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ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで

作者:迷い猫
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幻影の旋律
  黒の土人形

 ところ変わって、同ダンジョンの安全地帯。

 リンはフラフラと覚束ない足取りで出ていった桜色の狂獣に安堵と危機感を抱いていた。
 アレを1人にして大丈夫なのか? と。

 しかし、それは何もアレを心配してのことではない。 むしろその逆。 アレに遭遇するかもしれないプレイヤーの身を心配しているのだ。

 「アレを追うぞ」

 だからこそ、葛藤の時間は思いの外短かった。

 「追うのかい? いや、アタイらはそりゃ追いたいけど、あんたは……」
 「他のプレイヤーがアレに遭遇する可能性も低いとは言えゼロじゃない。 俺にはお前たちがいたが、そいつにアレを止める術はない。 最悪、アレはプレイヤーを殺すだろう」
 「…………」

 否定できないのは、アレの内面を深く知っているからだ。
 フォラスが隣にいる《アマリ》ではなく、フォラスが隣にいない《アレ》の危険性を、リゼルもレイも、正しく認識していた。
 普段は緩く笑い、ふわふわとした印象のアマリだが、それはあくまでフォラスが隣にいればの話し。 フォラスと離れたアレは、途端に狂気の箍が外れ、完全に狂う。

 フォラスと言う存在がアマリの全てであり、フォラスと言う存在だけがアマリの世界。
 フォラス以外はアマリにとっては有象無象であり、リゼルやレイたちに友好的な態度を取ってはいるものの、それは2人が《フォラスの友人だから》なのだ。 決して《自分の友人だから》ではない。

 現在のアマリにとって、世界はたったの3色で彩られている。
 《フォラス》と《敵》と《それ以外》
 《それ以外》にカテゴライズされている中にも僅かな個体差があるとは言え、そこに《それ以外》以上の意味はない。 そして《それ以外》は簡単に《敵》へと色を変える。 例えばそう。 触ろうとしただけで……

 「アレが何をしようと、こちらに害がないのなら構わない。 だが、ここにはあいつがいるんだ。 もしもあいつがアレに遭遇したら……」
 「そう言えばそうだったね。 アタイとしたことがうっかりしてたよ」
 「そうと決まればさっさと行くぞ。 アレが向かった先にはボスがいる。 さすがに1人で戦おうとはしないだろうから、足を止めている間に追いつけるはずだ」
 「あー、リン。 それはマリちゃんをちょっと甘く見てるよ」
 「どう言うことだ?」

 ようやく立ち上がったリンは、苦笑いを浮かべるレイに問う。
 その返答は呆れと諦めが絶妙にブレンドされた、どこか困ったような声音だった。

 「リゼちゃんも言ってたけど、マリちゃんは《常識》って言うのがスッポリ抜け落ちちゃってるからねー。 ボスを見つけたら『あはー、ぶっ殺すですよー』とか言って特攻するよ、絶対」
 「お決まりの『あっはぁ!』で突撃するな、絶対」
 「……本当に人間なのか?」
 「んー、多分?」
 「まあ、フォラスがいればもちっとマシさ」

 リンの疑問に首を傾げるレイと、肩を竦めるリゼル。
 どうやらその程度の無軌道ぶりはアマリを知る者にとって基礎知識のようだ。 リンのように周到な準備を欠かさない者からすれば、頭がおかしいとしか言えない人格だが、リンは既にそれ以上の狂気に当てられていたので、そこまで驚きはない。

 「やれやれ。 こうなると索敵が使えないのは痛いな」
 「それでもここって一本道なんでしょ? 急げば追いつけるよ」
 「そうだな」

 頷いてリンは隠蔽スキルを発動。 それに続くようにリゼルも隠蔽スキルを発動し、習得していないレイを中央に前後で挟むように走り出す。
 リンもリゼルも隠蔽スキルを完全習得している上に、各種Modの影響で通常のMobに気取られることはまずない。 そんな2人が隠蔽スキルを発動すれば、敵に遭遇した場合、真っ先にレイがターゲットにされる。 と言うより、Mobからすればレイ以外にターゲットがいないのだ。

 レイをターゲットにしたMobをリゼルが素通りして、レイと共に挟撃。 後方から敵が迫った場合はリンが仕留める。
 それが元々のパーティーが分断され、3人が合流した際に決定した基本戦略だ。

 (頼むから無事でいろよ……)

 ここにはいない幼馴染の無事を祈り、リンは前を走る2人を追いかける。













 「むー……」

 リンたち3人が後を追ってきていることなど露知らず、アマリは目の前にいる奇形のゴーレムに向かって唇を尖らせた。

 索敵スキルを持たないアマリは索敵のModにある《識別》を持っていない。 そう言う細々とした戦略的なスキルはフォラスの領分であり、圏外に出る時は常にフォラスを伴っているアマリにとって、それを必要に感じることはなかったのだ。 そもそもアマリは戦闘に於いて、《何かをぶっ殺す》ことだけを求めている。 故に敵の名前になんて……これから《ぶっ殺す》相手の名前になんて、些かの興味もなかった。

