美女は何処にでも
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第四章
「楽しみましょう。そして見つけましょう」
「新しい恋をですか」
「そうした意味でも旅行はいいものですよ」
顔を綻ばさせてだ。シュトックハウゼンはシュターゼンに話す。
「心の傷を癒して新しい恋を見つける為にも」
「傷を癒すことは考えてました」
それはだとだ。シュターゼンも答える。
「それと気分転換は」
「では新しい恋は」
「考えてませんでした。それに」
「それにですか」
「そうしたことができればいいですね」
少し寂しい笑顔になってだ。シュターゼンは言った。何はともあれ彼はこのトルコでの旅行ツアーにいた。そうしてトルコのあちこちを巡っていた。
カッパドキア、その白蟻の穴を思わせる見事な遺跡にも来た。その外や中を巡りだ。
そのうえでだ。彼はその岩山をくり抜いて造ったアパートを思わせる中を見回ってだ。こう共にいるシュトックハウゼンに話した。
「噂には聞いてましたけれど」
「どうですか?」
「いや、凄い場所ですね」
その中を見回しての言葉だった。
「今でも人が住めそうですね」
「そうですね。実際に結構前まで住んでいたそうですし」
「この遺跡は確かヒッタイト人が築いたものでしたっけ」
古代メソポタミアに覇を唱えた種族だ。鉄器を使ったことで有名だ。
「そうでしたね」
「そうした説がありましたね」
「はい、本で読んだことがあります」
そこから知った知識だというのだ。
「そうしたものだと」
「本当かどうかはわかりませんが」
「ヒッタイト人は海の民に滅ぼされていますが」
「彼等の正体は不明です」
今以てだ。だが当時メソポタミアの覇権を握っていたヒッタイト人を滅ぼしエジプトを脅かしその力を衰えさせたことは事実である。それだけの力を持っていたのだ。
「よくわかっていません」
「本当に何者だったのでしょうね」
「そのことが気になりますね。ただ」
「ただ?」
「この遺跡は本当に凄いです」
その石の壁や開けられている窓を見てだ。また言うシュターゼンだった。
「人が住んでいた気配が感じられます」
「ですね。謎の遺跡ではありますが」
「それでも。凄いものですね」
こう二人で話しながら遺跡の中を回っていた。そしてその中でだ。
シュターゼンはふと彼と同じツアーの客達の中にだ。一人の女性を見つけた。それは。
見事な金髪をブローさせたうえで伸ばし青い目の睫毛は長い。眉は細く奇麗なカーブを描いている。
鼻は高く唇は微笑んでいてやや大きい。唇自体は細い。
顔は薔薇色で見事な長身を黒のズボンと白のブラウスで包んでいる。胸も目立つ。
その彼女を見てだ。シュターゼンは言った。
「若い女の人も参加しているんですね」
「ええ、そうですよ」
「そうなんですか。今気付きました」
これまでは失恋のことばかり考えていた。しかしだ。
このカッパドキアに入って気分転換ができてだ。それで彼女を見られたのだ。
その彼女を見てだ。シュターゼンはシュトックハウゼンに尋ねた。
「あの人の名前は」
「あっ、あの人のですね」
「何と仰るのですか?」
「フレデリカです」
まずは名前からだ。彼はシュターゼンに話した。
「フレデリカ=フォン=ローテンベルクです」
「ローテンベルクさんですか」
「バイエルンで秘書をされているそうです」
「秘書、ですか」
「そうです。ある企業の社長の」
「じゃあ頭もいいんですね」
「何でもチューリンゲン大学を優秀な成績で卒業されたとか」
「チューリンゲン大学ですか」
この大学はドイツでも有名である。歴史があるだけではない。かのフランケンシュタイン博士が在籍していた大学だからだ。そうした意味でも有名なのだ。
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