蛇の血をひく日向の子とやりたい放題の剣客たち
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第06話 木ノ葉に流れる血の系譜
「マムシには、このゴーグルをプレゼントするのです」
「うん。ありがとうモミジ。似合うかな?」
「とてもよく似合うのです。そっちの方がバンダナ巻いてるよりもイイのです」
ある時、いつも明るくバカっぽいことをやっているモミジが、
今まで見たことがないくらいに落ち込んでいたので、
心配になってユリカに聞いてみたところ一族のうちはオビトが神無毘橋の戦いで戦死したとのことだった。
モミジは同じうちは一族の中でも面倒見のいいオビトに特に懐いていたそうだから、その悲しみも深かった。
オビトを殺した(と言っても実は生きてるのを知ってるけど)のは岩隠れの忍びだ。何だか……ごめん。
いや、僕のせいではないんだけど、父親が岩隠れの忍びだから微妙な気持ちになってしまう。
そんなモミジに同情して傍にいて励ましてたら僕が今まで以上に好かれてしまった。
「僕からは一族のマエン兄さんが世話してる奈良家の鹿の角」
「うわっ。丸薬にも使える希少な材料じゃん。ありがとう。カズガ」
「私からは本をプレゼントです」
「いつもの数独パズル?」
「違います! ハヤテさんや夕顔さんにも相談しましたからね」
「あはは。ごめん。それなら期待できるかな?」
木ノ葉隠れの里に来てから1年以上が過ぎた。
アカデミーにも溶け込んで同期の仲間から誕生日を祝ったりもしてもらえる。
こーいうのは素直に嬉しい。
年長のイルカさんたちはアカデミーを卒業して下忍になった。
忍者学校には薬師カブト、柳陰コカゲ、油女ムタなど一つ年下の子供たちが新たに入学してきた。
カブトは桔梗峠の戦いで生き残った敵の少年を木ノ葉の医療班長の上忍が引き取ったとされているが、
ダンゾウが孤児院のマザーを脅して連れて来たのを僕は(原作知識として)知っている。
しかしカブトがいつから大蛇丸の部下になったのかは(原作知識が曖昧で)分からない。
図書室でよく会うのだが、僕が大蛇丸の従甥っ子だからだろうか、どうも関心を持たれてる気がする。
大蛇丸といえば第三次忍界大戦は終結に向かっていて次の火影候補と一部では噂されている。
三代目火影の猿飛ヒルゼンが砂隠れの里との同盟による援助の負担や
岩隠れの里との停戦の条件で譲歩したことなど大戦の責任を取って辞任することは決定事項だそうだ。
「マムシはわたしが火影に相応しいと思うかしら?」
先日も大蛇丸から蛇術を習っている最中に問いかけられた。
大蛇丸は人体実験を伴う禁術の研究などについて僕に教えることはないが、
今や従甥っ子の前で余所行きのネコをかぶるのは疲れたのか止めている。
「うーん。里の統治者としては向いてるかもしれませんが、木ノ葉の火影としては向いてないかもしれませんね」
「あら? 聞き捨てならないわね。どういうこと?」
「だって火影になったら里のことを考えるのに精一杯で自分の研究ができなくなるじゃないですか。
従伯父さんは忍者とは忍術を扱う者を示す言葉だから、忍術の研究が一番重要だって僕に言いましたよね?」
「言ったかしら? アナタは日向の宗家に対しても家を守る責任があって大変だって日頃から言ってるわよね」
「そーですよ。たしかに分家は宗家に生殺与奪は握られてますが気は楽です。
宗家の当主がよほどの暴君でもない限り、めんどくさい仕事を代りにやってくれてるって思えば許せます」
「里や家を自分の為に利用するとかは考えないの?」
「え? だって既存の里や家には組織のしがらみや代々の掟とかがありますよね?
