英雄伝説~灰の軌跡~
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第33話
同日、20:40―――
~パンダグリュエル・パーティーホール~
「うふふ、エリゼお姉さんからの伝言を聞いてやってきたけど……せっかく用意した考える時間を大幅に短縮して答えを出すなんて、さすがはⅦ組のみんなね♪」
部屋に入って来て口を開いたレンの自分達に対する評価を聞いたアリサ達は冷や汗をかき
「よく、そんな事が言えるよね~。」
「エリゼがわたし達が答えを既に出している事すらも、そっちも予想して夕食の時間を指定したって言っていたんだから、あまりにも白々しい嘘だね。」
ミリアムとフィーはそれぞれジト目で反論した。
「クスクス……レンが予想したのはあくまで”可能性”よ。話は変わるけど、どうだったかしら?”あの”リフィアお姉様の手綱を握る事ができる専属侍女長であるエリゼお姉さんが作った夕食は。」
「エ、エリゼさんがリフィア殿下の手綱を握っているって………」
「とてもそんな風には見えませんでしたよねぇ?」
「そうね……でも、”あの”リフィア殿下についていけているんだから、ただのメイドじゃないでしょうね、彼女は。」
レンの問いかけを聞き、仲間達と共に再び冷や汗をかいたアリサは困惑の表情で呟き、苦笑しているアネラスの言葉に頷いたシェラザードは静かな表情で呟いた。
「ハハ……私はエリゼ君とリフィア殿下のやり取りを見る機会があったが………エリゼ君とリフィア殿下の関係は私とミュラー君の関係と同じといえば、シェラ君とアネラス君ならわかるだろうね♪」
「ええっ!?エリゼちゃんとリフィア殿下の関係がオ、オリヴァルト殿下とミュラー少佐の関係と同じって事は………」
「なるほどね……今の話を聞いて、大体どんな感じなのか想像できたわ………」
苦笑した後笑顔で答えたオリヴァルト皇子の話を聞いてある事を察したアネラスは驚き、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた。
「クスクス……リフィアお姉様とエリゼお姉さんの関係は中々愉快な関係だけど……皇族―――それも帝位継承権第1位の皇女であるリフィアお姉様の専属侍女長であるエリゼお姉さんはああ見えて、メンフィル帝国に仕えている執事やメイド達の中でもトップクラスの地位なのよ?」
「ええっ!?エリゼさんが!?」
「まあ、エリゼ殿はシルヴァン皇帝陛下の跡継ぎであられるリフィア皇女殿下御付きの侍女長なのだから、エリゼ殿がメンフィル帝国に仕えている使用人達の中でも相当上の地位に就いている事はおかしくはないが……」
レンの説明を聞いたエマは驚き、ラウラは戸惑いの表情で呟いた。
「うふふ、そこに付け加えておくと、メンフィルの皇族の専属侍女長もしくは執事長はいざという時仕えている皇族の護衛も務める事になるから、軍の階級である”少佐”と同等の地位も与えられているのよ。」
「ハアッ!?」
「ええっ!?しょ、”少佐”って事はエリゼさんはナイトハルト少佐と同じ軍位も持っているんですか!?」
「ニシシ、ナイトハルト少佐をからかう口実ができたね~♪」
「ミリアムちゃん……お願いしますから、一致団結しなければならないこの状況に不和が生じるような発言をしないでください……」
「というかメイドや執事が皇族の護衛まで務めるなんて、普通に考えたらありえないぞ……」
「まあ、オレ達の傍にも護衛も務める事ができるメイドの人はいるが………」
「フン、薄々察してはいたが大方そこの第三学生寮の管理人もイリーナ会長の秘書だけでなく、護衛も兼任しているのだろうな。」
「ふふっ、主を守る事はメイドとして当然ですわ♪」
エリゼが”少佐”の軍位も持って言える事を知ったサラとトワは驚き、悪戯を思いついたような笑顔を浮かべているミリアムにクレア大尉は呆れた表情で指摘し、疲れた表情で呟いたトヴァルに続くように答えたガイウスは苦笑しながらシャロンを見つめ、ジト目で見つめてきたユーシスの言葉に対して笑顔で答えたシャロンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいた。
