八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二十三話 ハウステンボスから帰ってその五
「お渡しされたのです」
「そしてそれをですか」
「止様は将来のお子様に回されたのです」
「その子供が僕だったんですね」
「止様が高校生の時のことでした」
この頃というか中学生の時から遊び回っていた親父だったけれどだ。高校の時でもうカサノヴァだの好色一代男だの言われていたらしい。
「それは」
「結婚もしてなくて」
「そう言われまして」
「お小遣いを受け取らずですか」
「そうなりました」
「そして僕が受け取ったんですね」
何か親の何とかと思った、正直なところ。
「因果ですね」
「よい意味での」
「それになりますね」
「はい、止様の徳がです」
「今回のことを招いてくれたんですね」
「この旅行を」
「よくわかりました。ただ」
僕はソーセージを食べつつ言った、とにかくこのホテルのソーセージは美味しい。これだけでも満足出来る位だ。
「思わぬところからですね」
「止様の、ですね」
「行いが巡ってきますね」
「実際親の因果はです」
「いい意味でも悪い意味でも」
「巡ってくるものです」
「そうなんですね」
このことを知ってだ、僕はまた言った。
「現実として」
「そうです、いい因果もあれば」
「悪い因果もありますね」
「両方ありまして」
「親父はいい因果を渡してくれたんですね」
僕はしみじみとして言った。
「そういうことですね」
「はい、まさにですね」
「親父に感謝します」
僕は正直にこの気持ちを述べた。
「心から」
「よい親御さんを持たれますとそれだけで幸せです」
「それは言えますね」
僕も実感していることだ、これまで生きてきて。
「うちの親父は少なくとも悪い親じゃないです」
「私もそう思います」
「確かに破天荒ではありますけれど」
「義和様のことを思っておられる」
「いつもですからね」
このことは間違いない、何だかんだで今もよく連絡を取り合っている。
「そうした親父ですから」
「悪い方ではないです」
「決して」
僕はまた言った。
「それは確かです」
「それならです」
「まあいい親父ですね」
僕はこう言えた、今は。
「いや、本当に」
「そうですね」
「しかし高校の時にですか」
「そう言われていたのです」
「結婚の話も決まっていないのに」
親父には許嫁とかそうした人はいなかった、お袋とは恋愛結婚だった。とはいっても親父のあんまりもの女好きと遊び好きが祟ってある日急に家を出てそれきりだ。
「そんなこと言ってたんですね」
「凄いことですね」
「その場で貰ってればいいのに」
少なくとも僕はそうしている、お金にはあまり興味がないといっても数百万とか言われれば自然とそうなる。
「そうしなかったんですね」
「そうです」
「子供が生まれるかわからないのに」
「ご結婚もまだで」
「そんなことするなんて」
それでもだった、僕は思った。
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