獣篇Ⅰ
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8 人の家では、お行儀よく。
_「銀時。お前に話しておくべきことがある。」
そう言いながら銀時を見ると、彼はジャンプの上からこちらを覗いた。
_「…なんだァ?どうした?急に。」
言うべきか、言わぬべきか、とても迷う。
迷った挙句、結局私は、言うことにした。
_「実はな、銀時。以前に、私は高杉にチップで監視されていると、話しただろう?
それでな、高杉に外出許可を出してもらった旨が、『真選組の、監察』なんだ。
しかも超めんどくさいことに、それに関してのレポートも出すように、と義務付けられている。
出さねば即、高杉の船から、迎えが来るだろう。
銀時は、ここまで私の話を聞くと、持っていたジャンプを机の上に置いた。
そこでだ、銀時。仮に高杉らが迎えに来て、私が万事屋にいる、
と知ったら、確実に銀時らに宣戦布告、もしくは、
実力行使に出るだろう。
だが私は、せっかく手に入れたこの「万事屋」での思い出を、高杉らに、
ぶち壊させたくない。
守りたいんだ、銀時。だから…」
銀時が、口をはさむ。
_「真選組に、潜入でもするつもりなんだろ?」
…ズバリ、大正解。
_「そうだ、銀時。というわけで、誠に自分勝手な話だが、私を万事屋から
真選組に移籍させる、手伝いをしてくれぬか?
頼む。どうだろうか?」
しばらく間を置いた後、銀時は、口を開いた。
_「…オラァ、お前がその気なら、いくらだって手伝いをしてやらァ。
だがな、同時にお前のことが、とても心配だ。
高杉のせいである、ってことも、気に食わねェ。
それでも、お前が幸せなら、それでいい。」
…反対される、と思っていたが、その意外な答えに、私はとてもビックリした。
_「…いいのか、銀時? 本当に?」
銀時は、不敵な笑みを浮かべて、言葉を続けた。
_「…ああ。いいぜ。だがよ、潜入する前には、敵方の情報も、多少はいるだろ?
だから、ざっと真選組について、説明すらァ。」
願ったり、叶ったりだ。
_「ああ。よろしく頼む。」
私がそう言うと、彼は一枚の、人物相関表をもってきて、まず組織図の1番上の人物を指して、
説明した。
_「まずこいつが、真選組局長、近藤勲。」
_「この、ゴリラみたいな男か?」
_「そうだ。その彼の外見から、彼のあだ名は、ゴリラ。
また、新八の姉、お妙のストーカーをも務める。だから、フル通称、「ストーカーゴリラ」とも
呼ぶ。」
意外に詳しい説明が来て、ドンドン興味がわいてきた。
質問を重ねる。
_「では、この…あ、前髪V字の人、いったい誰だ?
前に出会ったときは、『御用改めである。』とか言ってきてたけど。」
_「ああ。こいつは、真選組副長、土方十四郎。またの名を、鬼の副長、もしくは、
マヨ方、マヨ狂、マヨネーズ男 etc... たくさんの呼び名がある。」
_「ってか、後半、『マヨ』ばっかりじゃない。
そうとうヤバいやつじゃん!」
_「まぁな。あとこいつは、超ド級のヘビースモーカーだ。
ニコチン依存症にかかっている。
あいつのタバコ愛は、尋常じゃねェ。だから気を付けろ。
あいつのニコチンが切れたら、何をしでかすか分からん。
隊に入ったら、気を付けておけ。」
_「わかった。気を付ける。
あ、そうだ。あの、栗色の髪で、バカデカいバズーカ砲を持った、
若めで、なかなか偉そうな奴は、誰だ?」
_「ああ。あいつは、真選組1番隊隊長、沖田総悟だ。
あいつは、隊1のドS野郎だ。目を付けられた女子は皆、ペットにさせられるから、
お前も気を付けろ。
奴の餌食だけには、なるな。」
_「わかった。気を付けておく。」
_「よし、その意気だ。
あとは、隊に入ったら徐々に覚えていくだろう。
…しっかりやれよ、零。」
_「ああ、頑張る。
では、真選組への先導を、お願いできるか?」
_「いいぜェ。」
_「では、新八君や、神楽ちゃんのために置き書きをしておきたい。
それが終わったら、頼む。」
そして私が置き書きをリビングの机の上に置いてきて、私たちは、真選組に向けて、
荷物をもって、出発した。
しばらく道を歩いていると、右斜め前方に、「真選組屯所」と書かれた看板が見えてきた。
_「ここか?真選組は。」
それに、銀時が答える。
_「ああ。ここだ。
途中までは、オレがなんとかすっから、後はお前で何とかしろよ。
達者でな、零。」
_「ああ。」
お互いに別れの挨拶を済ませると、真選組の屯所内へ入っていった。
玄関先についたので、とりあえず、お行儀よくしておこう。
_「お邪魔します。ごめんください。」
すると、黒髪の、いかにも地味そうな男性が来て、応対した。
_「はい。あれ?どうされたんですか、万事屋の旦那。」
_「山崎くぅん。今日は、万事屋にに来たこの女性の、
『真選組の隊士に応募したい』っていう依頼で、ここに来たんだけどねぇ。
今、ゴリラ局長か、マヨラ副長はいる?」
_「ええ。いますよ。中にお通ししますので、どうぞ上がってください、旦那方。」
奥で、山崎君が「局長ォ! 副長ォ!」と呼ぶ声が聞こえる。
いよいよ対面か。ちょっと緊張する。
すると、先ほどまで幹部を呼びに行っていた山崎さんが戻ってきて、
私たちを、奥の局長(?)の座敷に通してくれた。
_「ここでしばらく、待っていてください。」
と言われ、待っていると、約5分後に局長と、副長が、
座敷へ入ってきた。
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