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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百二十一話 ラインハルトは何を思うか


視点が今回はころころ変わります。
ラインハルトの視線とかです。
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第百二十一話 ラインハルトは何を思うか

帝国暦483年8月5日 午前10時〜

■オーディン リッテンハイム侯爵荘園競馬場 ラインハルト・フォン・シェーンヴァルト

いったい何が起きたのだ?

決闘相手の男がいきなり作法を無視して8数えた状態で銃を撃ったのだ。リッテンハイムやヘルクスハイマーなどの貴族の奴が汚い手を使ったと思い、俺は咄嗟にキルヒアイスからアドバイスを受けた様に、体を翻し馬場に倒れ込んだ後、相手に向かい銃を撃とうとしたが、相手の決闘者は事も有ろうに、観客席の大男に向かい銃撃していたのだ。

暫く俺は、自分の身を守る事だけで精一杯でキルヒアイスが『ラインハルト様』と何時ものように駆けつけてくれたのだ。その間に大男の横に居る、ヴェストパーレ男爵夫人やシャフハウゼン子爵夫妻が無事なのを目視できホッとした。三人が怪我でもしたら、姉上が悲しむから。

大男は、撃たれながら、まるで壁のように立ち尽くしていた。刹那、大男の隣にいた少女が馬場に侵入してきた。黒い決闘者は懐からボーガンを取り出してその少女を撃ったのだ!俺は咄嗟に銃を撃とうか迷ったが、引き金を引けなかった。

姉上に迷惑がかかるのでは無いかと言う事が脳裏に浮かんだから。その一瞬でその少女は手に持った扇で矢を叩き落としたのだ!飛んでいる矢を叩き落とすなど、俺でも難しいのに、年端もいかぬ少女がいとも簡単にそれを行った!

その後は、決闘者と少女との剣舞のような戦いは終始少女の優勢で終わり、最後には延髄蹴りで落とすとは、いったいどんな人間なのだ!

尤も貴族共も、何が起こったのか判らないのか間抜けな顔をしているのが可笑しかったが。

少女は、大男の方からの何か言われたのか、頷きながら決闘者を縛っていく。その後大男を筆頭に誰かを守るが如く人垣が、大男と共に馬場へと動いてきて、俺の直ぐ先に来た。しかしその時点で俺とキルヒアイスは、SPらしき連中からヴェストパーレ男爵夫人のいる場所まで移動するように命じられた。

何故俺が、命令されねば成らないんだと思ったが、俺もキルヒアイスも姉上のために此処で事を起こす事は出来ないと、キルヒアイスに言われて、渋々ながら男爵夫人の元へと向かったのだ。それに、俺はともかく、キルヒアイスが小型ブラスターを隠し持っていた事が危険な行為であった事を知るのはそれから後の事であった。

男爵夫人と子爵夫妻が俺達を心配してくれていたが、何故あの大男が撃たれたのかを聞こうとしたが、3人とも蒼い顔をして言葉が殆ど無い状態なのだ、確かに自分の隣に居た男が撃たれれば、驚くだろうが、男爵夫人ならば、平気で有ろうと思ったのだが、やはり女性であったのかと思ったが、その直後の大男の発言が、俺とキルヒアイス、共に驚愕を覚えたのだった。

何故なら馬場に降りた大男が鬘を脱ぎすて『者共静まれ!儂が装甲擲弾兵副総監オフレッサー大将だ!』と叫んだのだ。あの時キルヒアイスと戦ったミンチメーカーと悪名高いオフレッサーだったとは、そして奴を暗殺しようとしたのかと思ったのだが、その後、SPの輪から出てきた少女に違和感を覚えた。

その少女がウィックを脱ぎ捨て、オフレッサーに負けないような声で叫んだのだ『妾はテレーゼ・フォン・ゴールデンバウムじゃ皆のモノ静まれ!』と、俺は驚いた、あの小娘だった。俺が憎むべき皇帝の娘の1人であり、チシャ地獄に落とし入れた奴だ!

『ヘルクスハイマー!リッテンハイム!妾を害しようとは見上げた根性じゃ!』なるほど、リッテンハイムは自分の娘を皇位に就けたがっているのか、それで暗殺を、そうなると俺は出汁に使われたのか!怒りが沸き起こってくる。貴族の輩は腐っている!俺がこんな奴等を早く始末してやるんだ!そして姉上を取り戻すのだ!

