恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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88部分:第八話 董卓、城を抜け出すのことその十
第八話 董卓、城を抜け出すのことその十
やがて朝になった。ここで化け物の顔が見えた。
「!?女?」
「まさか」
虎の毛皮の奥から顔が見えた。それは紛れもなく女のものだった。
赤紫の髪も見える。女であることは間違いなかった。
「しかも人か」
「では化け物ではない!?」
「けれどその強さは」
こちらの攻撃は防がれ続ける。こちらは防ぐだけで必死だ。その中での言葉だった。
赤紫の髪は肩までだ。頭から二条長く伸びて虫の触角の様になっている。上着は胸しか覆っておらず右が黒、左が白だ。腕の布も同じで所々に金の装飾がある。
スカートは白いミニでその上に黒い布で覆いを左右にしている。ハイソックスは黒でブーツも履いている。マントと上着に付けている長い布は赤紫色だ。表情は朴訥としている。少し黒い肌であり顔立ちは整っている。赤紫の目には血走ったものはない。戦っているというよりは起きぬけの顔であった。目は垂れ目でも釣り目でもない。口元も緩めだ。
その彼女だが強さはかなりだ。そのまま七人と互角の戦いを続ける。
しかしだった。ふとここで何処からか赤い犬が出てきた。赤毛の小さな犬である。
美女が得物をまた一閃させた。見ればその得物は槍に似ているがその横に三日月型の刃がある。関羽はそれを見て言ったのだった。
「方天戟!?」
「それなのだ」
「そうか、それを使うか」
張飛と趙雲も確かにそれを見た。
「この女は」
「その様だな」
キングも言った。
「かなり手強い武器か」
「突くことも斬ることも自由自在だ」
こう話す趙飛だった。
「どちらもだ」
「じゃあかなりまずいわよ」
「だから今まで」
舞と香澄がそれを聞いて言った。
「突いたり斬ったりもできた」
「そういうことなんですね」
「そうだ。そしてだ」
関羽は二人に応えながらまた述べた。
「また来るぞ」
「来た!?」
「また!」
「皆かわせ!」
衝撃波が来る。そうしてだった。
七人は一斉に跳んだ。至近での衝撃波を間一髪でかわした。
だがその衝撃波は後ろにあった木を真っ二つにした。そこに出て来た犬の上に落ちる。しかしそれは少女が出て来て慌てて助けあげた。
「危ない!」
「くっ!」
関羽がそれを見てだ。すぐに跳んでその木を下から両手で支えた。咄嗟に戦いよりも少女と犬を救うことを優先させたのである。
「危ないところだったな」
「関羽さん・・・・・・」
「無事か?犬も」
「は、はい」
少女は犬を抱きながら言葉を返した。
「私もワンちゃんも」
「そうか。それは何よりだ」
「赤兎を助けた」
女はその関羽を見て言った。
「御前達悪い奴じゃない」
「!?悪い奴じゃない?」
「悪い奴じゃないって」
「悪い奴とは戦えない」
こう言ったのである。
「だから止める」
「何か急に終わったな」
「そうね」
「もう終わる」
女の方から終わらせてきたのだった。
「これで」
「終わったことはいいのだ」
張飛もそれはいいとした。
「けれど御前は何なのだ?名前は何というのだ?」
「呂布」
女はぽつりと名乗った。
「字は奉先」
「呂布奉先!?」
「それが貴殿の名前か」
「そう」
無表情な言葉で答えたのだった。
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