「うふふ、シャロンお姉さんの言う事も一理あるわね♪実際エリゼお姉さんを含めたメンフィル皇族の専属侍女並びに執事は全員戦闘能力がある事も必須だから、レン達―――マーシルン皇家御付きの侍女や執事はみんな、戦えるわよ?」
「ええっ!?という事はメンフィル帝国にとっては侍女でありながら、戦闘能力もあるエリゼさんだけが侍女として特別な存在ではないのですか?」
レンの説明を聞いて驚いたアルフィン皇女はレンに訊ね
「ええ。例えばママ―――ペテレーネ・セラ神官長もパパの専属侍女長だし、イリーナママ―――パパの正妃であるイリーナ・マーシルン皇妃の専属侍女長なんか、とんでもない達人クラスで戦闘能力で言えばファーミシルスお姉さんとも互角か、それ以上なのよ?」
「な――――」
「ほえっ!?”闇の聖女”って、”英雄王”のメイド長でもあったの~!?」
「そ、それにファ、”ファーミシルス”って確か……!」
「……メンフィルの”大将軍”にして”空の覇者”の異名を持ち、実力は”英雄王”に次ぐと言われているメンフィルの武将。そして……団長を討ち取った人物。」
「フィー………」
「武勇でその名をゼムリア大陸全土に轟かせているファーミシルス大将軍と互角か、それ以上でもあるのだから、その人物も相当な使い手なのであろうな。」
レンの話を聞いたクレア大尉は驚きのあまり絶句し、ミリアムは信じられない表情で声を上げ、ある人物の名前を聞いたエリオットは信じられない表情をし、静かな表情で呟いたフィーの言葉を聞いたラウラは心配そうな表情でフィーを見つめ、アルゼイド子爵は静かな表情で呟いた。
「ちなみにエリゼお姉さんはイリーナママの専属侍女長であるエクリア・フェミリンスお姉さんの愛弟子よ♪」
「エクリア・”フェミリンス”だと………?(そういや、エステル達の連れに”フェミリンス”って名前の異世界の女神がいるらしいが……何か関係があるのか?)」
「ハハ、よりにもよって、あのエクリアさんの愛弟子か。エクリアさんは”影の国”に巻き込まれたメンバーの中でも間違いなくトップクラスの実力の持ち主だったし、彼女の経歴を考えれば人を育てる事も専門だったろうだから、エリゼ君がそこまで強くなった事にも納得できる話だね。」
レンの答えを聞いてある事に気づいたトヴァルが考え込んでいる中、驚愕の事実を知ったオリヴァルト皇子は苦笑していた。
「オリヴァルト殿下はそのエクリアさんという人物の事を知っているのですか?」
「ああ。元はメンフィルに敵対していた大国の姫君にして将軍だった上色々と深い事情があって、リウイ陛下達とは因縁の間柄だったのだが……国がメンフィルに滅ぼされた後先程話に出て来た”神殺し”という存在に仕える事になって、更に私達が巻き込まれた”影の国事件”にも巻き込まれ、その時にリウイ陛下達と和解する出来事があって、”影の国事件”が解決した後”神殺し”の配慮によってリウイ陛下達の下に向かう事は知っていたのだが……まさかイリーナ皇妃の専属侍女長を務めていたとは、今初めて知ったよ。」
ガイウスの質問に対して答えたオリヴァルト皇子の話を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「メンフィルと敵対してた国の姫君だった上将軍でもあったのに、どうしてリウイ陛下達と和解して、メンフィルに仕えているんだろうね……?」
「とてつもなく波瀾万丈な人生である事は間違いないでしょうね。」
「そうね……それに”神殺し”という凄まじい存在に仕えているのだから、恐らくその人は”人でありながら人の身を超えた存在”なのでしょうね……」
「というかその人の経歴が色々な意味で非常識で信じられないんだが……」
