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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  ランスターの弾丸


今までのあらすじ

セルトマンの実態が、徐々に明らかになっていく。

その起源は「流転と循環」
大聖杯の接続は「アーカイヴ」に

しかし、彼曰く「それが自分の本当の力ではない」


そして目の前で召喚される新たなるサーヴァント。

三体の仮面ライダー。
その相手をするのは、各自の見知ったライダーたち。


一方、「EARTH」(仮)へと一旦帰還した蒔風達は――――――


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「ゼェッ・・・・ゼェッ・・・・ゼェッ・・・・」

「舜!!一刀さん、観鈴さん!!大丈夫ですか!?」


現れたライダーをファイズ、W、キバの三人に任せ、全力疾走でここまで下がってきた蒔風たちに、アリスが駆け寄って身を案じる。

それに対して大丈夫だと言って、蒔風が声を荒げて叫んだ。


「ダッシュして息切れしてるだけだ・・・・それよりアリス、緊急招集だ!!ショウはどこだ!?」

「ショウさんは途中で見極の完全に足止めを食らっていたようですが、今はこちらに向かっています。すぐに来るかと」

「翼刀さんは予定通り潜入。クラウドさんと理樹さんはすでにこちらに着いています」

「おう、朱里、雛里。わるいな、フル稼働だろ?」

「そう言ってる場合でも」「な、ないでしゅから。あ、噛んだ・・・・」

たはは、とこんな状況でもまだ笑うだけの元気を絞りだし、巨大モニターを半ば乱暴に引っ張り出して振り返る。
ここ、一階の食堂兼会議場には、待ってましたとばかりに待機していた「EARTH」メンバーがそろっていた。


「っしゃ、やっと出番だ!!お前ら、気合入れろよ!!」

『応!!!』

「敵サーヴァント表示!!」


「はい!!現在召喚されているサーヴァントは計六体!!」

「さっき召喚されたライダーが三人、セイバー、ライダー、アーチャーが確認されています」

「うち、アーチャーは市街地にてティアナ・ランスターとの交戦の報告あり!!」

「敷地内でフェイトさんとアリシアさんたちが、セイバーと戦ってるって!!」

「ランサーはシグナムと交戦中。上空500メートルの地点です!!」


「六体ってことはもう一体いるのか?」

「考えられるのなら・・・・おそらく翼刀の所だ」

「「EARTH」ビル内か!!」


報告と推測が飛び交い、七騎目の欄にはクラス名と真名が「?」と表示される。
全員が座っているなかで、皆が思っているのは「もしも、自分の知っている人物が召喚されたら・・・・」という疑念だ。

戦うことは、いまさら否定も拒否もしない。
だが、その者を利用されてしまうということが、あってほしくないのが本音。


「恐らく、これからもみんなが知っている人物が召喚されるかもしれない。もしかしたら、今ここにいるメンバーも召喚される可能性が高い」

椅子に座ってしまう、そのまま頭を垂れた蒔風に代わって、一刀が叫ぶ。
大人数相手の演説ならば、やはり一刀が一番うまい。


「だけど、セルトマンに利用されていいはずがない!!俺たちは、彼らを解放するために戦うんだ!!」

『オォオ!!』

一同に、一気に気合が入っていく。
相手がほぼ無限に召喚してくると言うのならば、こちらはローテーションを組んで戦う必要がある。

翼人が出て行って戦うこともできるが、中にはセフィロスやゼストのような、翼人とすら渡り合う実力者もいる。
こちらにも翼人クラスの実力を持つ者はいるが、セルトマンの持ち駒と比べると心許ないのが現実だ。


