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提督はBarにいる。

作者:ごません
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ヘルシーなのに満足!蒟蒻レシピ特集・その1

「蒟蒻レシピをねぇ……」

「そうなのよ提督、是非ともお願いしたいわ」

 とある日。ウチの店に飲みに来ていた陽炎に相談を持ち掛けられた。蒟蒻を使ってヘルシーかつ満足出来るレシピを教わりたいらしい。

「浜風の為にね!」

 どうやら問題とされているのは陽炎の妹である浜風の食欲らしい。駆逐艦のクセによく食うからなぁアイツ。そういえば最近見かけた時、心なしか顔が丸くなっていたような……そんなに影響出てんのか。

「是非とも浜風さんのダイエットにご協力を、提督!」

 カウンター越しに土下座せん勢いで頭を下げているのは明石である。

「……そんなにマズいのか?」

「マズいなんてモンじゃないですよ!最悪浜風さんの艤装を1から作り直すかどうかという所まで来てるんです」

 明石によれば、艦娘の艤装は陽炎型なら陽炎型のある程度の規格があり、その規格に当て嵌めて個人の身長や体重、スリーサイズなんかの身体データを基に微調整を加えてある精密機械で、僅かな身体の成長でも違和感が生じて調整が必要になったりする物らしい。

「浜風さんの場合、急激に……そのぅ、お腹周りのサイズが変わって来てまして」

 あ~……要するに太って、ゲフンゲフン、プニって来てるんだな?主にウェストが。

「無理に調整が入ってない艤装を使っているとどうなる?」

「解りやすく言うなら、パツンパツンのワイシャツを着て動き回るのをイメージしてもらえると」

 成る程、動きが阻害されるわ、下手すりゃボタンが弾け飛ぶな。それが艤装で起きるとしたらある日突然艤装の拘束具が外れるワケだ。海上ならそのまま海へドボン、敵のいい的になるな。

「運動は?させてるんだろ」

「させてるんだけどねぇ……余計にお腹が空いて、食欲が加速しちゃってるのよ」

 どうしよう、と言わんばかりに陽炎が溜め息を吐いた。『空腹は最高の調味料』を地で行っちまってるワケか。そりゃヤバいな……食事でのカロリーコントロールが必要だわ。

「わ~った、出来る限り協力させて貰うぜ。明日店の開く時間に浜風を連れてきな」

「恩に着るわ、提督」

「艦娘の体調管理も提督の務めと思えば、仕事の内さ」

 さぁて、蒟蒻か……どうすっかねぇ。





 さて、翌日の開店時間。約束通り陽炎が浜風を店に連れてきた。言われてよく見てみれば確かに、制服から覗く二の腕とか、頬の辺りとかが弛んで見える。心なしか顎の下にも肉が付いてきている。……うん、確実に太ってるなコリャ。

「で、浜風が来てるのはいいが何でお前らまで」

「だってぇ、提督がダイエットメニュー作るんでしょぉ?だったら見逃せないじゃない!」

 そう言って頬を膨らませているのは愛宕。何処がとは言わないが、重巡というよりも戦艦クラスのボリュームの持ち主である。それにダイエットメニューではなく、あくまでも蒟蒻を主役にしたメニューだ。まぁ蒟蒻を使ってカロリーを抑えるから、ダイエットメニューと言えなくもないが。

「で?愛宕の付き添いで来たのか高雄は」

「わ、私も……そのぅ、ダイエットメニューに興味があるというか、なんというか」

 あ~ハイハイ、お前も贅肉が気になってんのね。俺もガリガリよりはムチムチの肉感的美人の方が好みだが、デブとムチムチは似て非なる物だからな。ガチムチは全くの別物だ、ノーサンキューだ。そして何故かもう一人。

「潮は何でいるんだ?マジで」

「あの……曙ちゃんに『アンタも浜風と一緒にその無駄なお肉落としてきなさいよっ!』って言われて」

 いや、それ完全に曙のやっかみだろ。潮は平均的だと思うんだがなぁ……一部を除いてだが。対して曙は全体的に細すぎるんだよな、アイツはもっと食った方がいい、うん。

「とりあえず……陽炎も入れて5人分準備すれば良いのか?」

「え、私の分も作ってくれるの!?」

「まぁ、店に来たからには客だしな……キッチリ貰うモンは貰うが」

 そう言いながら俺は作っておいた今宵のお通しを盛り付ける。今夜はお通しから蒟蒻尽くし。『タラコ蒟蒻』が今日のお通しだ。



《常備菜やお弁当にも!タラコ蒟蒻》※作りやすい分量

・糸蒟蒻:200g

・タラコ:1/4腹(20g)

・ごま油:大さじ1

・酒:大さじ1

・薄口醤油:小さじ2

・実山椒:大さじ1

※実山椒が無い場合は粉山椒でも可。ただし、辛くなるので大さじ1/2に減らしましょう!