 安全地帯を1人で出たアマリは、フラフラと洞窟を彷徨っているうちにそのゴーレムを見つけた。
 狭い洞窟内にポッカリと開けた空間に佇むゴーレム。 それこそまさにリンたちの話題に上っていたボスなのだが、そんなこともアマリは気にしなかった。

 殺す。 ただ殺す。
 フォラスと離れた寂しさ。 フロアボス攻略で《その辺をチョロチョロと動いている中のどれか》に触られそうになった苛立ち。 そのプレイヤーがフォラスの友人であると知った時の羞恥。 今の今まで何も殺せていない飢え。
 それらのストレスを発散させるに丁度いい獲物を見つけたアマリは、いつものように『あっはぁ』と笑ってそのゴーレムに突撃したのだ。

 ここまではレイやリゼルの予想通りの事態ではあったが、そこで誰もにとっての予想外が起こった。

 声にならない咆哮と共に振り下ろした《ディオ・モルティーギ》の一撃も、分厚い刃が地面に触れた瞬間に巻き起こる周囲を喰らい尽くす《爆裂》の衝撃波も、そのゴーレムに僅かのダメージすら与えられなかったのだ。

 アマリの筋力値は攻略組のトップクラスどころか、五指に入るほど高い。 それに加えて、とあるクエストの報酬であるレア素材をたっぷり使って強化したディオ・モルティーギの性能は火力と重量とに特化している。
 そんなアマリの一撃の火力は言うまでもないだろう。
 にも関わらず、ゴーレムはノーダメージ。

 何も防御が異様に硬いわけではない。
 アマリの一撃を前に生半可な防御は役に立たないし、どれだけ硬かろうとノーダメージで凌ぎ切るなんて絶対にできないだろう。 それはSAOで最硬度を誇る《神聖剣》の使い手、ヒースクリフでさえだ。
 ならば、ゴーレムがノーダメージでいる理由はただひとつ。

 アマリの一撃を悠々と躱し、爆裂の範囲外まで後退した。

 筋力値を徹底して上げていると言うことは、敏捷値を切り捨てていると同義だ。
 それは当然の代償。 どちらかを取ればどちらかを捨てることになる。 それが嫌ならどちらもそこそこで我慢するしかないのだが、アマリはそれをしなかった。
 何故なら、圏外に出る時は必ずフォラスがいたから。 フォラスがいなければ圏外に出ないから。

 「あっーーーーーーはぁ!」

 奇形のゴーレムに接近して、ディオ・モルティーギを振り上げて、振り下ろす。
 それだけの動作が致命的に遅く、奇形のゴーレムは攻撃範囲外に逃れてしまう。 先ほどからそれの繰り返しだ。

 誤解を正しておくと、確かにアマリは筋力値特化型のプレイヤーだが、そもそものレベルが他のプレイヤーに比べて高い。 レベルアップの際に得られるステータスボーナスを2割しか敏捷値に回していないとは言え、基礎ポイントだけでも十分な値になる。 故に、並のバランス型とほぼ同程度の敏捷値を有しているのだ。 一般的な尺度に合わせれば決して遅くはない。
 だが、奇形のゴーレムのステータスは、そんなアマリの《そこそこ速い》程度の攻撃には絶対に当たらない領域まで鍛えられている。

 フォラスのような敏捷値特化型の更に上。 《敏捷値一極型》
 筋力値を完全に切り捨てたそのステータスタイプは、アマリにとってあまりにも相性が悪い。

 「う……ばー!」

 視認できるギリギリのスピードで動く奇形のゴーレムに接近され、反応できない内に攻撃を喰らう。 反撃に出れば、それが形をなす前に攻撃範囲外に逃げられる。
 実に嫌な繰り返しになっているが、幸いなことに敏捷値一極型のゴーレムの攻撃ではアマリのHPは僅かしか減らず、それもすぐに回復していく。 この辺りは、アマリが大量に習得している《最大HP増加》のModと《戦闘時回復》の効果が十全に発揮されている。

 「うー、このままだと終わらないですよー……」

 削られたHPは瞬く間に回復していくが、問題はこの状況に終わりが見えないこと。
 フォラスの制止がない以上、敵を前にしたアマリに撤退はあり得ない。 かと言って攻撃が擦りさえしないため、《ぶっ殺す》ことができないでいる。

 アマリにとって実に嫌な堂々巡り。 かと言ってそれを打開する術を今のアマリは持っていない。

 《どんな状況だろうと力押し》 《有り余る筋力値にものを言わせて敵を圧砕する》
 それこそがアマリのスタイルであり、アマリがアマリであるための重要なメンタリティーだ。 それはアイデンティティーと言ってもいい。
 そんな極端な戦い方でも、普段であればフォラスが必ず隣にいるので苦労したことはない。 アマリが捉えられない敵はフォラスが足止めし、それを仕留めるだけで全てが解決していた。

