和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第10話 宇宙の広さ 後編(vs toya koyo)
H13年7月某日 桐嶋研 side-Asumi
集まった桐嶋研の面々がtoya koyoとAiの戦いを見守る。
「さあ塔矢先生の白が入ってきましたよ。相当深い感じですが黒はどう攻めますか」
白は黒の模様に対して左辺を先手で合わせ浅い消しを選んだ。
「Aiの手はここか」「茫洋としていて、良いのか悪いのか、全くわからないですね」
黒のAiは下辺には受けず右辺を広げながら大きく攻める。
「塔矢先生も気合で根を下ろした」「そう攻められる感じもないですね」
しかし黒石が白を素直に封鎖しようとする。
「塔矢先生を相手に凄いですね。怖いですね。本気ですかね。Aiは何か怒ってます?」
あんまり厳しく攻めると、相手が生きた時にこっちが薄くなってしまう。
「美人は追わずっていう格言もあるんですが……」
美人とは標的とする弱い石のこと。直接追わず、遠回しに攻めるのが良いと言われている。
「白が踏み込んできた!」「これは受けさせれば得になりますね」
「黒は反発した」「こうなれば力比べが始まりますね」
「でた黒石は愚形の見本、空き三角だ」「これ白がハネダシたら、どうするんですか?」
「白3子のダメを詰めたってことでしょうけど、愚形の極みですよ……これは」
「当然ながら塔矢先生が来ましたよ。ハネダシです」
「これ普通ならオワ(囲碁用語で終わり)ですよね」
「Aiはここに置いた」「あれ?」「あ、そうですか」
「これ大丈夫なんですか?」「ええ~?」
これでどこも破れない。力づくで黒が抑え込んだ感じだ。
塔矢先生の次の一手が打つ手に困っての時間つなぎに見える。
「白がノビると?」「え?切れる?」「ああ、切れるなあ、確かに」
「切れるんじゃあ、白全然ダメですね」「何だこれ」
白はノビを利かして何とかシボリ形だが右辺の黒石1個もよく働いてる。
下辺の打ち込んだ白石もまだ弱く黒が優勢だ。
「つまり愚形のダメ詰めが最善手だったってことですか」「へー」
白は右辺にサバキを求めたが下辺を取られては大きそうだ。
「塔矢先生も先手で形を作り下辺を凌ごうとしてますが……」
「白はコウにもちこんだ」「けど黒はアテない」「妥協した?」
「でも無条件で活きれるなら白にとって望外の結果でしょう」
「この黒は堅い手だ」「簡明に地を取ったね」「これも厚い良さそうな手だ」
和-Ai-は優勢だと判断すると急に地に辛くなる。
右辺も白が手を入れる前にイジメがありそうだったが、黒はあえて打たなかった感じだ。
打たなくても勝てると判断したのだろう。分かりやすく上辺の決まりをつける。
「塔矢先生の白が薄みをついた」「黒の2子を取り込んだ」
「しかし黒もこちらで得しているから充分という主張だ」「なるほど……」
この後のヨセは白が目一杯ヨセるが、黒は手堅く打ち、それでも五目半という大差で勝利した。
引退したとはいえ「神の一手に最も近い男」という異名を持った元四冠の塔矢先生をAiは一蹴した。
塔矢先生は日本国内だけでなく国際棋戦でも強く、世界でもトップを争う棋士として尊敬されている。
彼は和-Ai-を使って桐嶋和さんを探していた。2年間探したけど何一つ手がかりがなかった。
だから手元にあるノートパソコンの和-Ai-を使って何とか未来の世界に戻れないかと苦悩してる。
和-Ai-に勝てるプロ棋士はこの世界にいない。
彼がAiを使って初めて持ち時間3時間の対局を指名した相手がsaiだった。
その後に緒方先生そして塔矢先生と本気で対局して私は実感した。
彼はどうするのだろう。
これから誰との対局を望むのだろう。
私は募る不安を隠せないでいた。
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