 さて、作り方を紹介しよう。まずは蒟蒻の下拵えから。糸蒟蒻を袋から出し、沸騰したお湯でサッとゆがく。火を通す為に加熱してる訳じゃないから30秒~1分でOKだ。

「ねぇ司令、何で蒟蒻を下茹でするの?そのままでも食べられそうだけど」

「あぁ、こりゃ蒟蒻の灰汁抜きだよ。こうしねぇと臭みが残るんでな」

 蒟蒻ってのは、蒟蒻芋と呼ばれる芋をすりおろして水に溶かし、加熱してデンプン糊みたいにした所に凝固剤を加える事で作られる食べ物だ。この凝固剤ってのが強アルカリ性の液体で、昔は灰を溶かした水……正に灰汁(あく)だったんだが、最近は水酸化カルシウムを使うのが一般的になっている。まぁこの辺は興味を持ったら自分で調べてみるといい。んで、この凝固剤が蒟蒻の中に残ってると何とも言えない生臭さの元になっちまう。だから下茹でして蒟蒻の中に残っている凝固剤の成分を取り除いてるってワケさ。本当は塩揉みもしたいんだが……まぁ糸蒟蒻なら茹でる位で大丈夫だろ、ウン。

「ふ~ん……下拵えから大変なのねぇ料理って」

「陽炎はあんまりしねぇのか?料理」

「この鎮守府の環境でやりたいと思った事は無いわね……必要性を感じないし」

 おいおい、自炊くらい出来ないと独り暮らしとか出来ねぇぞ?

「えー?そこは司令が終身雇用してよ!」

「バカ言え、今の戦況がどうなるかもわかんねぇんだ。自活出来る位の練習はしとけ」

 糸蒟蒻をゆがいたらザルにあけて水気を切っておく。お次はタラコだ。皮を外して中身だけを取り分けておく。

 鍋にごま油を引いて熱したら、水気を切って食べやすい長さに切った糸蒟蒻を入れて煎っていく。水気が飛んで、うっすら色が変わってきたらタラコ、酒、醤油、実山椒を加えて更に炒める。タラコに火が通って白くなったら完成だ。

「ん、おいし」

「お酒が欲しくなる味だわぁ~♪」

 中々好評のようだ……ってオイ浜風、そんなラーメン食うみたいにズルズル啜るんじゃねえよはしたない。そういうのはチビチビとつまみながら楽しむモンだぞ?ったく。

「そらよ、1本目はサービスだ」

 そう言って俺は予め燗を付けておいた徳利を5本出してやる。

「流石提督、サービスいいですね♪」

 高雄は早速蒟蒻をつまみながら徳利の中の熱燗をお猪口に注ぎ、くいっと一息で飲み干した。そしてブハーッと息を吐き出す。……何ともオッサンくさい。見た目は美人なんだけどなぁ、そういう所が残念なんだよな。男でも出来れば足柄みたいに変わりそうな雰囲気はあるんだが。

 さて、お次はどうするかな……

「ねぇ提督、ワインに合う蒟蒻料理……なんて出来るかしらぁ?」

 タラコ蒟蒻を完食した愛宕からのリクエストだ。基本蒟蒻ってのは味がないからな、味付けや料理の仕方次第で如何様にも姿を変える。

「勿論、任せときな」

《蒟蒻のソテー~ガーリックレモンバター醤油味~》※分量2人前

・蒟蒻:1枚(300g)

・にんにく:1片

・オリーブオイル:大さじ1.5

・唐辛子の輪切り:1/2本分

・バター:15g

・醤油:小さじ2

・レモン汁:小さじ2

※付け合わせにルッコラや櫛切りレモンをお好みで。


 さて、作っていくぞ。蒟蒻は塩揉みして5分程置き、流水で塩を洗い流したら水気を拭き取り、薄切りにする。薄切りにしたら格子状に切れ込みを入れて味を染みやすくする。隠し包丁が面倒なら、フォークでブスブスやって穴だらけにしてもいいぞ……見た目は良くないがな。

 フライパンにオリーブオイルを熱し、みじん切りにしたにんにくと唐辛子の輪切りを炒めて香りを出す。香りが出てきたら蒟蒻をフライパンに並べ、こんがりと焼き色を付ける。

 焼き色が付いたらバター、醤油、レモン汁を加えてよく絡め、皿に盛り付ける。フライパンに残ったソースもかけて、付け合わせの野菜とレモンを添えたら出来上がりだ。 
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