それを踏まえ、各自が準備に入っていくために現状確認の報告のみで、即座に解散する。
そのざわめきの中、観鈴がポツリと案を一刀に漏らした。


「ねえ、このまま全員で攻めちゃう?」

「え?あ・・・・・う~ん・・・確かに、相手の戦力は結局七騎止まり。オフィナとフォンがいるからと言っても、抑えられないレベルじゃない・・・」

「だったらさ、それで残りのメンバーでセルトマンを?」


そんなことを話しながら、チラリと蒔風の方を見る。
観鈴に何とか回復してもらったとはいえ、元が大怪我だ。まだ憔悴している体力であることにかわりはない。


まるで常人がマラソンでも終えたかのような汗と荒い息。そしてまだ鈍痛が残っているのか苦い顔をしながら、蒔風が首を振る。


「無理だ・・・死人だとして、セルトマンはまだ・・・・一番ヤバい奴を召喚していない」

「「・・・・・・!!!」」

「そいつが出てくるまでは、俺達翼人は引っ込むぞ。すまん、アリス。手を貸してくれ。医務室に行く」


そう言って、アリスの手を借りて医務室へと向かう蒔風。
こうなった以上は、全力で回復に勤しまなければならない。


蒔風に言われて、観鈴と一刀の脳裏に浮かんだのは、一人の女性。
確かに、あれが召喚されたら止めるだとかそう言う次元では済まなそうだ。



時刻は19時を回っている。
空は暗く、戦いは夜へと突入する。



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セルトマン、オフィナ、フォンは下がり、代わりに相手をするのは新たに召喚されるサーヴァント。

そのころ、市外地で繰り広げられていた兄妹対決は


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パンパン!!ダダッ、パンッ、パン、パパン!!


街灯に照らされる大通り。
中央分離帯のブロックを挟んで、二人の人間が走り抜けていた。


両者とも撃ち出す弾丸は、微小な違いはあれどオレンジ。
扱う武器は、双銃。

ティアナ・ランスターとティーダ・ランスターの壮絶な打ち合いは、いまだに続行されていた。


互いに頭部を狙った弾丸は、同じように弾丸に撃ち落とされて消滅する。
その中にフェイントの弾丸を織り交ぜながら、本命の弾丸をぶち込んでいく。

いまこの場に飛び交う弾丸は、三種類。


相手を倒す為の弾丸。
相手の弾丸を打ち落とすための弾丸。
相手を攪乱するための弾丸。

その魔力弾の軌道はさながら芸術的な紋様を描きながら、夜の大通りを彩っていく。



(今のところがまだ互角?・・・・とはいっても)

(ティアナ、お前は魔力量がそう多い子ではないだろ?)

兄と妹が考えていることは同じだった。
確かに、今は互角だろう。

これにはティアナ自身の経験値がモノを言っている。


実力的には、確かにティーダの方が上の部分の方が多い。
しかしティアナがこれまで潜り抜けてきた戦いは、ティーダの物と比べて質も規模も段違いだった。

実戦経験値において、死亡時から変わっていないティーダよりも、ティアナは圧倒的な数を経験しているのだ。


(いつかは抜かれると思ってたけど、まさかもう抜かれているとはね・・・・・)

目元は少し悲しそうな顔をして、それでも口元は少しは嬉しそうに笑うティーダ。

つまり、妹はそれだけ危険な仕事や任務に携わってきたということだ。兄として、誇っていいのか心配するべきなのか。
現に、自分はその仕事で命を落としている。


(でもそれでも、今の現状俺の方が上だ。魔力量だってもともと上。しかも、こっちは得体のしれないバックアップ付)

(兄さんの魔力量は底がないと思っていい。それに対して、私は魔力にもカートリッジにも限度がある。でも・・・・)

(さて、その中でどうくるのか・・・・お前が俺を越えられないなら――――)

(でも、この状況で兄さんを越えられないなら、私は――――この仕事を選んだ意味がない!!)

(この仕事をさせるわけにはいかないからな!!)


ダンッッ!!!


決意と共に、先に飛び出したのはティアナだった。

しかし、それはティーダに向かってではなく


(バックステップ?逃げ・・・いや、違う!!)

ティアナがやろうとしていることを察し、ティーダもその後を追おうと飛び出した。
その間にも弾丸は行き交うが、ティアナはそのままビルの隙間の路地裏へと入り込んでいってしまう。

(ハハッ、やるじゃないか・・・・・)

(銃という武器の優位性は、圧倒的なロングレンジからの攻撃。クロスレンジでの戦いもあるけれど、この場合は)

(なるほど、姿を隠した方、先に姿を隠した方が優位、ということか!!俺はここの地形に疎い。俺も隠れて見失ったら負けるな・・・・)


「成長しているじゃないか、ティア」

「くっ、即座に理解して追って来るなんて・・・・」

「お前よりも先輩の執務官だぞ?それに加えて・・・・お兄ちゃんを舐めるなよ!!」


ティアナを追うティーダが、銃口を上に向けてから、腕を前斜め、扇ぐように降ろしながら一斉発砲した。
思わず上方へと視線が向くティアナ。しかし、即座に顔を青くして前を向いて走り出す。


