英雄伝説~西風の絶剣~
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第22話 D∴G教団壊滅作戦 後編
side:ガイ
アリオスたちと別れた俺とセルゲイさんは襲ってくる教団の戦闘員たちと戦いながら捕らわれた子供たちの救出の為にロッジの奥を進んでいた。
「けっこう奥まで来ましたね」
「ああ、しかしこのロッジ中々の広さだな。これだけ探してもまだ一人も見つからないとはな」
「早く保護しないと……急ぎましょう」
「そうだな」
俺たちは子供を探しながらロッジを進んでいるが今だ一人も見つかっていない。どこか一纏めに監禁されているのかそれとも……
(いや不吉な事は考えてはいけない、きっと生きている!)
俺は一瞬頭に過った不吉な考えを消してロッジを進んでいく。その途中に大きな血のこびりついた扉を発見した。
「こりゃまた凄い量の血だな……奴ら一体どれだけの犠牲を出したんだ?」
「……中に入りましょう、セルゲイさん」
「俺ら二人だけでか?アリオスたちも合流してからの方が……」
「いえ、それだと遅くなってしまう、もし生き残った子がいるなら早く助けてあげたいんです」
「……分かった。少し危険だがお前の言う通り生存者がいたら手遅れになってしまうかもしれん。唯注意はしろよ」
「はい、開けますね」
俺たちは左右の扉に張り付きタイミングをうかがう、そしてセルゲイさんの合図で扉を開けて一気に突入した。武器を構えて中に入ると教団のローブを着た男が水色の髪の少女を羽交い絞めにしていた。
「動くな!警察だ!」
「ぐっ、もう来やがったのか!」
「その子をどうするつもりだ!その手を離すんだ!」
「黙れ!てめえらみてえな連中に捕まるくらいならこのガキも道連れにしてやる!」
「…う…あ…」
羽交い絞めにされた少女は苦しそうに声を上げる。何とか助け出したいが相手は刃物を少女に突きつけている為うかつに動けないでいた。どうすれば……
ズガアアァアァァァンッ!!!
その時だった。突然強い揺れがロッジに起こり内部が大きく揺れる。
「な、何が起きたんだ!?」
男も想定外の事だったのか動揺していた。これはチャンスだ!
「はあっ!」
「がはぁっ!?」
男に隙が出来た瞬間俺は一気に男との間合いを詰めてトンファーで男を殴り倒した。
「ふう、何とかなったか……君、もう大丈夫だよ」
「あ、貴方は…?奴らの仲間じゃないの?」
「俺は君たちを助けに来たんだ、安心してくれ」
俺がそういうと少女は泣きながら抱き着いてきた。
「怖かった……毎日毎日酷い事されて……どうにかなってしまいそうだった……」
「可哀想に……だがもう大丈夫だ。君に酷い事をする奴らはもういない」
「良かった……」
少女は安堵したのか眠ってしまった。
「ガイ、お前はその子を連れて外に出ろ。早く病院まで連れて行ってやらないと危ないぞ」
「セルゲイさんはどうするんです?」
「俺は他に生存者がいないか探してみる」
「分かりました。こちらはお願いします」
俺はそう言って少女を抱えてロッジの外を目指して走る。急がないと……!
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side:ルトガー
イルメダを捕らえた俺たちは道中に倒れた教団の戦闘員も連れて外に向かっていた。だが数が多い為何回も往復しないといけなさそうだ。
「ガイたちは大丈夫だろうか?心配だな」
「リィンとフィーをあちらに向かわせるか?」
「そうだな、二人が戻ってきたらガイたちの援護に行かせるか」
「……うぅっ……」
俺たちがそんなことを話しているとイルメダが目を覚ましたのか朦朧としながら声を発した。
「よお、御目覚めか?」
「こ、ここは……私は一体……?」
「ここはロッジの外だ。お前はこれからブタ箱にぶち込まれて一生を牢屋で過ごすことになるだろうぜ」
「そうか……私は負けたのか……ふふっ、どうやらここまでのようね……」
あん?えらく潔いじゃねえか、何か企んでるように見えるが……
「意外と潔く負けを認めたな?」
「どうせ教団もお終いだしあの方にも見放されたはず……もうどうでもいいわ……」
「あの方……?そいつは誰だ」
「私を救ってくれた方よ……この腐った世界で私を導いてくれたたった一人の方……」
「そうか、まあそいつもとっくに捕まってるんだろうし牢屋で会えるかもしれんぞ?」
「……ふふっ、おめでたいわね」
「あん?」
さっきから何か違和感を感じる、そもそもあれだけの狂った実験をしてきたこいつらがこんな簡単に諦めるものか?
