世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
動き出す夜
前回までのあらすじ―――――
「アーヴ・セルトマン・・・何者だ?」
「襲撃だ!!いきなり来やがった―――!!」
「私は君たちと戦ってみたいと思っているんだ」
「させるか・・・それを止めろ!!」
「大聖杯の――――起動だ」
★☆★☆★
「さて、見ての通りの現状になったわけだが!!」
腰に手を当て、宣言するように言うショウ。
場所は、「EARTH」ビルのある敷地内。
大聖杯からかすめ取った魔力をもとにアリスが構築した、仮住まいの建物が、芝生の上にポンと置かれるように設置されている。
その一階部分の、食堂兼会議場に集まっているのだ。
とはいえ、登録メンバー全員がそろうほどの広さはない。
一旦落ち着かせるため、ショウは帰宅できるメンバーは全員家に帰した。
しかし「EARTH」の中に部屋を持っている者も、そうでない者も、揃って口にするのは「EARTH」のことと、蒔風のこと、敵のこと。
それらは一旦纏めたうえで、あとで報告するから帰れとショウは無理矢理返したのだ。
そして、今がその報告だ。
「敵の名前はアーヴ・セルトマン!魔術教会から封印指定を受けている魔術師だ」
後ろのホワイトボードに写真が二枚張られ、資料にあったものと今の顔が張り出される。
そして、その能力と思えるものを列挙して行った。
「世界を越える灰色のオーロラ。魔術。今のところそれくらいだが・・・・教会の方から何もないのか?」
「そりゃあるわよ。あんなデカい聖杯起動されたら、黙ってるわけないでしょ」
ショウの言葉に、メガネをかけた遠坂凛が立ち上がって話し始める。
「聖杯の形からして、あれは冬木の大聖杯と同型の物だと言えるわ。どうして知ってるのかは知らないけど」
「だがそう簡単に聖杯は起動できるのか?」
「条件さえそろえばね」
聖杯の起動には、まず膨大な魔力を運用するための動力源が必要だ。
これがなくとも起動できるが、中身がすっからかんなので願いどころかサーヴァントの一人も喚び出せない。
その大元は何と言っても大地の龍脈、地脈である。
かつて冬木がその地に選ばれたのも、当時眼の付けられていない龍脈地がそこしかなかったからで、それを遠坂家が提供したからだ。
「それに関しては、条件を満たしてしまっている、と言うことだな」
「EARTH」ビルは、いわば大結合の際にアリスが、まだ綻んでいる隙間を縫って作り上げたものだ。
いわば、ある種の特異点となっている地点だったのである。
その場所はいつしか周囲の流れを統合し始め、ここ一体の中心地となっていたのだ。
「それと、設計図」
冬木の大聖杯の設計はアインツベルンの物だ。
土地を遠坂、設計図をアインツベルン、システムをマキリが受け持ったのが冬木の大聖杯。
システムは他の魔術で代用したとして、同系統とあればその設計図は必須になる。
そこでモニターが開き、調査に出た長岡からの連絡が入る。
「どうだ?」
『確かに形跡らしいものはなかったですが・・・・』
今長岡がいるのは冬木の地だ。
その郊外にある柳洞寺。その地下大空洞内に彼女はいた。
彼女自身いろいろと知識は身に着けているものの、魔術が使えたりその痕跡を見つけ出すことができるわけではない。
だが、彼女の連れている従者が、その痕跡を確かに発見していた。
「痕跡を残さぬようにし、さらに巧妙に隠しているが確かに、あの男の匂いがするぞ」
しゃがみ込む長岡の持つタブレットに、柴犬状態の凩が応える。
ここの中心には今だ聖杯は存在する。
魔力の渦と泥を讃えながら、静かに胎動し続けているのだ。
その中で、凩は確かにセルトマンのにおいを感じた。
僅かなものだったが、確かにここにセルトマンは来ていた。
『じゃあそこからか?』
「おそらく」