困惑の表情で呟いたジョルジュの疑問にセリーヌは疲れた表情で答え、エマは真剣な表情で考え込み、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「うふふ、まあそう言う訳だから、メンフィル皇族専属の使用人達はメンフィル皇族にとっても大切な存在だから、”相応の待遇”―――例えば毎月のお給料もとんでもない高給にしてあげているのよ?」
「”とんでもない高給”って言っているけど、具体的には幾ら?」
「フィ、フィーちゃん。」
レンの話を聞いてある事を質問したフィーの質問内容を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「メンフィル皇族専属侍女長並びに執事長の給料は毎月80万ミラで、年1回にある特別賞与は400万ミラよ。」
「ま、毎月80万ミラに加えてボーナスが400万ミラ!?ラインフォルトグループでもそんな高給取りは母様くらいですよ!?」
「一月が80万ミラだったら、ボーナスも含めれば1年で1500万ミラ近くを稼いでいるという事になるよね……?」
「1500万ミラもあったら、家も普通に買える値段だぞ……」
レンの答えを聞いたアリサは驚き、トワは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で呟いた。
「う、羨ましい……!あたしの給料の3倍以上はあるじゃない!しかもボーナスは400万ってもらいすぎよ!あたしでも毎月25万ミラでボーナスは70万ミラなのに……!」
「サラの場合はむしろ貰いすぎ。」
「全くだな。給料泥棒と言ってもおかしくないくらい仕事をサボっているからな。」
「ふふっ、それどころか今までの問題行動によって”減給”がなかった事実の方が不思議なくらいかと思いますわ♪」
「なんですってぇ~?」
悔しがっている様子の自分に対して答えたフィーとユーシス、シャロンの指摘を聞いたサラはジト目になって3人を睨み
「というかサラの場合、大方飲み代で全て消えていっているんでしょうね……」
「え、えっと……シェラ先輩がそれを言いますか?」
「あたしより遥かに酒好きなあんたにだけはそれを言われる筋合いはないわよ!」
呆れた表情で指摘したシェラザードの指摘を聞いたアネラスが冷や汗をかいている中、サラは反論し、その様子にアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハハ……エリゼ君の例を考えれば、我々エレボニアもメンフィルを見習って、皇族御付きの使用人達の待遇を良くすると同時に皇族御付きの使用人に求められる条件を上げたいけど、エレボニアでは難しいだろうね……」
「はい……帝国貴族の方達が知れば、猛反発するでしょうし……本来エレボニアでアルノール皇家に対して最も忠誠が篤くあるべきであった”四大名門”が反旗を翻したのですから、わたくし達はともかく、周りの方々はメンフィル帝国のように皇族御付きの使用人達をそこまで信用する事は難しいでしょうね……」
「殿下……」
「……ッ……!」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の意見にアルフィン皇女は複雑そうな表情で同意し、二人の様子をラウラは心配そうな表情で見つめ、ユーシスは辛そうな表情で唇を噛みしめた。
「―――さてと。話を戻すけど……………――――Ⅶ組のみんなはレン達”特務部隊”の指揮下に入る事に決めたようだから、改めてよろしくね♪」
「へ………」
「どうしてその事までレン皇女殿下はご存知なんですか……?」
「レン皇女殿下に伝言を頼んだエリゼさんにもオレ達がどのような”答え”を出したかについては教えていないはずだが……」
レンが自分達が決めた答えを既に知っている事を聞いたその場にいる全員が驚いている中アリサは呆けた声を出し、ジョルジュとガイウスは不思議そうな表情で疑問を口にした。
「―――レン皇女殿下がその事をご存知なのは恐らくはこの部屋に備え付けてある隠し防犯カメラの映像を見ていたかと。」