「団長!」
「リィンか、フィーはどうした?」
「そ、それが大変なんだ!倒れていた教団の戦闘員たちが次々に血を吐いて…!」
「何だと……まさかッ!?」
俺はイルメダを見るとこいつも口から血を吐いていた。
「てめえら、まさか毒を!?」
「言ったでしょ、私たちはもうお終いだって……お前らに裁かれるくらいなら自ら死を選ぶわ……がふっ!?」
イルメダは更に大量の血を口から出した。くそっ、何で気が付かなかったんだ!
「リィン、アーツで毒を解除するんだ!」
「それがフィーがそれを実行したんだけど効果がないんだ!」
「効果がない?」
「無駄よ……この毒は回るのが遅い代わりに強力で身体中に流れたら最後治す術はない……」
こいつら気を失う前に毒を飲んでたってのか!?最初から死ぬつもりで……ふざけんじゃねえよ!
「てめえ、ここまで悪逆非道をしてきて最後は勝手に死ぬだと!?人をおちょくるのもいい加減にしやがれ!」
これじゃあ死んでいった子供たちとその親が報われねえじゃねえか……
「ざまぁみなさい……最後に勝つのは私たちよ……」
憎々しく不敵に笑うイルメダ、一瞬切り殺してやろうかと思ったがそれよりも大事な事を思い出して踏みとどまる。
「おい、どうせ死ぬなら一つ教えてくれ。レンって子はどこにいる?」
「レン?知らないわね……」
「とぼけるんじゃねえ!お前らのロッジの一つにずっと昔に壊滅したのがあるだろ、そこにいた女の子だ!」
「壊滅したロッジ……そうか、そこの子供は実験番号62番だったな……ならその傍にいた少女……46番のことを言ってるのか……」
実験番号……リィンの事か。子供を道具扱いとはな。
「そうだ。その女の子はどこにいるかって聞いてるんだ」
「……知らないわよ。そもそも楽園が壊滅して生き残ったのはあの方とその側近だけ……その二人はあの方のお気に入りだったからねえ……私も探したわ。でも少女は見つからなかった……そこの子供にはあんたがいたから手が出せなかったし本当についてないわね……」
「……そうか」
嘘をついてる可能性もあるがこいつの話ではレンって子は教団にはいないらしい。となると今どこにいるかは分からねえって事か。
「リィン、そのだな……」
「大丈夫だよ、団長」
俺がリィンに何か声をかけようとしたがリィンは首を横に振る。
「レンは生きている、あの子が簡単に死ぬ訳がない。少なくとも自分の目で見るまでは何年かかろうとも探し出して見せるさ」
……どうやらいらない心配をしちまったようだな。こいつが覚悟を決めたなら俺も協力してやるだけだ。
「…どうやら毒が完全に回ってきたようね……ああ……ヨ…ヒ…さ……ま……いつ…まで…も……お慕い……して……い……ま……」
……イルメダは何かを呟こうとしたが最後まで言えずに絶命した。
「……やるせねえな、これが世間を騒がせた教団の最後かよ……」
その後俺たちはガイが連れてきた生存者の女の子を連れて病院に向かった。D∴G教団はこの日をもってして壊滅した。
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sideリィン
D∴G教団との戦いが終わって半年が過ぎ僕とフィーは今クロスベルにいる。団長達は事件の後始末をしているためこの半年は少ししか会っていない。僕も何か協力したかったが団長に今は休めと言われてベルハイムにお世話になっていた。
「それにしても最近警察とか遊撃士が凄く忙しそうだよなー」
「そうね、何か大きな事件でもあったのかしら。あ、フィー、口にパンクズがついてるわよ」
「ん、ありがとうウェンディ」
「フィーは体は小さいけどよく食べるんだな、なあリィン」
「まあ育ち盛りだからね」
僕とフィーはロイドとウェンディ、オスカーと公園で遊んでいた。フィーを二人に紹介したけどこの半年で大分仲良くなったようだ。オスカーの幼馴染の家が経営しているお店から買ってきたパンをフィーは美味しそうに食べているしウェンディも何かとフィーに世話をしている。可愛い妹分が出来て嬉しそうだ。
「ああ、ここにいたのか」
「あ、兄貴!」
僕たちが話しているとそこにガイさんがやってきた。因みにロイドはガイさんを兄貴と呼びだしたらしい。
「兄貴、仕事は終わったの?」
