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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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787部分:第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその二


第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその二

「それで私が任じられたのでしてよ」
「牧は前からいたぞ!」
 公孫賛も必死だ。
「私だ、この公孫賛だ!」
「だから誰なのですか?」
「貴女の名前なのはわかりますけれど」
 相変わらずの調子の軍師二人である。彼女達も怪訝な顔になっている。
「幽州は以前烏丸討伐の時にも入りましたけれど」
「劉備さんがいましたね」
「そうそう、劉備さん達がね」
「いい奴等だよな」
 顔良と文醜は軍師二人に顔を向けて応えた。
「あの人徐州の牧になったのよね」
「凄い出世だよな」
「ですが劉備さんには相応しい地位ですわね」
 袁紹も言う。劉備については彼女も笑みを浮かべて話す。
「牧も」
「そうですね。優れた人物は必ず世に出ます」
「ですから牧になられたのも当然です」
 田豊と沮授も主の言葉に賛同して述べる。
「あの方には優れた臣が揃っていますし」
「若しかすると牧以上の方になられるかも」
 それ以上の人物だというのである。劉備については彼女達もよく知っている。そのうえ実に好意的で高い評価も与えていた。
「末が楽しみですね」
「まことに」
「だから桃香は知っていて何故私を知らない!?」
 公孫賛はいい加減苛立ってきていた。
「私がだ。幽州のだな」
「あの、だから幽州には」
 審配も彼女に言ってきた。
「牧は本当に誰も」
「いたんだ!何故誰もそれを知らない!」
「麗羽様、どうされますか?」
「ここは」
 軍師二人はラチが明かないと判断してだ。袁紹に問うた。
「この方は」
「どうされますか?」
「見たところ無能ではありませんわね」
 袁紹は公孫賛の素質は見抜いた。
「それに品性も卑しくはありませんわね」
「ではここは」
「用いられますか」
「そうですわね。悪くありませんわね」
 こう判断してだ。そのうえで公孫賛にあらためて声をかけた。
「そこの貴女。名前は確か」
「だから公孫賛だ!」
 抗議めいた口調で袁紹に言い返す。
「いい加減覚えてくれ!」
「それでどうしますの?私の配下になるのなら歓迎しますけれど」
「だからどうしてそんな話になるんだ。だから私は幽州の牧だ」
「ではお嫌ですの?」
「そうした問題ではない!私はだ」
「あの、我が陣営に加わるつもりはないみたいです」
「そのつもりはないようですが」
 ここでまた主に言う田豊と沮授だった。
「どうされますか、それでは」
「一体」
「仕方ありませんわね。それではですわ」
 袁紹も眉を顰めさせていささか残念な顔になってだ。こう田豊達に対して述べた。
「そちらの何とかさんに路銀と食事を。そうしてから見送りなさい」
「わかりました」
「じゃああんた、一緒に食おうな」
「だからどうして皆私のことを知らないのだ!?」
 公孫賛は顔良と文醜のエスコートを受けながらまだ言う。
「ましてや袁紹!御前何度私に会った!」
「初対面ですわよ」
 本気で言う袁紹だった。
「いえ、本当に」
「そうですよね。本当に誰なんでしょうか」
 最後に審配が言う。かくして公孫賛は袁紹陣営の誰からも忘れられ覚えてもらえないまま。止むを得なく袁紹の領地を後にした。そうして次に向かったのは。
 曹操に対してだ。一連の自分自身に起こったことを話していた。
「だからあいつは酷いんだ!勝手に幽州の牧になったうえに私のことを全く覚えていないんだ!曹操、このことについてどう思う!」
「あの娘らしいわね」
 曹操は玉座に座りながら左手を拳にしてそれで頭を支えながら述べた。
 
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