それなら自分で一から里をつくったり、新たな家を建てた方が楽じゃないですか」
「面白い子ね。たしかにその方が合理的かもしれないわね。その発想は無かったわ」
「でしょ? ダンゾウとか火影になれなくったけど、ご意見番の地位を利用して好き勝手やってるみたじゃいないですか」
「マムシ、相手を選んで喋らないと、そのウチ消されるわよ」
「だってアイツは日向家には流石に手を出してきませんが、外出中はずっと暗部の根に僕を監視させてるんですよ
今は良いですけど、将来デートか行くような年齢になっても着いてくるんですかアイツら?」
「ホント早熟(ませ)たガキね。まァ、アナタは日向の白眼に、赤一族の血継限界、そして白蛇の血をひいてるからね」
「前の二つは分かりますが、蛇一族の血も希少なんですか?」
「たしかに蛇一族はかぐや一族や雪一族のように血筋が途絶えかけてるという意味では希少ね」
「でも蛇の秘伝忍術はありますが、かぐや一族や雪一族のような特別な血継限界はありませんよね?」
「そうね。でもアナタは白蛇の血が強い。再生能力については説明したわよね?」
「白蛇は脱皮し再生する。白蛇の血は再生の力だと聞きました」
「そう。その血が強いアナタはチャクラによって肉体の再生を容易に行うことができるわ」
「再生の力が貴重だと?」
「少し違うわね。せっかくだから、さっきアナタが言ってた里の“しがらみ”も含めた血の話をしましょう」
「同じ一族でも血継限界が発現するものとしないものがいる。それは知ってるわよね?」
「はい。日向一族でも必ず白眼の子が生まれるわけではないと聞いてます」
「そうよ。ただし、うちは一族の者が写輪眼の発現する可能性に比べれば、
日向一族で白眼を持って生まれてくる者の可能性はかなり高いわね」
「たしかにそうですね」
「血継限界が発現や遺伝についてはまだ何もわかってないに等しい状態よ。
古い一族の血ほど“濃い”と言われてはいるわ」
「つまり白眼が最古の血継限界と言われるのはその発現率の高さ故と?」
「そうね。そして濃い血は、別の濃い血と交わり難いと言われてるの」
「なるほど。うちは一族と日向一族の間で婚姻がないのはそのためですか?」
「そうよ。アナタのように血が混ざることで両方の血継限界が発現するというのは極めて稀なの
それどころか濃い血と濃い血の交わりは互いを駄目にするとさえ言われているわ」
だから、うちは一族と千手一族が木ノ葉隠れの里を作った際も血縁で相互に深く結ばれたりしなかったのか
「血継限界を守ろうとする一族ほど血の管理に気を使っていると」
「そういうことね。例えば千手一族は血を薄めて失敗したと言われているわ」
「初代様の木遁秘術は今や一族に受け継がれていませんもんね」
「初代様も一族の血が薄まるのを防ぐために、うずまき一族から妻を迎え入れたのでしょうが――」
「初代様の妻は九尾の人柱力と聞きましたが?」
「たしかにうずまき一族は封印術の器としても優れているのは認めるわ。けど、それは後付けね」
「どういうことですか?」
「濃い血を残しやすい一族がいるのよ。うずまき一族がそうだし、私たちの蛇一族もそうよ」
「他の血よりも、濃い血継限界を残しやすい一族ですか?」
「そう。そういう血はね。婚姻の贄として大切にされるの。
例えば木ノ葉の里ができて一国一里制度が広がり忍界大戦が始まった中で、
うずまき一族は娘を千手一族に差し出し婚姻を結ぶことでその庇護下に入った」
「なるほど。そういう“しがらみ”があるんですね」
「そう。アナタの祖父母、私の叔母だってそうよ。
蛇一族だって忍界大戦で里の庇護なしで生き残れるような大きな一族じゃなかったの。
叔母が日向一族に嫁ぐことによって蛇一族は木ノ葉の里に迎え入れて貰えることができた」
ちょっとため息しかでない。
漫画『NARUTO-ナルト-』だと割と自由恋愛結婚してるイメージあるけど、
初期の忍界大戦において里や一族の力関係による政略結婚は当たり前だったのか。
「猿飛一族だってそうよ」
「猿飛一族“も”ですか? あの一族の血継限界とか聞きませんけど」
「里の“しがらみ”の方よ。猿飛一族が猪鹿蝶の三家と繋がりが深いことは知ってるわね?」
「はい。聞いてます」
「猪鹿蝶の三家は古くから一族同士で交流があり親しくしていたらしいけど、
血の交わりによって一族の結束が弱まったり、秘伝の伝承が途絶えるのを互いに恐れたわ。
そこで猿飛一族を仲介し血を交わらせることで四家の結束を高めたのよ」
「猿飛一族の娘が猪鹿蝶に嫁入りし、猪鹿蝶の娘は猿飛に嫁入りする?」
「そう。そのことで猪鹿蝶は血を直に交わらせることなく婚姻を深めることができるというわけね」
「木ノ葉の里に血による交わりの歴史ありですね」
「そういうことよ。里ができて世代を重ねて今や血の系譜が薄まりつつあるにしてもね。
わかったかしら“アナタの血”がダンゾウの根に監視される理由が」
「よくわかりました。ところで従伯父さんは僕の血は欲しくないんですか?」
「そうね。欲しい気持ちが無いと言えば嘘になるわね。
それでも日向の一族を敵に回してまで欲しいとは思わないわ。
私にとっては蛇一族の可愛い従甥っ子でもあるわけだし?」
「ありがとうございます。そう言ってもらえてホッとしました」
「術の研究にかまけて子孫を残していない直系の私が言うのも何だけど、その血は大切になさい」
僕の中で血継限界の力は、血のつながりよりも神様の転生特典という意識が強くて
このときの大蛇丸の大切な話を思い出したのは、ずっと後になって――、
うちはイタチに指摘されたときのことだった。
後書き
木ノ葉隠れの里を流れる血の系譜については捏造設定というか独自解釈かな?
二次創作でオリ主やってそうな、うちは一族と千手一族の愛の結晶とか
うちは一族と日向一族のハイブリットとかが原作でいない理由を考察してみました。
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