「もしくは盗聴器が仕掛けられていたかもしれませんね………」
「そういや、この部屋は元々貴族連合軍のVIP達が集まって会食する部屋らしいから、防犯カメラの一つや二つ、設置していてもおかしくねぇな……」
シャロンとクレア大尉の推測を聞いたトヴァルは疲れた表情で呟き
「うふふ、隠し防犯カメラを設置している事は否定しないけど……レンがみんなの答えを知った方法は防犯カメラや盗聴器の類じゃないわよ?」
「それじゃあ一体どんな方法で知ったんですか?」
レンの答えを聞いたトワは不思議そうな表情でレンに訊ねた。
「―――みんなの”記憶を読み取った”のよ。」
「”記憶を読み取る”、ですか………?」
「まさか魔術の類でそのような術があるのか?」
「い、いえ……私が知る限り、そのような魔術は存在していません………」
「異世界の魔術なら可能性はあるかもしれないけど………そもそも、それ以前に”殲滅天使”はこの部屋に入ってから今まで魔術の類は使っていないと思うわよ、レグラムで彼女が習得している魔術の一端を見せた時のように魔力の流れの変化も全然ないしね。」
「レグラムでレン皇女殿下が見せた魔術………”ガランシャール”を異空間から取り出した時の事か………」
レンの答えを聞いたアルフィン皇女が首を傾げている中、ユーシスに質問されたエマは困惑の表情で答え、静かな表情で答えたセリーヌの話を聞いたアルゼイド子爵はかつての出来事を思い出した。
「”記憶を読み取る”………――――!!まさかとは思うけど………クロスベルで事件を起こした”教団”の生き残り―――ヨアヒム・ギュンターのように数年前の事件で人体実験の被験者であるあんたも人の記憶を読み取れるって言うの!?」
「ええっ!?そ、それってどういう事なんですか!?」
サラの推測を聞いたアリサは驚きの声を上げた。
「半年前にクロスベルで騒動を起こした”D∴G教団”の生き残りであるヨアヒム・ギュンターは自らが改良を重ねた”教団”の薬物―――”グノーシス”を投与し続けていた事によって、人の記憶を読み取る事ができたとの事です。」
「ちなみにヨアヒムが記憶を読み取る事ができた事実がわかったのはヨアヒムを捕える為にヨアヒムがいる”教団”の拠点に突入したクロスベル警察と遊撃士の精鋭部隊で、そいつらがヨアヒムと対峙した時に自分達の記憶を読み取られたとの事だ。」
「薬物で人の記憶を読み取るなんて、非常識な……」
「それに自分にまで薬物を投与するなんて、その人は一体何を考えてそんな事をしたんだろうね……?」
クレア大尉とトヴァルの話を聞いたマキアスは疲れた表情で呟き、ジョルジュは不安そうな表情で考え込んでいた。
「うふふ、ロイドお兄さんやエステル達がヨアヒムを捕える為にヨアヒムがいる拠点―――”太陽の砦”に突入した時にレンもエステル達に加勢して、一緒にヨアヒムと対峙してね……その時にヨアヒムが見せたグノーシスによる能力の一部――――”人の記憶を読み取るという能力”もレンが持つ能力によって吸収して、レンも使えるようになったのよ♪」
「レ、レンちゃんが持つ能力って………」
「確か貴女の能力はあらゆる方面に関して天賦の才がある能力じゃなかったかしら?」
レンの説明を聞いたアネラスが不安そうな表情をしている中シェラザードは真剣な表情でレンに訊ねた。
「クスクス、そう言えばシェラお姉さん達にもレンの能力について正確な事は教えていなかったわね。既にみんなもレンが”D∴G教団”の人体実験を受けて生き残った数少ない被験者の一人で、その人体実験によってレンはあらゆる意味で”天才”の能力を持つことになった事も知っただろうけど……正確に言えば、それも間違いよ。レンが手に入れた能力……それは『あらゆる周囲の状況に対応できる天才』よ。」
「『あらゆる周囲の状況に対応できる天才』……も、もしかしてレン皇女殿下は本当の意味での”天才”なんですか……?」
