【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。
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0172話『アイオワの様変わり上戸』
前書き
更新します。
後少しで秋刀魚祭りが開催されようとしているこの頃。
私は珍しくアイオワに居酒屋鳳翔へと誘われていた。
「ヘイ、Admiral。最近の調子はドウデスカ……?」
アイオワが私にお酒を手渡ししてきながらそう聞いてくる。
それをありがたく受け取りながらも、
「ありがとう。まぁぼちぼちやっているよ。最近は後少しで駆逐艦のみんなの練度上げも終盤段階に入りそうな感じだから秋刀魚祭りも並行してやっていかないとな」
「ノンノン! そういうのじゃなくてハルナとの仲デス!」
《ふぇ!?》
そのアイオワの言葉に私が反応する前に榛名が先に反応していた。
榛名って結構いきなりの事には弱いよな。
そんな榛名も可愛いけどなと思いながらもアイオワの言葉に返事を返す。
「特に変わりはないよ。いつも通り私は榛名の事が好きな事は」
「オー! さすがね。もうこの世界に来た頃のAdmiralじゃないのね。初心な反応が見れなくて残念デス」
《あ、あの……その、あうぅ……》
榛名は顔を赤くしていて可愛いなぁ。
「ハルナの反応が一々私のやばい琴線に触れるわね! とってもキュートだわ! 抱き着けないのが残念ね……」
「それには私も同感だ」
「Admiralもわかっているわね! そういうAdmiralにはもう一本ビールをプレゼントするわ。ホウショウ! お代わりお願い!」
「はいはい。でもアイオワさん、提督はお酒が苦手なのですからほどほどにしてあげてくださいね?」
「わかっているわ!」
本当だろうか……?
もう酔ってきた感覚があるしな。
それで鳳翔さんが気を利かしてくれたのかお冷を持ってきてくれた。
「提督どうぞ。さすがに連続で飲まれますと明日に響きますよ? 休み休みでいいではないですか」
「ありがとうございます、鳳翔さん」
「オー! これが噂のテイシュカンパクって奴かしら?」
「嫌です、アイオワさん……。私は提督とはそんな仲ではありませんよ?」
「そうはっきりと言われると傷つくのだがな……」
「あ、すみません。ですが提督には榛名さんという素敵な女性がいるではありませんか」
「それはご尤もで」
《あの、提督も、アイオワさんも鳳翔さんも! 榛名をからかわないでください!》
もう榛名は涙目で訴えているので触れたら抱きしめているかもしれないくらいには可愛いのである。
「ごめんごめん榛名。少し酔いが回ってきてるようだからいつもより口が軽くなっているのかもしれないな。元の世界では私はお酒が入るとよく笑うって言われていたから」
「提督は笑い上戸なんですよね。それは私ももう知っていますよ」
「アイオワも知っているわ! 再会した日の宴会でそれは見たからね。笑いながらバシバシとコンゴウを叩いていたわね」
「そんな事をしていたのか私は……」
それでやはりお酒は控えめにしないといけないなと感じていた。
「思い出しますね……。アイオワさんも提督がいなくて寂しがっていましたよね」
「それはホウショウも一緒でしょ? あの時はみんな不安だったのよ……戦艦と空母のみんなで手分けしてメンタルケアしていたけど、あのままAdmiralが来てくれなかったらきっと私達は崩壊していたわね。思い出しただけで寒気がするわ……」
「そうですね」
そう言ってアイオワは体を抱きしめていた。
鳳翔さんも同意見なのかうんうんと頷いているし。
「そんな状況とは聞いていたけどそこまでだったのか」
「そうよ! Admiralが来るまでの数日は本当に地獄だったんだから!」
そう言ってグビグビとビールを飲み干すアイオワはもう完全に酔っ払いだな。
ダンッ!とジョッキを下ろすと、
「あーもう……あの時はね。本当に、ホントーに心配したんだから……サラとかもコンゴウとかもみんながみんな……だっていうのにAdmiralと来たら……ヒック……エグッ……」
ッ!?
アイオワが怒り上戸から泣き上戸に変化した!
カウンターに突っ伏してながら泣き出してしまっている。
「あらあら……。どうしましょうか。ここに来てあの時の事を思い出してビールも回ってしまったようですね」
「どうしましょうか鳳翔さん?」
「これは落ち着くまで付き合うしかないですね。ちょっと待っていてください。もういい時間ですので暖簾を下ろしてきますので」
そう言って鳳翔さんは少し席を外していた。
「Admiral……もう、消えない、でね? あの時の、あんな思いは……二度と嫌、なんだから……」
まるでうわ言のようにアイオワは呟く。
そんなアイオワの背中を私は擦ってあげる。
「大丈夫……私はみんなの前から消えないよ……」
「約束、よ……」
それでアイオワはそのまま眠りについてしまった。
ふぅ……なんとかなったな。
《アイオワさんも今までこんな不安を抱えていたんですね……》
「だな。いつも周りを元気づける明るさの持ち主の人だったから、こんな思いを今まで抱えていたなんて知りもしなかったからな」
《大規模作戦でも終盤は先陣を切っていましたからね》
そんな話を榛名としていると鳳翔さんが戻ってきて、
「みなさんもアイオワさんと似たような不安をいつも抱いているんですよ。かく言う私も提督がまたいなくなってしまったらという不安を持っています。ですから時間が解決してくれるでしょうけどまだ皆さんのこんな顔を見る事も稀にはあると思いますので提督はその場に遭遇したら慰めてあげてくださいね? 特に駆逐艦の子達はその傾向が強いですから……」
「わかった」
鳳翔さんとそんな約束をして私は眠ってしまっているアイオワを背中に背負って戦艦寮へと足を運んでいた。
そしてアイオワの隣の部屋にいるであろうウォースパイトを呼んだ。
「はい。どなたでしょうか?……あ、Admiralでしたか。どうされました?」
「ちょっとアイオワがお酒の飲み過ぎでダウンしてしまったんで代わりに介抱してくれないか?」
「まぁ……あのアイオワが。わかりました」
それでウォースパイトに任せて私はその場を後にしようとしたんだけどアイオワの手が私の裾を掴んだままで離してくれなかったので、
「今日はこのまま居座るのを検討に入れておくか」
「ふふ。アイオワも甘えん坊さんですね」
それなのでせっかくだから金剛とかも呼んで今日は戦艦寮で一日を終えた。
翌朝になってアイオワが起きたのか、
「……あれ? なんで私の部屋にAdmiralが?」
「昨夜の事を覚えていないのか?」
「Admiralと一緒にお酒を飲んでいたところまではなんとか思い出せるんだけど……うーん……」
「ま、忘れているんならそれでいいよ。今はゆっくり横になっていなさい。なにか酔い覚ましに効く料理でも作ってやるから」
「サンキュー……」
それでアイオワは昨日の事はもう忘れていたんだけど私は自覚をしないとな、という思いを感じていた。
みんなの提督であると同時に家族でもあるんだから。
後書き
今回は特に関係はないんですけどアイオワをチョイスしてみました。
普段活発な子がこんな弱い一面も持っているのもいいと思うんですよ。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
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