リッテンハイムとヘルクスハイマーが拘束され、ノイエ・サンスーシに連行されるらしい、此であの2人もお仕舞いだな。俺は大貴族の没落に腹から大笑いしたい気分だった。所が隣ではキルヒアイスが、事態の推移を見ながら、何か考えて居るらしい。男爵夫人や子爵家夫妻も益々蒼い顔に成っていく。いったいどうして其処まで蒼くなるんだ。リッテンハイムやヘルクスハイマーが主犯で有れば、奴等が滅んで清々するではないか?

「ラインハルト様、此は非常に不味い状態です」
「どうしてだ?キルヒアイス、俺達は単なる決闘を受けた側で、其処まで不味い状態じゃ無いと思うが。相変わらずキルイアイスは苦労性だな」

俺の言葉にニコリともせずにキルヒアイスが話を返してくる。
「とんでもございません。端から見たら、皇女殿下を暗殺するために、リッテンハイムとヘルクスハイマーが策謀を働かしたように見えますが、貴族からしたら、態々ラインハルト様が決闘者として出る事で、皇女殿下をおびき出したと捉えかねません」

「俺がか!」
「シェーンヴァルト男爵は姉であるグリューネワルト伯爵夫人に頼まれ邪魔な皇女暗殺に手を貸したと・・・・」
「キルヒアイス!姉上がそんな事をするわけがないだろう!」

キルヒアイスの言動に俺は怒鳴り声を上げてしまった。
「ジークは、一般の貴族の考えを言っただけよ。ジークの辛そうな顔を見なさい!」
男爵夫人が俺を睨みながら諭してくれる。そうだキルヒアイスは、姉上の悪口など言わない。

「ライハルト様、お怒りは尤もですが・・・・・」
「キルヒアイス済まない」
「2人とも、殿下の御前よ大人しくしていなさい」

男爵夫人はあの娘の正体を知っていた。それに男爵夫人の母親の学校にあの娘は通っていたはずだ、そうなると、男爵夫人は姉上と親しい振りをしているだけではないのか?あの娘と繋がって姉上を監視しているのでは無いのか?沸々と疑惑が沸き上がる。此から男爵夫人との付き合いを気を付けねば成らない、下手に簒奪の意志でも示したら、皇帝に筒抜けになるかも知れない。

「貴方たちの事は、殿下にお頼みして、何の罪もないようにしますわ」
空元気なのか、蒼い顔の男爵夫人が俺達が無言なのを心配してか、話してくれるが、一度出た疑惑は消す事が出来ない。キルヒアイスも同じ考えなのだろうか?

こうなると早く姉上に会って、事の次第を話さねばならない、無性に姉上に会いたくなった。



帝国暦483年8月5日 午前10時15分

■オーディン 憲兵隊総監部 ウルリッヒ・ケスラー

テレーゼ様の決闘観覧を許可した事に一抹の不安を感じながら、全ての部隊の展開を終え、SPよりのライブ中継を見ていたとき、ヘルクスハイマー伯爵の黒い決闘者がテレーゼ様に向かい銃を放ったとき、私は心臓が止まりそうになった。直ぐさまオフレッサー大将が楯になってくれたため、テレーゼ様にお怪我はないようであったが、早急にSPの指示と宮殿へのご連絡を行ったのであるが、宮殿に連絡が取れなくなったのである。

宮中警備隊からは、近衛が完全武装で宮殿及寵姫の方々の館へ進軍しているとの報告が入った。そう言えば今日、皇帝陛下は皇太子殿下がクロプシュトック侯爵の釈免を求める日だ、クロプシュトック侯は亡きクレメンツ大公の支持者、よもや彼の者がクーデターを引き起こしたのか、早急に皇帝陛下と皇太子殿下の安全を確保しなければ成らない。

そうしている間に、テレーゼ様より連絡が有り、テレーゼ様のホットラインでも皇帝陛下とご連絡が出来ないと判った。テレーゼ様から、上空にいるミッターマイヤー、ビッテンフェルト両准将に上空警戒を確りやる事と、艦艇一隻をリッテンハイム侯荘園に降下させよとご命令を頂いた。

焦るな、ウルリッヒ、焦っても何も生まれない、テレーゼ様は無事。近衛に対しては宮中警備隊で対応がある程度まで可能だ、皇帝陛下、ご無事で・・・・。

ケスラーは、此のあと八面六臂の活躍をしていくのである。


帝国暦483年8月5日 午前10時20分

■オーディン上空 ウォルフ・デア・シュトルム分艦隊旗艦イェータランド ウォルフガング・ミッターマイヤー

「なんですと、殿下が」

ケスラー少将からの連絡に俺は一瞬耳を疑った、テレーゼ様が暗殺されかかった。ヘルクスハイマー側の決闘代理人にいきなり撃たれたらしい、幸い弾はお守りしていたオフレッサー閣下が身を挺して防いだそうだ良かった。テレーゼ様の万が一に事があったら、俺もエヴァも子供達も悲しむだけじゃ済まない、俺が撃った奴等を艦砲で消し去ってやる!