「へえ?パパ達を除いてレンの本質を見抜くなんて、トワお姉さんが二人目よ。やっぱりレンが見込んだ通り、トワお姉さんも見所があるわね。そう、レンの本質はそこにある。あらゆる情報を取り込み、処理し、自らを含めた環境を適切に操作する……戦闘技術も、ハッキングも、用兵術や皇族としての礼儀作法も、人形の操作も、お茶会の作法も、全てはその本質に拠っていると言えるわ。だからどんな望みでもレンは叶えることができる。ううん、正確にはどうやったら世界にレンの望みを叶えさせればいいのかがわかる。それがレンの力そのものだから。」
トワの推測を聞いてトワに感心したレンは意味ありげな笑みを浮かべて自身の事を答え
「せ、”世界に自分の望みを叶えさせればいいのかがわかる”って……!」
「まさに”反則級”の能力だね。」
「ハハ、レン君がチートの塊である事は知っていたけど、どうやらその認識すらも甘かったようだね……」
「もはや人間とはとても思えない”本物の化物”ね。下手したら”英雄王”達よりも、あんたの方が恐ろしい存在なんじゃないのかしら?」
「セリーヌ、今の言葉、レン皇女殿下に対して失礼よ!すぐに謝って!申し訳ございません、レン皇女殿下……!」
レンの説明を聞いたアリサは信じられない表情をし、フィーは真剣な表情で呟き、オリヴァルト皇子は苦笑し、目を細めて呟いたセリーヌに叱咤したエマはレンに謝罪した。
「うふふ、レンは別に気にしていないからわざわざ謝る必要はないわよ?」
「……今のレン皇女殿下の話から判断すると、レン皇女殿下が教団の生き残りが持っていた能力である”記憶を読み取る能力”を吸収できた理由もまた、『あらゆる周囲の状況に対応できる天才』という能力によって、教団の生き残りの能力の情報を取り込んで処理し、自分の力としたという事なのでしょうか?」
「大正解♪さすが”剣聖”カシウス・ブライトと同じ”理”に到っている”光の剣匠”さんね♪ちなみにレンがヨアヒム・ギュンターから吸収した能力は記憶を読み取る能力と………―――この能力よ。」
アルゼイド子爵の推測に笑顔で答えたレンは魔人化をした。
「ヒッ……!?」
「こ、この凄まじい気当たりは……!?」
「な、何なの、あの姿は……!」
「なんて、凄まじい”風”だ……!?」
「あ、あの姿は”パンダグリュエル”での戦いの時に見せた姿ですわ……!」
「デ、”魔人化”……!」
「しかも自分の意志で”魔人化”ができる上正気を保っているなんてね……」
「という事はレン皇女殿下が”魔人化”の能力を得た理由はヨアヒム・ギュンターが持つ能力を吸収した事が原因だったのですか……」
「それって、要するに”殲滅天使”が出会った人達の分だけ、その人達の持つ能力もみんな”殲滅天使”が吸収して自分の力にするって事じゃん!」
魔人化したレンの姿を見たエリオットは思わず悲鳴を上げ、ラウラやアリサ、ガイウスは信じられない表情をし、アルフィン皇女とエマは驚きの声を上げ、セリーヌは目を細め、真剣な表情で呟いたクレア大尉に続くようにミリアムは声を上げた。
「滅茶苦茶過ぎんだろ……」
「ハハ、まさにチートの中のチートだね、レン君は。」
「ホントよね……エステルとは別の方向で”人外”ね。」
「へ~、それがレンちゃんの変身バージョンか~。うん、その姿はその姿で可愛いね♪」
「あれを”可愛い”と判断するなんて、あんたの”可愛い”基準は一体どうなっているのよ……」
トヴァルは疲れた表情で呟き、苦笑しているオリヴァルト皇子の言葉にシェラザードは疲れた表情で同意し、呑気な様子で魔人化したレンを”可愛い”と評価したアネラスの言葉を聞いたサラは呆れた表情で溜息を吐いた。
「うふふ、そう言う訳だからレンはⅦ組のみんなの記憶を読み取って、みんなが特務部隊の指揮下に入る事を決めた事を知ったって事よ♪この記憶を読み取る能力、実は結構便利なのよ?特に悪戯で使う時とかにね♪」
元の姿に戻って小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「い、悪戯の為に人の記憶を読み取るって……」