そうして、長岡達からの報告を聞いてショウは考え込む。
通信を切り、顎に手を当てて思考をめぐらす。
「そうして大聖杯を起動させて、あいつは一体何をする気なんだ?」
「あいつも魔術師なら、根元に至るのが目的でしょ?」
「いいや。あいつは世界を破壊し、なおそこに自分が存在出来るのかを知りたいといっていた」
「じゃあ・・・聖杯を使ってそれを?」
「だったら、最初からそんな回りくどいことをしないであの魔力をそのまま使った方が早い」
聖杯戦争のシステムは、聖杯からのバックアップで七騎の英霊―――サーヴァントを召喚し、戦い競い、撃破した最後の一組が願いをかなえる、という物だ。
そしてその真の目的は、倒され還元されたサーヴァント七体分の魔力を用いて小聖杯を満たし、その力を以って根元へと至ること。
「まあ目的が世界の破壊だとして、あいつは楽しみたいと言っていた」
つまり、そこから推測できるのは
「英霊と俺たちを戦わせるつもりか・・・・?」
そうして撃破させ、聖杯を満たして願望をかなえるのか。
そこで、しばらく黙りこんでいた真司が手を上げて質問してきた。
「あのさ、大聖杯とか小聖杯って違うのか?」
「・・・・あぁ・・・」
至極もっともな質問だ。
そもそも、ショウと凛の話は魔術師にしかわからないし、他の残ったメンバーも帰ったメンバーもちんぷんかんぷんだ。
ここで、簡単に「冬木の聖杯戦争」の内容を述べておく。
聖杯聖杯、と口にしてはいるが、この戦争には「大聖杯」と「小聖杯」の二種類が存在する。
大聖杯は冬木の|地脈(マナ)を枯らさぬように魔力を吸い上げ、蓄えていく。
そしてそれが一定まで溜まると、マスターたりうる魔術師に令呪を授け、サーヴァントを召喚させるのだ。
そしてそのサーヴァントが戦いに敗れると、魂は魔力に変換されて小聖杯へと収められる。
しかし、サーヴァントとはもともと「座」へと上げられた「英霊」だ。帰る場所は必然的にそこになる。
七騎すべてのサーヴァントの魂を小聖杯へと収め、それらが一気に「座」へと帰る瞬間。その力を以って穴をうがち、根元に至るのが「聖杯戦争」という儀式のあらましだ。
ちなみに、根元に至るには七騎だが、単に願望機としてなら六騎で足りる。
これが、最後にサーヴァント自身の望みをかなえることができるという物であり、最後までマスターが(根元に至る目的であるなら)令呪を自害させるように残さねばならない理由だ。
つまり、大聖杯だけでは聖杯戦争は意味を為さない。
倒されたのちの魔力と化した魂を収める「小聖杯」が必要なのだ。
「おそらく、今の静けさはそれの準備中なんだろうな・・・・」
だが、その説明をしたことでショウはさらにわけがわからなくなった。
こうして見直して見ると、セルトマンの目的からしていちいち小聖杯に溜める必要などないのだ。
魔力が必要ならば、大聖杯で汲み上げた魔力をそのまま一気に使用すればいい。
小聖杯から「座」へと還ろうとする英霊たちのパワーなど必要ないはずだ。
(まさかそこまでしないと破壊できないと思っているのか・・・・?まあ確かに保険としては確実だが・・・・)
「うーん・・・・・」
「大丈夫か、城戸」
「大丈夫だ。どうせ最後まで理解できないだろ」
「蓮!!お前人が一生懸命理解しようとしてんのにそーいうこと言うなよ!!」
「事実だろうが」
「じゃ、じゃあお前わかるのかよ!!」
「わかるわけないだろ。ただ、システム上俺たちは敵を倒してもいいのか?と言うことだけは聞いておきたい」
そう。
目的や手段はどうあれ、こうして大聖杯を起動させたのだ。そして「楽しい」というセルトマンの言葉。
あの男はまず間違いなく英霊たるサーヴァントの召喚を行うはずだ。
そしてそのサーヴァントを倒すことができたとして、それが相手の計画の上ならば倒すわけにはいかなくなってしまうのではないか?