《サー。この速度では足りません。潰れます》

「わかってるわよッ!!あー、なんだか模擬戦思い出してきたっ!!」

《あれは悪夢でしたね》

「言うなッ!!」


細い路地裏の中、左右のビルが崩壊していく。
降り注ぐ瓦礫の中、涙目になりながら猛ダッシュしていくティアナ。

しかし、降り注ぐ瓦礫よりも何が恐ろしいかというと、背後から感じる視線が一瞬も離れないと言うことだ。


「この中で見失ってないってこと・・・?」

しかし、いまはとにかく逃げだ。
ビルの隙間から土煙がドフンッッ!!と噴出し、それに押されるような形で、一瞬遅れてティアナが飛び出してきた。

いつの間にか廃棄都市エリアに入ったらしい。
ティアナが飛び出してきたのは、円形の広場だ。


月明かりもない夜の時間。
大通りと違って街灯もなく、遠くの光が弱々しく届いているのみ。


『クロスミラージュ』

《申し訳ありません。見失いました》

念話でクロスミラージュに確認を取るが、予想通り過ぎる返答にがっくりと肩を落とす。

しかし、落ち込んでいる暇はない。
そうしながらも広場に隣接する、廃棄されたマンションの中へと入って行き、四階まで上がってから膝をついて一息を入れる。


(残った魔力量は40%。撃ち合いで結構使ったわね・・・・カートリッジと併用しててこれなんだから嫌になるわ)

周囲への警戒を怠ることなく、さらにポケットのカートリッジの残りを確認する。残りカートリッジ弾数は8発。
クロスミラージュ一丁に二発ずつだとして、左右で四発。それが二回分。

対して、相手に底は無し。


『泣きたい・・・・』

《ガンバです。サー》


はぁあ・・・と半ば涙目になって溜息をもらすティアナ。
そして、兄の行動パターンをファイル化しようとして頭を上げた瞬間、何かの光に気付いた。


「・・・・ちぃお!?」

バッッ!!

チュンッッ!!!


頭を上げる動作のおかげで、眼球を光が通過していなかったら気付かなかったであろう。
それは、まさしくレーザーライトだ。

咄嗟すぎる行動に、変な言葉を発しながらティアナが全力で転がった。

そして即座にその方向へと銃口を向け、再び発砲の光を見た。



「クロスミラージュ!!」

《了解》

飛来してくる弾丸を、ティアナが迎撃し始めた。

とは言っても、それは弾丸による迎撃ではない。

クロスミラージュはカートリッジを一発ずつ使用し、形態をダガーモードへと移行していた。
そして、ティアナは飛来してきた弾丸を、その刃で弾き飛ばしていく。


(む・・・・撃ち落とさないで、弾き飛ばすか・・・・あいつにあれだけ体技があったとは・・・・いや)

ティアナのいる廃マンションとは、別のビル内にティーダはいた。
天井と柱と床しかない、外壁のない廃ビルだ。ティアナと同じく、四階でしゃがみ込んでいる。

今ティーダが使っているのは、双銃を繋げ合わせたライフル型デバイスを使っていた。
そこからティアナを狙撃していたティーダは、彼女がダガーで弾丸を弾いたことに驚きながら、その驚きを訂正した。


(違うか。あいつはレーザーライトの位置と発砲の光で反応しているだけだ)

証拠に、ユラユラと揺らすレーザーライトに合わせて、ティアナはダガーを揺らしていた。
ならば、とティーダはレーザーライトを切り、改めて標準を合わせる。




「さて・・・ッとぉうわ!?」

スコープを覗くと、そこに飛び込んできたのはオレンジ色の光。
しかし、それはまた弾丸ではなく、ダガーモードのクロスミラージュの片方だ。

それはティーダの後ろ5メートルの地点にあった壁に突き刺さる。



「あ、あそこからブン投げるか!?しかも銃使いが銃を!?」

ちなみにビルの間は50メートルは離れている。
この薄暗い闇の中でだと、ビル自体はうっすらと見えるが、ティーダの姿は見えないはず。

それでも正確に投げてきたという、ティアナの記憶力と動体視力は凄まじい。


(伊達に犯罪者を相手にしてきた、ってわけじゃないか。だが!!)