「い、一体どんな風に使うんだろう……?」
アリサはジト目でレンを見つめ、トワは不安そうな表情で呟いた。
「うふふ、そんなに気になるならその”悪戯”を見せてあげるわ。例えばトワお姉さん。トワお姉さんは身長や胸が全然成長しない事を実は気にしていて、士官学院に入学してからは毎朝牛乳を一瓶必ず飲んで、夜は―――――」
「ひゃあああああああっ!?な、なんでその事を……じゃなくて!レン皇女殿下が本当に人の記憶を読み取れることがわかりましたから、それ以上言うのは止めてください~!」
「あら、そう?じゃあ、次はアリサお姉さんね。アリサお姉さんがシャロンお姉さんにも必死に隠していてる秘密。それは子供の頃、誰にも見つからないようにこっそり魔法少女ごっこを嗜んでいた事。ちなみに魔法少女ごっこをしていた時自称していた名前はまじかる―――」
「キャアアアアアアアアアッ!?お願いしますから、それ以上いうのは止めてください~!というか、さっきの事と言い、何で私ばっかり例に出すんですか~!?」
レンにそれぞれ絶対に知られたくない自分達の過去を言われたアリサはトワのように悲鳴を上げた後レンを睨んで訊ね、その様子を見守っていたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「え?それは勿論アリサお姉さんがからかったら絶対面白い反応を見せてくれそうだからよ♪」
「ふふっ、さすがレン皇女殿下。お嬢様の事をよくわかっておりますわね♪ところで、後で私にだけお嬢様の”魔法少女ごっこ”についての詳細な説明をお聞きしてもよろしいでしょうか♪」
「全然よろしくないわよ!!もし、その事に関してレン皇女殿下に聞いたりしたら、絶対に許さないわよ、シャロン!」
悪びれもなく笑顔を浮かべて答えたレンの答えを聞いたシャロンは微笑んだ後興味ありげな表情でレンに話しかけ、シャロンの様子を見たアリサはシャロンを睨みつけて注意した。
「ハハ……アンがこの場にいなくて、本当によかったね……」
「アンゼリカが知れば、絶対にネタにして二人をからかいまくるでしょうね……」
ジョルジュは苦笑し、サラは呆れた表情で呟いた。
「そ、それよりも……まさか本当に人の記憶を読み取る事ができるなんて………」
「しかもこの世で一番習得したらダメな人物が習得してしまったようだね。」
エリオットは信じられない表情でレンを見つめ、フィーはジト目で呟いた。
「―――さてと。ちょっとした”息抜き”はこのくらいにして、本題に入らせてもらうわ。Ⅶ組のみんなやトワお姉さん達―――Ⅶ組に協力するトールズ士官学院の学院生達も”特務部隊”の指揮下に入る事に了承したと判断していいのね?」
「はい。改めてよろしくお願いします。」
話を戻したレンに問いかけられたトワはⅦ組やトールズ士官学院を代表して答え
「こちらこそよろしくね♪―――ちなみにオリビエお兄さん達はこれからどうするつもりなのかしら?」
「私達は最初に行う特務部隊とⅦ組による作戦を見守った後、艦を降りてそれぞれ内戦終結に向けての行動をする事にしたから、もう少しだけ君達に同行するよ。」
「その……特務部隊は最初はどのような作戦を行うのでしょうか?」
レンの問いかけにオリヴァルト皇子が答えた後、アルフィン皇女が質問をした。
「うふふ、それについては明日の朝、リィンお兄さん達とⅦ組のみんなが全員が揃った状態で特務部隊による内戦終結までの予定を伝えるから、明日の朝まで待っててもらうわ。それよりも先に、Ⅶ組のみんなには明日の朝までに慣れて欲しい事があるから、そっちを優先させてもらうわ。」
「オレ達に慣れて欲しい事……?それは一体どういう事なのだろうか?」
「それは………――――これらの事よ。」
ガイウスの疑問に答えたレンが指を鳴らすと異空間から様々な武具が現れてそれぞれアリサ達―――Ⅶ組所属の人物達の前に着地した。
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