「それなら大丈夫だと思うわ」
その質問に、凛が答える。
大聖杯はその起動時から、マスターとして相応しい者を選定して令呪を授ける。
そして令呪は一人に三画一対が基本だ。
セルトマンは確実だとして、他の四人に魔術師適性があるをは思えない。
「あいつらは「与えられた」とか「賜った」って言ってたからな。あいつら自身は魔術師じゃないんだろ」
「だったら、こっちには魔術師がまだいるしね」
皆が帰宅し中、凛を始め士郎などがこの場にいるのはそう言うことだ。
セルトマンの準備が終わり、大聖杯が選定をすれば間違いなくこちらの方が戦力は上になる。
何せ、あっちにマスターは一人、こっちは六人になるのだから。
「倒してもいいし、やられてもいい。要は六体やられなきゃいいんだ」
問題は、他のことである。
魔術教会はまず確実に出張って来るだろう。
更には、冬木の聖杯を狙ってくる輩もどうにかしないといけない。
現在、冬木市の守りにはアーチャーをはじめランサーなどのサーヴァントがついている。
中には知ったことじゃない、と言って傍観を決め込むものもいるようだが、そもそも柳洞寺はあのキャスターの陣地内だ。
神代の魔術を扱う彼女が、たかだか現代の魔術師の集団に負けるはずがない。
だが、手を出しに来るのが魔術教会だとしたら、厄介だ。
その対象がこっちのであろうと、向こうのであろうと、手を貸しに来てくれるのならばありがたい話なのだが。
もしもその神秘を得ようとしてくるのであれば、妨害以外の何物でもない。
故に今、「友好的」に協力する体勢を築けるよう、一刀がそちらに向かって説得を試みている。
彼ならばうまくやるだろうし、決裂したとしてもイエスと言わせるだろう。
「今日はここまで!!怪我した奴も大していないし、とっとと寝る寝る!!」
もしセルトマンがまだ準備中なら今焦ってもしょうがない。
令呪が発現するのに意識の有無は関係ないので、気を張っても今はしょうがないのだ。
ショウはそこから外に出る。
いま彼らがいる建物は、一番上で五階程度の高さしかないビルだ。
一階部分から食堂兼会議場。二階は武器庫や医療室、三階から上は居住スペースだ。
もともとのビルを考えると、悲しくなってくる小ささだが、いずれ取り返すのだ。問題はない。
出ると、芝生の上にクラウドがしゃがみ込んでいた。
腕の包帯を巻き直して、黙々と処理してから聖杯に飲まれたビルを見上げる。
「腕、どうだ?」
「まずまずだ」
皆の勇気を収束したクラウドの一撃。
その一撃ですら、オフィナの攻撃と同等止まりだった。
オフィナの拳は少し皮が剥け、クラウドの腕は血が噴き出して力が入らなくなった。
「だが、もう一人いれば押せるな」
「ああ・・・・次は必ずやって見せるさ」
ギチリと、力の戻りつつある右腕が力んでいく。
だが、再び勇気の集束を行うには時間が必要だ。
間に合うの、だろうか。
そして、そのビルの裏で
「僕は・・・・・弱い・・・・!!!」
直枝理樹は、涙に顔を濡らしていた。
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「大丈夫なの?」
「まあな。全身くまなくぶっ飛ばされたのは久しぶりだからビビったけど」
身体にいくつかの包帯を巻きながらも、蒔風はカラカラと笑いながらヴィヴィオの勉強を見たいた。
その蒔風を案じるなのはは、今回の戦闘をレイジングハートと共に見直し、研究していた。
もしも自分たちも参戦することになれば、相手にしなければならない相手だ。
それに、そうすれば今度は守ってあげることもできる。
「相手の力はわかったんだっけ?」
「セルトマンに関してはいまだ不明。残りの四人は・・・・」
そう言って、蒔風が説明する。
ショウとクラウドが交戦したオフィナと言う男は、超攻撃力。
蒔風が戦った加々宮は、超再生力。
理樹が相手をしていたアライアは、超防御力。
そしておそらくではあるが、翼刀が迎え撃ったフォンは超対応力、と言ったところだろう。
三人はその口から語られているし、もう一人も推測だが間違いないはずだ。
「とりあえずコイツのこれ見終わったら俺も対策会議に出るから」
「えー!?終わるまでやるの~?」
「当然」
事件発生からの「EARTH」の現状から、学校も休みになると思っていたのだろう。
ヴィヴィオは机にグデッ、と倒れ込み、蒔風にチョップを入れられていた。
「ほれ。せっかくアインハルトさんがプリント送ってくれたんだから、やりなさい」
「うぇ~・・・お父さんそんなにまじめだったっけ?」