驚きはしたが、双銃の片方を投げただけで仕留められると思っていたと考えると、やはり残念だ。



この状況で、そう考えてしまうティーダ。
しかし、彼は間違っていた。


一つ。
ティアナはもはや、彼が知っている、弱い女の子ではない。

二つ。
彼女の師が、不撓不屈のエースオブエースだったということ。

三つ。
それを受け継いだティアナが、その程度で終わるような諦めのいい根性の持ち主ではないと言うことだ。


ビルに突き刺さったクロスミラージュから、ビィンとオレンジの紐が伸びる。
それはティアナがもつもう一丁のクロスミラージュと繋がり、そしてそこから一気にティアナが――――飛び出してきた。


「なぁ!?」

ティーダが見ると、ビルに突き刺さったクロスミラージュは魔法陣を発していた。
恐らくは抜けないようにするものだろう。

一瞬前ならともかく、もはや突き刺さっている部分の破壊でティアナを落すのは無理だと判断したティーダは、ティアナに向かって銃口を向けた。


「牽引力に身を任せたのはいいが、アーチャーに一直線に向かってくるのがどういうことかわかっているだろうな!!!」

ティアナは今、一直線にティーダのいるビルへと向かってきている。
これではアーチャーでなくとも、容易に撃ち落すことができるだろう。


当然のように、ティーダは発砲する。
しかし、その軌道上からティアナが姿を消した。


「なに!?」

ティアナは発砲の瞬間に魔力ワイヤーを弛緩させ、弓なりに下降しながら弾丸を回避したのだ。

ブラァン、と言うには表現が足りないような勢いで、一気に下降するティアナ。
ティーダはその動きと、その後のティアナの動きを読んでさらに発砲。



そして、ティアナは再びワイヤーを一気に牽引させた。
緩やかな円を描きながら落ちていたティアナは、グンッッ!!と光れて再び一直線にティーダへと向かって行った。

高さにして、二階まで下がっていたティアナは肩に少しの痛みを感じながら、一気に上昇して兄の元へと突っ込んでいく。


だが、ティーダはそれを予測していないわけがなかった。
弓なりの動きの先に打たれた弾丸は外れるが、この動きを予測して放っていた弾丸がティアナの肩を掠めていく。

掠める程度で済んだのは、予測段階で撃たれた弾丸だからか。
しかし、今度は確実にティアナを、もしくは手元のクロスミラージュを狙ってくるだろう。


(残り距離はもう10メートルもない!!本来ならここで撃つか撃たれるかになるが・・・・俺が外すと思うか!!)

(って思うでしょう!?)


ティーダが銃口を構えてティアナに向ける。
もう目の前だ。残り5メートル。

ティアナの目の前に、ほぼ銃口が当たるとこまで接近し―――――


ティアナが、思い切り腕を振った。
その反動でワイヤーは波を打ち、ティアナの身体は一気に打ち上げられた。


ティーダからすれば、大きな状況変化だ。
下斜めから急接近していた敵が、急に上斜めから襲いくるのだから・・・!!


「な!?」

驚きの声を上げるティーダ。
ティアナはその一瞬の動作の中でも体勢を崩すことなく、そして思い切り振り上げた脚を落した。

筋力と重力と牽引力を合わせて放つ踵落とし。
その一撃を、ティーダはクロスした両腕で受け止めた。


「グッ・・・!?た、体術が伴ってるのは本当かよ・・・!!!」

とはいえ踵落としを受け止めることには成功するティーダ。しかしベキベキという音と共に両腕が使い物にならないことを察し、即座に後退して壁の裏に隠れていく。
ティアナが着地し、衝撃を逃がすために転がっているうちに壁の裏へと下がるティーダ。

ティアナも立ち上がると、片方を壁から抜いて双銃を構える。


「凄いぞティアナ!!だが、お前も知っているだろう?俺の弾丸の能力を!!」

「・・・・・・」

ティアナは答えない。
知っているからこそ、その質問を黙殺する。

「・・・・賢明だ。だが!!」

ティーダ・ランスターが生前それを撃てたのは、一回でも連続でも四発が限度。
それ以上は、いったん休みを置かなければならない。

故に、相手の位置を正確に知る必要がある。
しかし、今の彼は出力に限度はない。

そして腕の治癒は、すでに終わった。



「ハッ!!」

ティーダの声が、壁越しに聞こえてくる。
すると、壁の向こう側から壁を破壊することなく弾丸が一気にこちらへと発射されてきたではないか・・・・・!!

