真田十勇士
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巻ノ百四 伊予へその十六
「何とか悪い様にはならぬことをな」
「考えてですな」
「そして手を打つ」
「それがよいですな」
「今は」
「うむ、そうじゃ」
その通りだというのだった、家臣達に。
「茶々様を大御所様のご正室に出来ずともな」
「それが無理でもですな」
「何とかしなければなりませぬな」
「豊臣家を残す為に」
「我等も」
「何かあればと思い」
そしてというのだ。
「わしはこの熊本城にお拾様をお迎えす用意もしておる」
「特別に間をもうけ」
「守り切る備えもしております」
「何かあれば逃げられる様にも」
「整えておりますな」
「この城は薩摩への備えじゃがな」
つまり島津家へのだ。
「島津家も決して豊臣家は嫌いではない」
「だからですな」
「いざという時はですな」
「薩摩にも逃れてもらうことも出来ますな」
「お拾様を」
「それは出来る、しかしな」
それでもというのだ。
「それは最後の最後じゃ」
「何とかですな」
「お拾様を大名にしたままですな」
「残すことですな」
「それが大事ですな」
「それを目指す、その為に出来ることは全てする」
加藤はこう決めていた、それは秀吉にそれこそ子供の頃から育ててもらい万恩を感じているが故にだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「天下の動きを見据えてです」
「お拾様をお助けしましょう」
「全てを賭けて」
「大御所様のお考えも読んでな」
そしてというのだ、そうした話を熊本城でしていた。
豊臣子飼いの者達も天下に残っていて豊臣家の行く末を案じどうにかせねばと思っていた、しかしそれをどう見てどう捉えるかはそれぞれだった。それが為に天下は揺れるものが残っていた。
巻ノ百四 完
2017・4・26
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