「いや?でも他人には厳しくだから、お父さんは」
「それ酷くない!?」
「この場合はほれ、なのはが真面目さんだから」
「・・・・あぁ」
「何か言った~?」
「「なんでもありませ~ん」」
ヴィヴィオは見逃さなかった。
蒔風の瞳にほんの少しの水分が溜まったのを。
何があった
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「EARTH」ビル内部。
その多くは魔力に覆われており、まともに触れれば焼き尽くされるほどの場所。
高密度の魔力は、透明に光っているものの危険なものであるのは変わりない。
その中で、セルトマンは特に気にすることなく歩を進めていた。
一緒に後をついて行くフォンは廊下の壁や床から出ている魔力の塊を避けて通るが、セルトマンはその場所も素通りしている。
肌どころか服にすら一切の跡もなく、そこを抜けていくのだ。
「やっぱりさすがぁ」
「私の完全と君の完全は違うからね。君はその相手を見切って回避、対応する見極の完全だから」
何もしないで進んでいるように見えるセルトマンだが、歩いた跡に何かを残していっていた。
セルトマンの足跡を示すかのように張られた魔法陣。
一歩進むごとに、足の裏から展開されているのかそれが刻み込まれていく。
フォンは面白そうだと言って、それを見物ついでに散歩をしているのであった。
「それにしてもセルトマンさん、もう結構歩き通しですね」
「飽きたかい?」
「もしそうでも、勝手についてきたのは俺なんで」
セルトマンはこの作業を、「EARTH」を聖杯に取り込んでから少し休憩をはさんでずっと続けている。
かれこれもう五時間近くなるだろうか。日付ももう変わっている。
その間ついてきて飽きないフォンもフォンだが、セルトマンも一切疲れた様子を見せていない。
魔法陣を描いているということは、それほどの魔力を行使しているということだ。
魔力そのものは大聖杯から借り、その大聖杯も地脈からマナを引き上げているため問題はないが、それを行使し続けているセルトマンにも、疲労の影も見えてはいない。
彼にとって魔力を行使する疲れはあっても、この程度で疲労にはならないと言うことだ。
「オフィナ達は何をしてる?」
「確かオフィナは加々宮が入った岩山崩そうとしてた。全力でぶん殴ろうとしてアライアが止めてたっけ」
「あぁ・・・・地下闘技場に運び込んだんだったか。確かに、あそこでオフィナの全力を出されたら大聖杯が吹っ飛びますからなぁ」
「で、アライアが素手で削って行ってる。人間ドリルだね、ありゃ」
「アライアの身体は回らないはず・・・・オフィナに?」
「ぶん回されてる」
「・・・・本人がそれでいいならそれでいいが」
そうしながら、さらに魔法陣を刻んでいくセルトマン。
大聖杯はそれだけでは魔力の塊。
「座」に接続し、そこからサーヴァントを召喚するのだ。
セルトマンが行っているのも、それである。
着々と準備が進んでいく。
「でも今襲撃してきたらどうするんで?」
「その為にも、彼がいます」
「あー・・・・見ないと思ったら、そゆこと」
大聖杯の設定が出来上がっていく。
聖杯戦争は、もう数時間で始まるのだ。
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「では、魔術教会は一切干渉しないと?」
「そうなるな。というか、なんでそんなところにわざわざ行かなきゃならんのだ」
イギリス・ロンドン
魔術師にとっての総本山、時計塔の一室で一刀はそこの教授と話を進めていた。
魔術教会ならば、「汚染されていない聖杯の神秘を」とかなんとか言って手を出してくるのは、考えられないくないことだ。
それを説得し、良くて協力、悪くとも不干渉の所まで持っていくのが今回の一刀の目的だ。
一刀も最初は蒔風やショウがいくべきだと言い張ったのだが、蒔風やショウが離れている間に何かあっては大変だし、そもそも交渉ならば一刀の方が得意だと踏んだのだ。
一刀も決して、そう、決して行きたくないだとか面倒くさいだとかそういうことはなかった。決してなかった。
だが、今この状況で自分が離れるのはどうかだとか、一番負傷のない自分が「EARTH」に残るべきだとかいろいろ言っていた。
休みたかった、などと言うことはない。
だが
『恋・・・一刀連れて行ったら一週間飯一杯喰わせてやる』
『ご主人様。連れて行く』
そんなこんなで、恋に連れ出されてきたのである(無論、恋が魔術教会の場所など知るはずもないので結局自分で行くことになったのだが)