「ッ!?」



これがティーダ・ランスターのクリア・バレット。
無機、有機を問わず、物質を透過することで任意の相手を確実に狙い撃つ弾丸だ。

相手が室内に隠れようと、人質を取ろうとも、確実に悪を討ち抜く「ランスターの弾丸」だ。


(攻撃認証はティアナ!!さあ、今のお前はこれをどうやって乗り越えてくれるのか!!)

もはや乗り越えられることを疑いもしないティーダ。
先ほどからのやり取りで、彼はティアナに翻弄されてばかりだった。

ならば、あとはその底を知りたいと思うのは兄として・・・・


感傷に浸りながら、弾丸を打つ。
そして


ドォンッッッ!!!


ティーダ・ランスターは、凄まじい爆発に突如襲われ、隠れていた壁ごと吹き飛ばされ地面に転がって行った。



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二秒の昏倒。
吹き飛ばされたティーダが、瞼を開く。

「・・・・・何があった?」


そして、開口一番に聞く。
それに答えられる少女の姿はまだ見えない。


(第三者による、どこか別からの攻撃?いや、だが爆発の時に感じた魔力はティアナの物・・・・となると)

考えられるのは、一つ。
ティアナのデバイスに、爆発物の形態があったのだろう。

強くなったなぁ、と感慨深くなってくるティーダ。


そこに、当の本人が現れた。
良くやった、と声をかけようとして振り向くティーダ。

しかし、言葉に詰まってしまった。


「おま・・・それ・・・」

「え?何か変?」

「ライフル?」


ティアナが所持していたのは、クロスミラージュを長距離狙撃砲撃の可能なライフルタイプへと変えた、ブレイズモードだ。
しかし、それは読んで字の如く遠距離、ロングレンジで活用すべき形態だ。間違ってもこんな近距離で使うものではない。


「おまえ・・・・あの弾丸をどう防いだ?」

「防御だけは、それこそ神経が磨り減るまで教え込まれたから」

「じゃあ・・・あれは?」


ティーダが仰向けのまま、破壊された壁を見て聞く。
それにティアナは、さっきよりもケロっ、とした顔で、簡単に言ってのけた。


「こうやって―――――」

大きなブレイズモードを振り上げ

「こう!!」

それを振りおろし、同時に発砲。
その威力の相乗効果で、遠くの壁が粉々に吹き飛ばされた。

「模擬戦を思い出した時に考えたの。これ大きいから、遠心力も相まってすごいのよ。これが、どんな障害もブチ破る、「私の」ランスターの弾丸よ」

そう言って、クロスミラージュをツーハンドモードに戻してティーダに付きつける。


「投降してください。兄さん」

「・・・・・・・できると思うか?俺はあくまでもサーヴァントだ」

「でも・・・・」

「それに、どっちにしろもう遅い」


そう言って、ティーダが腹をめくり上げる。
ティーダの肉体は、そこから粒子となってゆっくりと消えて行っていた。


「そんな・・・」

「そんな顔すんな。俺はもともと死人。こうなるのが自然だ」

「でも・・・でも!!やっと、やっと兄さんに・・・・」

「ああ、ティアナ」


言葉を乱しながらも、まったく揺らがず銃口を向けるティアナ。
そのティアナに、ティーダが手を伸ばして頭に乗せた。


「ありがとうな。ランスターの弾丸は、間違いなくすべてを打ち抜くと証明できた」

「え・・・・・・」

「俺の弾丸は素通りだ。でも、お前のは真っ向からブチ破った。それがお前の強さだよ。ティアナ」

「うん」

「ごめんなぁ・・・・俺が変なことで死んだから、お前大変だったろ」

「友達がいたから、大丈夫だった・・・・・」

「それに、いろいろと背負わせちまって、辛かっただろう?」

「いい師匠がいたから・・・・」

「そうか・・・・ティアナ。お前は、一人じゃなかったんだな?」

「うん」

「あの泣き虫が、ここまで強くなるなんてなぁ・・・・ティアナ」

「うん?」

「お前が妹で、良かった」

そう言って、ティーダは静かに目を閉じ、消えて行った。
その最後に、一言だけ


「安心した」


と告げて。


静かにいなくなったティーダの跡を見て、ティアナは思わず天井を仰いだ。
彼が、その方向へと昇って行くのを見上げているようにも、何かがこぼれないようにしているようにも見える。

