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美女は何処にでも

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第八章

「ものも。何か」
「市場の品物まで活気に満ちている様に思えますね」
「はい」
 こう答えるシュターゼンだった。
「とても」
「そうですね。こうしたものを見るのもです」
「旅ですね」
「それで今日はどなたとお話されましたか?」
「はい、少しですけれど」
 だが話したとだ。シュターゼンは隣にいるシュトックハウゼンに話した。
「あの秘書の方と」
「ああ、あのミュンヘンの方ですね」
「いい方ですね。淑女です」
「名前にフォンとあるだけではないですね」
「そうですね。それもありますから」
 貴族の血をひく証である。このフォンという称号はだ。下級貴族であることも多いがだ。
 だがそれ以上にだとだ。シュターゼンはさらに話す。
「ですがそれ以上に人間の資質として」
「淑女なのですね、あの方は」
「はい、そうです」
 こう言うのだった。
「人間がそうであると。本当に」
「人間は心です」
「生まれではないですね」
「そして外見ともです」
 大事なのは内面だというのだ。シュトックハウゼンはシュターゼンにこのことも話した。
「内面を見て。決めたいですね」
「全くですね。そう思う様になりました」 
 以前の彼とは違うということもだ。シュターゼンは述べた。
「本当に」
「ですか。しかしそうしたお話は後にして」
「はい、今はですね」
「今はこうしてこの市場を見ましょう」
 これが今のシュトックハウゼンの言葉だった。
「そうしましょう」
「それでは」
「何を買われますか?」
 温和な顔でだ。シュトックハウゼンは市場の楽しみも話した。
「それでは」
「そうですね。両親の土産物を買いますか」
「では。一緒に探しますか」
「シュトックハウゼンさんも何か買われますか」
「妻に。いつも買う様にしています」
「では。二人で探しますか」
「そうしましょう」 
 こう話してだ。そのうえでだった。
 二人でその買うものを探すのだった。シュターゼンは市場も楽しみ旅の終盤を楽しんだ。
 旅は彼にとってはいいこと尽くめで終わった。しかし旅は終わる時が来る。それが今だった。
 帰りのドイツに向かう飛行機の中でだ。シュターゼンはこの時も隣にいるシュトックハウゼンに尋ねられた。その尋ねられたことはというと。
「どうだったでしょうか。この旅は」
「よかったですね。いい思い出になります」
「そうですか。それは何よりです」
「気分転換、いえ新生になりました」
 席に座り満足した顔でだ。シュターゼンは言った。
「まさに」
「そうですか。新生ですか」
「心が洗われました、トルコで。それに」
「それにとは?」
「多くの女の人とお話しまして」
「それで、ですか」
「そのことからもわかったことがあります」
 新生と言えるだけのだ。それがわかったというのだ。 
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