「ああ、一応一通りは区切りがついたからな。それよりロイド、実はお前に会わせたい子がいてな、ちょっと一緒に来てくれ」
「俺に?」
「ああ、あとリィンとフィーも来てくれないか?」
「僕たちもですか」
「わたしはいいよ」
「なら行こうか」
「はい」
僕たちはオスカーとウェンディにごめんねと謝りガイさんについていく。ガイさんが向かったのはベルハイムだった。
「なあ兄貴、その会わせたい子ってここにいるの?」
「ああそうだ、中で待ってるからな」
ロイドとガイさんが中に入っていったので僕とフィーも後に続いた。
「ここだ。中で待たせているから早く入ってくれ」
「分かったよ、そうせかさないでよ兄貴」
……何かガイさんの様子がおかしいな、まるで何か企んでるような感じだ。ロイドが部屋の中にはいると中には女の子がいた。
「あ、ガイさん……お帰りなさい……」
「ただいまティオ。ロイド、紹介するよ、この子はティオ・P・バニングス。お前の妹になる子だ」
「え……俺に妹!?」
ガイさんの突然な紹介にロイドは驚いていた。何かこの光景見た事あるな……っていうかあの子はまさか教団にいた生存者の子じゃないか。
「あ、兄貴!どういう事だよ!事情を説明してくれよ!」
「ああ、この子はとある事件に巻き込まれた被害者でな、何とか俺たちが救出して今まで病院で生活していたんだ。でようやく退院できるくらいには回復したから家に連れてきたんだ」
「でもこの子の親は心配してないのか?早く返してあげた方がいいんじゃないか?」
「親はいないんです……」
「えっ?」
ロイドの言葉に少女、いやティオが悲しそうに呟いた。
「私の両親は私を攫った奴らに殺されてしまったんです……だから帰る場所は私にはありません」
「そんな……俺はそんなことを知らずに何て酷い事を……」
「気にしないでください、貴方は何も悪くないんですから……」
ティオはそう言うが表情は暗いままだ。ロイドはそんなティオに近づいていくと彼女の目の前で自分の頬を殴った。
「な、何を……」
「……俺は君を悲しませてしまった。こんな形でしか自分を罰することが出来ない。本当にごめんな」
「……真面目な方なんですね、気にしなくてもいいのに……」
「いや知らないからいいなんて言う事は無いよ。誰でも触れられたくないことはあるんだ、例え知らなくてもそこは触れてはいけないと俺は思っている。だから謝らせてくれ、ごめん!」
ロイドはそう言って土下座をする。ティオはどうしたらいいかオロオロしていた。
「ロイド、そこまでにしておけ。ティオが困ってるだろ?なあティオ、実際に会ってみてどうだ?俺の弟は怖いか?」
「……はじめはビックリしましたけど……優しい人だって思いました」
「なら問題ないだろう?ロイドならきっといいお兄ちゃんになるさ、なあロイド」
「ああ、事情は分かったよ。俺はティオが家族になることに何の反対もない」
「……本当にいいんですか?得体の知れない子がズカズカと入ってきたというのに……」
「そんなことないさ。俺たちはこうして知り合えた、ならもう知らない仲じゃない。今日から家族になるんじゃないか。だからよろしくな!」
ロイドはそう言ってティオに手を差し伸べた。
「……はい、よろしくお願いいたします……ロイドお兄ちゃん……」
「へへっ、何か照れくさいな」
二人はそう言って握手をかわした。
「私たち、完全に蚊帳の外だね。リィンお兄ちゃん」
「そうだな……ってお兄ちゃん?」
「うん、何だかわたしもそう呼んでみたくなって……駄目かな?」
「いや全然いいよ、むしろ新鮮な気分だしね」
「ありがとう、お兄ちゃん」
フィーのお兄ちゃん呼びに僕は顔を赤くしてしまった、そんな僕たちのそんなやり取りをガイさんは微笑ましそうに見ていた。
後書き
ティオの両親は原作のゲームでは死んでませんがこの小説では故人になっています。その代わりティオをロイドの妹にしました。ぶっちゃけこれがやりたかっただけです。
――――― オリキャラ紹介 ―――――
『イメルダ』
D∴G教団の一員でヨアヒムに心酔している女性団員。自らも優れた頭脳の持ち主で改造魔獣を作り上げた。
キャラのイメージはワンパンマンのサイコス。
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