(恋、一人で大丈夫かなぁ・・・・まあ平気か)
一瞬一緒に来た恋を案ずるが、彼女も呂布だ。そん所そこらの危険では大したこともないだろう。
話を戻して、魔術教会の干渉についてである。
「面倒な事を起こしてくれるな、日本人は」
「何言ってんですか。やったのはそっちが監視するはずの封印指定の魔術師じゃないですか」
「そうだったか?」
「ええ。だからできれば、封印指定執行者を派遣してもらえると嬉しいんですが」
「知らん。それくらい自分で調達しろ。知り合いのに三人くらいはいるだろう」
そっけない男だが、これはこれでありがたい。
何しろあとから「借りを返せ」等と言った厄介な事態にはならないからだ。
知り合いの封印指定執行者と言えば、衛宮家にいまだ居候状態のバゼットがいる。
彼女に頼めば、心強いことこの上ない。
男が葉巻をくわえて、オイルライターで火を灯す。
魔術師がこういった文明の利器を使うのは珍しいが、この男は特に気にもしないらしい。
曰く「魔術で同じことをしたらコストが何倍もかかる。無駄なことなどしていられるか」だそうだ。
そう、おかしいと言えばほかにも
「封印指定の魔術師って、一世代限りですよね?なんでセルトマン一族はそれが適用されないんです?」
「知るかと言っている」
セルトマン一族は、そうであるだけで封印指定のリストに載る。
本来ならば「一世代限り」で「学問での習得は不可能」とされるものに対しての封印指定だ。一族に、と言うのはおかしい。
だがそれにも興味はないのか、男は葉巻を曇らせてしっしっ、と一刀を追い出そうとする。
「私は忙しいんだ。冬木の方には手を出さないように言っておいてやるから、そっちは勝手にやっていろ」
「はぁ・・・・じゃあそのようにしますよ」
何とも、この男は日本人が嫌いなようだ。
嫌悪しているほどではないが、気に入らないのだろうか。
その割には、上着の隙間から見える下のシャツに日本語が書かれている気がする。
ともあれ、確証は取った。
お辞儀をして、一刀が部屋を出ようと席を立つ。
すると、部屋の床が一瞬で消えて二人は落ちた。
実際には足元に転移魔術が敷かれ、二人一緒に別の場所に送られたのだが。
「うお?」
「なんだこれは・・・ファック。またどこかの輩か」
「どういう・・・・」
落ちた先は、黒い部屋だ。
黒い、と言ったのは別に暗いわけではないからだ。
結構な広さがあるようで、奥までは見えないがそれなりに先までは見通せる明るさがある。
その奥から、得体のしれない唸り声が聞こえてきた。
「どういうこと!?」
「大方、冬木の聖杯を狙っている奴の妨害だろうよ。あわよくば、私を消せばここの椅子が空いて自分が座れると思っているのだろう」
「なんでそんな呑気なんですか・・・・」
「呑気だと?ファック!!いったい誰のせいで巻き込まれていると思っている。責任転嫁か、これだからやっぱり日本は嫌いだ」
「てかヒタヒタというか、ドスドスというか、って感じの足音が聞こえてきたんですが?」
「おい、早く始末するんだ」
「なんで俺だけ!?あんたも魔術師でしょ!?」
「こっちの気持ちも知らないで好き放題言うなお前!そっちが運んできたトラブルみたいなもんなんだ、お前がやれ」
「まさかあんた・・・・魔術苦手?」
「黙れ!くそ、このファッキン野郎が・・・・」
ブツブツと文句を言いながら、口元にバンダナのような布を巻きつけて覆う男。
一刀が振り返ると、そこには九つ首の化け物がいた。
しかも心なしか、喉がピリピリしてきた気が――――
「毒じゃん!?」
「今更何を言っている」
「知ってんなら最初から言ってくれない!?」
ハンカチを取り出して口を覆い、化け物―――キメラへと向かって行く一刀。
対して、男はというと携帯などをいじくっていた。
「・・・・速く倒さないと二人とも死ぬぞ」
「他人事みたいに言いますねこの野郎!!」
一刀、魔術教会にて足止め。
Mission!!
化け物・キメラを倒せ!!
to be continued
後書き
状況に対してなんか明るい感じで終わった話ですね!!
一刀の相手をしているのは・・・・ワー、ダレナンダロー
色々な思惑が組み合わさって面倒な状況のど真ん中に放り込まれた「EARTH」
まあ蒔風あたりはまだどうにかできると思ってるんでしょうが・・・・
甘いですとだけ言っときましょう!!
一刀
「次回、「EARTH」の方も大変だけど・・・こっちもやべーだろ!?」
ではまた次回
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