酒の魔力
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第四章
「飲み過ぎではと」
「わかっていたけれどね」
「それでもですね」
「飲んだよ、胡桃もよかったしね」
ブランデーのあてにしていたそれもというのだ。
「だからついつい飲んだよ」
「いつもそうにしても」
「そう言われるとそうだけれどね」
「飲まれたんですね」
「ついついね、じゃあ」
「はい、そこまで二日酔いが酷いなら」
「お風呂入って来るよ」
こう言って実際にだ、ブラウヒッチュは風呂に入った。そしてサウナと水風呂と湯で酒を完全に抜き頭も身体もすっきりさせてだ。
朝食の場に出た、そこでビールを美味そうに飲む彼にコジマは問うた。
「先程あそこまで苦しまれていたのに」
「そう、しかしね」
「それでも飲まれますか」
「飲むよ、やっぱりお酒はね」
ブラウヒッチュはジョッキのビールを飲みつつ応えた。
「いいね」
「止められないのですね」
「もう離れられないよ」
「そこまでお好きなんですね」
「そうだよ、どのお酒も最高に美味しいからね」
「飲まれますか」
「そうなんだ」
先程まで二日酔いで苦しんだがというのだ。
「好きだからね」
「何かお酒には」
「お酒には?」
「不思議な力があるんですね」
「人を惹き付けて離さないね」
「それはあなただけではないですか」
「多くの人がだね」
本当にという返事だった。
「だからだね」
「それ故に私達の仕事も出来ていますね」
「皆お酒が好きだから」
「そういうことですね、お酒は」
夫が飲んでいるそのビールを見つつの言葉だ。
「悪魔の力がありますね」
「天使じゃなくて」
「二日酔いにもなりますから」
過ぎるとだ。
「身体も壊しますし」
「だからそう言うんだね」
「はい、不思議な魔力がありますね」
「それはそうだね、だから私も飲んでるしね」
「それは今日もですね」
「明日もだよ、この世を去るまで」
まさにその時までというのだ。
「飲んでいくよ」
「そうですか」
「それが楽しみだからね」
「完全にお酒の虜ですね」
コジマは夫のその言葉を聞いてやれやれといった顔で述べた。
「あなたは」
「そうだね、自分でも思うよ」
「そうさせるものがお酒にはありますね」
「絶対にあるよ、だからね」
「今もですね」
「ビールを飲むよ」
朝のそれをというのだ、そして実際にだった。
ブラウヒッチュはビールをごくごくと実に美味く飲んだ、コジマはそんな夫を見てやれやれと微笑みつつ自分の朝食を食べた。夫が朝の酒のあてにしているソーセージは実に美味かった。
鮭の魔力 完
2017・5・19
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