しかも、ヘルクスハイマー側と戦うシャフハウゼン子爵家の代理人が、俺とエヴァの不倶戴天の敵である、シェーンヴァルト男爵だったそうだ、つくづく、あの男は不幸を持ってくる許せない奴だ!

いかんいかん、思考がビッテンフェルトのように成ってしまう。更に心配なのは、皇帝陛下とご連絡が取れなくなり、近衛が叛乱を起こした可能性があるのだ。その為にテレーゼ様御自ら、宮城へ乗り込むために戦艦一隻をリッテンハイの荘園へ降下せよとの事だ、本来なら俺が行きたいところだが、ビッテンフェルトのやな予感を考えると、俺が降りるわけにも行かない。

ビッテンフェルトなら自ら降りると言うからこそ、俺に最初に話を振ってきたわけだな。

「ドロイゼン、卿が一隻率いて殿下をお守りせよ」
「御意」

ドロイゼンなら安心できる。さてビッテンフェルトにどう説明したら良いのだろうか。宥めるのに骨が折れるな。テレーゼ様、ご無事で何よりでございました。


帝国暦483年8月5日 午前10時25分

■オーディン上空 シュワルツ・ランツェンレイター分艦隊旗艦シュワルツ・ティーゲル フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト

ミッターマイヤーの所から、戦艦が一隻オーディンへ降下していった、なにやってるんだと思っていたが、ミッターマイヤーからの連絡が有った。

『ビッテンフェルト、落ち着いて聞いてくれ』
いやに神妙な顔だな。
「どうした?」

『殿下が、テレーゼ様が暗殺未遂に遭われた』
何だと!テレーゼ様が暗殺だと!”!!!
「テレーゼ様はご無事なのか!”!」

遮音力場がかかっていない、オイゲン達には聞こえたようで、慌て始めるのが判る。
『ご無事だ、オフレッサー閣下が身を挺して防いだそうだ』
良かったぜ、テレーゼ様は幸運をお持ちのようだ。オイゲン達も安堵したのか顔に喜色が見える。

「そうか、で犯人は?」
俺も少しは冷静さを見せないとな。
『ヘルクスハイマー伯の決闘代理人だそうだ』

「何だと!”!じゃあヘルクスハイマーがテレーゼ様を・・・・・・・・・許せん!”!許さんぞ!”!オイゲン!”!レーザー水爆をヘルクスハイマー伯爵邸へぶち込むめ!”!」
「提督、お止めください。オーディンにレーザー水爆など撃ったら、殿下にまで大変な事になります」

冷静なオイゲンが居ないと、俺は駄目だな、けどなヘルクスハイマーは俺が太陽に叩き込んでやる!!
『ビッテンフェルト、落ち着け。ヘルクスハイマーもリッテンハイムもテレーゼ様が収監した』
「そうか、それならば安心だ。しかし流石にテレーゼ様。我が主君だ」

『それだけでは無く、皇帝陛下とご連絡が取れず、更に近衛が勝手に動いてるらしい』
テレーゼ様暗殺未遂は、壮大なクーデターと言う訳か。
「壮大なクーデターかもしれないな」

ミッターマイヤーやオイゲンが驚いた顔をしているが、俺とてこれぐらいは判るさ。
『そうかも知れん。其処でテレーゼ様をお迎えにドロイゼンを向かわした』
なるほどな、良い判断だが、俺が行きたかったぞ。

「そうか、奴なら安心だろうな。本当は俺が行きたかったが」
おいおい、俺が冷静だと変か?いや冷静じゃなく怒りで心が平均になっているだけかも知れないがな。
『艦隊は万が一に備えて上空警戒を続けろとの事だ』

虫の知らせか、今でもムズムズしていやがる。
「判った。ミッターマイヤー、俺の感が未だにムズムズしているから、危険かも知れないぞ」
『判った、臨戦態勢を取らせよう』

「オイゲン、艦隊全艦に連絡。直ちに臨戦態勢を取れ!」
「はっ、直ちに」

テレーゼ様、ご無事で何よりです。此のビッテンフェルト、テレーゼ様の御恩を必ずやお返ししますぞ。さあ来るなら来やがれ、ヘルクスハイマーだろうが、リッテンハイムだろうが、俺が蹴散らしてやる!

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オフレッサーとのラインハルトが幼年学校で戦っていたので此処での台詞を修正しました。

オフレッサーとズザンナはテレーゼと同じく変装していたので最初ラインハルトは気がつかなかったようです。
 
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