そして、よしっ!!と声を上げて、走り出した。


バイクはまだ走るだろう。
転倒したそれを回収して、「EARTH」に向かわなければ。


赤いバイクを置き上がらせ、ティアナ手で息吹を噴き出す。
一気にスピードを上げて「EARTH」へと。その名残の風には、キラキラと光る水滴が煌めいていた。




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「あ、アーチャーやられた」

「おう?じゃあまた一騎召喚するんで?」

「いや、いったんデータを集めてからだな。そう時間はかからないから」

「そう言えばサーヴァントのクラスって、何か一つ加えてるんだっけ?」

「あー、うん。どうしても七つのクラスにあてはまらない奴とかね。そういう奴に与えるクラス名を、一つだけ」

「どんなクラス?」

「クラス名は――――――」



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「EARTH」ビル内、局長室前。
セルトマン達にも見つかることなく、ようやくここまでやってきた翼刀たち三人。

後はこの中の核を破壊さえすれば、このふざけた戦いは終わりだ。


「なんか楽勝だったな」

「途中の防衛線の魔物はヤバかったけど?」

途中、もちろん様々な罠はあった。
だが結界という異空間内での異物に、翼刀が気づかないわけがない。

それを上条の右手や退魔の神通力で解除し、順調に進んできたのだ。
警戒が甘い、というよりは相手が悪かった、というべきだろう。

「とにかく、さっさと終わらせてセルトマン捕まえよう」

「ああ!」「うん」


そう言って、翼刀が元気よくドアノブを掴む。
その瞬間、全身の筋肉が緊張で固まった。


(な・・・・・?)

全身が発する警報。
この扉の向こうにいる何者かからの威圧。

否、威圧などではない。
それは、そこにいるだけで発せられる強大な気配だ。

ドアノブを掴むまで気付かなかったのか。
それともここがそのラインなのか。

後ろから「どうした」だの「開けないのか?」だのとか言ってくる二人には申し訳ないが、できればこのまま手を放して引き返してしまいたい。


毛穴が開き、汗が噴き出す。産毛がざわつき、肌が痺れる。


この先にいるのは、ヤバい―――――!!!!



その思考は、ゆうに二分は続いた。
そして、ついに意を決して手首を捻った。


その先にいたのは――――


「良くここまで来た。だが私も不本意ながら、ここを守らねばならない」

「な――――――――――ッッッ!?」

「最後の敵ってことか」

「上等!その幻想、ぶち殺す!!」


あまりにも聞き覚えのある声に、翼刀は絶句した。
交戦する気満々の二人の頭をはたき、今すぐにでも頭を下げたい気分だ。


しかし、それと同時にこみ上げるのは、怒りだ。

その人物を利用しようとするセルトマンへの、純粋な殺意だけが沸いてきた。



「あの野郎・・・・ここまで外道か・・・・!!!!」

「え?」

「知ってんのか?あいつを」

その質問に、コクリと頷く翼刀。
二人はその返答に安堵する。知らない相手ではないらしい。ならば、突破口はあるはず。


「なあ、誰なんだ?あれ」


もはや翼刀に、恐怖はない。
ただ今は、その威圧感に潰されないように心を強く保つことだ。

ゆっくりと、翼刀はその名を告げる。


「あいつは、鉄流不動拳第17代継承者」

「・・・・・え?」

その流派の名は、いやでも聴いている。
目の前の男の流派ではないか。


「ちなみに、俺は18代目な」

「・・・・・ってことは」


「あいつの名は、鉄翔剣・・・・・鉄流不動拳の歴史上、化け物と呼ばれた唯一の男!!!」

「なんだ。今日はやけに持ち上げてくれるな?翼坊」

「ふっざけんな・・・・・なんであんたが出てくるんだ・・・・・親父!!!」



新たな七騎目のサーヴァント。鉄翼刀の実父。
サーヴァント:ブレイカー・鉄翔剣が、大聖杯の核を守護する。




to be continued
 
 

 
後書き

自分なりに設定したティーダが少し不安要素のこの回。
お気に召しましたら幸いです。

そもそもティーダって「僕」?「俺」?
めぐ銀では「俺」にしましたが。



新たなサーヴァント、そのクラス名はブレイカー。
徒手空拳とか剣、槍、弓じゃない武器使いのクラスに悩んでこれになりました。
いわば「その他」扱いです

そして、召喚されたのは翼刀の父親、鉄翔剣。
下の名前は「しょうけん」と読みます。


親父の登場に、翼刀は戦えるのか?




ではそろそろ


蒔風
「次回。そろそろセフィロスも終わりだな」

ではまた次回 
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