも~」
「お前か」
隠れているつもりか? ひょこり顔を覗かせ手を振る飯野の姿が。
ベランダ以外での侵入口だと、玄関しか思いつかない。だが玄関はアホ対策で厳重に厳重をかけてしっかり施錠したはず。中からは開けられないはずなのだが……と思考を巡らす俺に気が付いた飯野は人を小バカにしたような笑みで
「ピッキングで~ちょちょいと~ね」
鍵を開けている作業かそれは、ジェスチャーで何かやっている飯野。なんでこいつは捕まらないんだ……。
日本の警察、頑張ってくれ。じゃないと、俺の方が先に犯罪を犯してしまいそうだ。
「15時のおやつに、ポテトフライはどうですかっ、しーさん? おいしいですよ♪」
「ありがとう、美希。僕はベビースターを持ってきたよ」
「………」
ちゃぶ台付近でアホ達に紛れ、菓子交換しながらお茶を楽しむ女が二人。…うん、いつからいたお前ら?
招き入れた覚えも、お茶をだした覚えもないんだが……でも飲むのに使っているグラスは家だ。菓子を入れている皿も家のだ。
「…あっそっか」
女の二人のうち、一人は緑屋だと(数秒かかったが)すぐに分かった。二人が話している内容から察するに、緑屋の隣で「しーさん、しーさん」と呼んで慕っているちんちくりんは、後輩の朱雀 美希だろう。
海苔巻きパーティーとかくだらないパーティーのときに「美希は来ないのか…」とかなんとか言ってて、話を聞いたような気がするような、しないような……そんなパーティーなんてそもそもあったか?
「…フフフ」
「―ッ!?」
背筋が凍り付くような寒気のする視線を感じ、振り返るとカーテンの後ろに隠れて熱い視線を送ってくる女が一人。
と、その女に踏みつけられ、床に倒れている水仙寺。ああ、無事下りられたのか。
良かったな、地面にキスなんてことにならなくて。
「わたしもいい?」
「彗ちゃんだー、イイヨー。一緒に行こう! みんなで行こう!!」
彗…? ああ~、隣のクラスにいる翡翠彗か………ってなんでよく知らない奴まで俺の部屋に集合してんだっ!?
「何しに来たんだっお前らーーー!!」
「「「「え?」」」
今更それ聞く? 的な顔で見られました。しかも全員に。アホの頂点共にっ。
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