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オズのジュリア=ジャム

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第十二幕その十

「どうしてあの人達は見なかったの?」
「私達は見たのに」
「あの人達も夢は見る筈なのに」
「どうしてなのかな」
「あの人達は見ていないのかな」
「それは多分ね」
 ジュリアがいぶかしむ五人にお話しました。
「いつもだからよ」
「いつも?」
「いつもっていいますと」
「どういうことですか?」
「ええ、あの人達はいつも見ているの」
 こう五人に言うのでした。
「楽しい夢をね」
「そうなんですか」
「いつも楽しい夢を見てですか」
「いつもそうですから」
「楽しいと感じていない」
「そうなんですね」
「いつもなら思わないでしょ」
 楽しいこともというのです。
「夢も」
「そうですね、いつも楽しいのが普通なら」
「もうそれが全然普通になってですね」
「当たり前になっていて」
「楽しいと思わなくなるんですね」
「そう、あの人達は毎日真珠を見ているのよ」
 女王様が持っているあの真珠をというのです。
「だったらね」
「毎日楽しい夢を見て」
「そうしてですね」
「それが普通になっていて」
「もう特に思うことはない」
「普通だって思って」
「そういうことなのよ、けれど魚人の王様や私達はね」
 毎日見ている人魚の人達以外はといいますと。
「毎日見ていないから普通じゃなくて」
「それで、ですね」
「楽しいと感じる」
「そういうことですね」
「いつもじゃないから」
「そう、あの真珠を観たら最高に楽しい夢を見られるけれど」
 それでもというのです。
「その最高がいつもだと最高に思わないのよ」
「オズの国でもですか」
「それが最高だとですね」
「最高に思わないんですね」
「ええ、オズの国は楽しいことばかりだけれど」
 ジュリアはオズの国のその特質についてもお話しました。
「楽しいにもレベルがあるでしょ」
「はい、凄く楽しいこともあればです」
「最高に楽しいことも普通に楽しいこともあります」
「それにその人それぞれの好みもあって」
「色々違いますね」
「あの真珠はその人にとって最高に楽しい夢を見せてくれるから」
 見ればその夜にです。
「だからこれ以上はない最高だから」
「それが普通になって」
「どうも思わなくなっているんですね」
「人魚の人達は」
「そうだったのよ、夢もね」
 それもというのです。
「その人にとっていつも最高だとそれは最高に楽しくはならないの」
「普通になってしまうんですね」
「ううん、そういうことですか」
「最高の楽しさも毎日なら」
「普通ですか」
「そういうことね、けれど毎日が最高でそれが普通になっているなら」
 夢もというのです。
「それはそれでいいことよね」
「いつもそうならですね」
「素晴らしい夢を見られることが普通なら」
「それならですね」
「ええ、素晴らしいことが普通ならね」
 それならというのです。
「これ以上はないまでに幸せなことでしょ」
「ですよね、確かに」
「そうなりますね」
「それではね」
 ここまでお話してでした、ジュリアは五人ににこりとして言いました。
「貴方達はこれからどうするの?」
「これから?」
「これからっていいますと」
「ええ、貴方達の世界に帰るまでね」
 それまでというのです。 
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