ゼロから始まってしまった転生生活
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第一話 ぷろろーぐ
「ごめんね、間違えて殺しちゃった☆」
「……はっ?」
目が覚めると、オレは真っ白な空間にいた。目の前には美青年。そしてその青年が口にする言葉。……うん、ヤバい。オレ誘拐されたっぽい。
「あはははは! 誘拐とは人聞き悪いね!」
「じゃあ何でこんなところにいるんだよ。オレ昨日はちゃんと一発ヌイてから寝た記憶が鮮明にあるぞ」
ついでに昨日のおかずは『ピー』が『ピピピー』してるシーンだ。
「初対面の人に下ネタ言うなんて、中々すごいよ君! セクハラだね!」
「安心しろ。もうお前と会う機会はないと思うし、男に対してセクハラする気もない」
「あはははは! やっぱ君面白いよーって、そんな話してる暇なんてないんだよね」
突然、美青年の顔が真面目になった。なんか訳ありっぽい。
「さっきも言ったけど、君死んだんだ」
「信用は一切してないけど、一応死因を聞いてみよう」
「蚊に刺されたショック死だよ」
「いやいや天地ひっくり返ってもありえねーだろ」
なんだよ蚊に刺されてショック死って。もう少しマシな嘘つけや。
「じゃあ映像見てみる?」
「見せれるもんなら見せてみろ」
「わっかたよ。…はい(ぴっ)」
青年がリモコンのボタンを押すと、空間に映像が流れ始めた。映像には月明かりに照らされた部屋が映っており、その部屋の主と思われる青年がベッドの上で寝ていた。
それはまさしく『オレ』だった。
「oh…」
「拡大するよ」
映像が拡大され、オレの顔がアップでうつされた。我ながら不細工な寝顔だと思った。それから数十秒後に、蚊がぷ~んと不快な羽音をたてながらオレの頬にくっつき、そして細長い口もとい針を出してそれを頬に突き刺した。
その瞬間――
『あばばばばばばっ! きゅ~……』
ものすごい勢いで手足を痙攣させたと思ったら、数秒後にはピクリとも動かなくなった。
「――どう? わかった?」
「……恥ずかしさで死にそうなんですけど」
「安心して! 君はもう死んでいるよ!」
半信半疑だったけど、本当に死んだんだオレ。……しかもあんな弱小生物にショック死されるなんて、末代までの恥だわ。死んどいて安心したわ。
「そんな悲惨(笑)な死に方をした君に、特別に転生の権利を与えようと思うんだけど、いる?」
「欲しいに決まってるでしょうが」
あんなバカみたいな理由で人生にピリオド打ってしまったんだ。次は『我が人生に一片の悔いなし!』とかもっとカッコいいこと言って死にたいわ。
「じゃあ契約成立だね! ついでに転生先なんだけど、魔法とか魔獣とかがいる世界なんだよねー」
「異世界ってことか?」
「ッ! 理解が早くて助かるよ。そう! 今度の世界はファンタジーな『異世界』さ!」
「おぉー!」
「しかも今回は特別! なんと君が好きなアニメの能力を上げちゃいます!」
「じゃあ王の財宝で「あっ、それは無理」なんで!?」
なんでもはダメってことなのか?
「ごめんごめん、まだ言い残してたことがあるんだけど、実はその世界には転生者があと1人いるんだよねー。それでね、その1人に王の財宝上げちゃったんだ! ごめね☆」
「それは大分厳しいんだけど…」
撃つだけで強力な能力がもらえないだけでなく、相手が持っているとは、かなり厳しいな。友好的な奴だといいんだけど、もしギルみたいに傲慢だったら、間違いなくジ・エンドだ。
「ついでにもし宝具が欲しいならAランク以上のやつはダメだからね。世界のバランス的に危ないし」
「オレにまた死ねというのか!」
それじゃあ武器系の宝具は大半がダメになるじゃん! こっちとしてはエクスカリバーとか、無限の剣製とか、カルナの宝具とか欲しかったのに! 王の財宝に渡り合えないじゃん!
「ちゃんと考えてあるから大丈夫だよ。特別に君にはB+ランクの宝具2つに、役に立つ保有スキル4つあげるから」
B+が2つか。目ぼしい宝具はあるけど、いかんせん王の財宝相手だと少し心配だな。
「B+2つじゃなくて、BランクとAランクを1つずつじゃダメか? 保有スキル2つにするんで」
「う~ん…。まぁそれならいいかな」
おー、それならオレの理想の戦士像が完成するぜ。
「じゃあ1つ目は『悪竜の血鎧』で、2つ目は『疾風怒濤の不死戦車』。保有スキルは『無窮の武練』と『騎乗』でお願いします」
「2つ目はライダーの宝具なんだ。てっきり軍神の剣とか、それこそ1つ目はカルナの鎧にして、12の試練にすればよかったのに。それでいいの? まぁ強いとは思うけどさ」
「まぁ普通ならそう思いますけど、個人的に戦車ってカッコいいと思うし、戦場でも戦力になると思うんで」
主に逃走する時とかね。あの爆走力があったら一早くに戦線離脱できるからな。
「…わかった! これ以上僕が口出しすることじゃないからね! じゃあ保有スキルの方はランク高めにして、宝具は転生後にあげるからね!」
「あざっす!」
これで転生後も安心だぜ!
「それじゃあ準備はいいかな?」
「おう、問題ないぜ」
「うんっ! 良い返事だね! じゃあ2度目の人生はカッコよく死ねるように頑張ってね!」
「(次こそ英雄みたいにクールに死んでやるぜ!)」
そう思った瞬間、オレの意識はブラックアウトした。
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