 小細工はいらない。 単純な力で全てを喰らう。

 自身の流儀を確認したところで、アマリは先の一幕を思い出してしまう。

 フォラスと離れ離れになり、《爆裂》を使ってストレス発散をしている最中に見つけた、《そこら辺をチョロチョロと動く背景の内のどれか》が3人、アマリの意識に侵入した瞬間。 その《どれか》が何かを喚こうとアマリから意識を逸らしたその一瞬、アマリは《心渡り》を使っていた。
 完全に無意識だった。 フォラスのことをひたすらに渇望していたからこそ、フォラスの代名詞とも言える《心渡り》を使ってしまっただけなのだが、あれこそ小細工の極みだろう。

 《心渡り》

 原理はフォラスから説明されているものの、アマリはそれを全く理解していない。 いや、そもそも理解するつもりさえない。 フォラスの隣にいて何度も《心渡り》を見ていたアマリは、それを無意識で使えるまでになっていると、ただそれだけのことだ。 長年連れ添った夫婦の癖が似通ってしまうのと同じこと。

 しかし、その時点で《アマリ》のアイデンティティーは崩壊していた。
 小細工を使わないと言う誓約を、力押し以外選ばないと言う制限を、アマリは無意識の内に破ってしまっていたのだ。

 故に……

 「まずは、どうにかしてあれの足を止めないといけませんね」

 《仮装》と《現実》の境界があやふやになる。
 つい自身の口から零れた、フォラスを前にしてさえ滅多に見せない素の口調に気がつかない。

 いつもの緩い笑みでもなければ、狂気と愉悦とに染まった凶相でもない、やれやれとでも言いたげな苦笑。 《アマリ》であれば絶対に浮かべない表情のまま、《少女》は高速で思考を構築する。
 自身が取り得る最適の行動を。 目の前にいる邪魔な障害物を排除するための戦略を。

 もちろん、その間も奇形のゴーレムの攻撃が止むことはない。
 チクチクと肌を刺す脆弱な攻撃を意識の外に弾き出し、全ての攻撃をその身で受け続けていた。

 その様はさながら諦めているようにも見えるだろうが、《アマリ》の辞書にその単語がないのと同様に、《少女》の辞書にもそれはない。
 まずは足を止める必要があると理解した少女は素早く、そして的確にウインドウを操作して一振りの両手剣をストレージから取り出した。

 予備武器。 正確に言えば遊び武器だ。
 《色々な感触で敵をぶっ殺したい》と言う、極めてあれな理由によって、少女は多くの武器スキルを習得している。 そこには両手剣も当然のように含まれているが、彼女は既に両手斧を装備しているため、装備フィギュアに追加はできない。 故にソードスキルは使えないし、そもそも取り出した両手剣も《ディオ・モルティーギ》に比べれば軽量とは言え十分に重い。 どれだけ両手剣を振ろうとも当てることは叶わないだろう。

 ()()()使()()()……

 「では、参ります」

 凛と宣言した少女は両手斧を右手で保持して肩に担ぎ、両手剣を左手で構える。
 《変則二刀流》と呼ぶにしても変則すぎる構えのまま敵を正面から見据えた。 ここで初めて、少女は敵に認識を向けたのだ。

 敵はゴーレム。 《奇形の》ゴーレム。
 少女に比べればいくらか巨体ではあるが、それでもゴーレムにしては小型に分類されるだろう。 フォルムも流線型で、両腕が鋭く研磨された剣のような形状をしている。 背には翼のようなパーツ。 体表の色は漆黒。
 スピードに全てを捧げているだけあって攻撃は軽く、ゴーレム自体が軽量であることが窺える。
 ここまで特徴を列記するとそれが果たしてゴーレムなのかと疑いたくなるが、額に刻まれた刻印は間違いなくゴーレム系モンスターのそれだ。

 得た情報を冷静に分析し、そして少女は動いた。

 まずは自身を斬り続けているこの間合いからゴーレムを弾き出すための攻撃。 当てる意思のない両手剣の一撃は悠々と避けられるが、そこまでは少女の計算内だ。 ステップ回避したゴーレムに、今度は少女が接近する。

 単純な移動や攻撃は敏捷値の領分だが、跳躍は筋力値の領分だ。 瞬間移動と見紛う跳躍は一瞬でゴーレムとの間合いを詰め、右手の《ディオ・モルティーギ》が振り下ろされた。
 瞬間、周囲に爆ぜる轟音と衝撃波。 だが、それすらもゴーレムにダメージを与えることは叶わず、既に攻撃範囲外に逃れている。

 今から接近しようとも同じことの繰り返しになるだろう。
 跳躍による高速移動は便利ではあるものの、それは直線的な移動しかできない。 フォラスのように《疾空》を習得していれば別だが、それではいつまで経ってもゴーレムを捉えることはできない。

 そんなことは少女も重々承知している。
 だからこそ、少女は左手の両手剣をゴーレムに向かって投擲した。

 もちろんそんな攻撃は当たらない。
 当たらないが、両手剣が地と接触した瞬間、その地点が爆発する。

 《爆裂》
 少女が有するユニークスキルの発動条件は単純明快で、《スキル保持者の攻撃》があれば爆裂は発動するのだ。 何も武器を保持していなければならないなんて縛りはない。 その攻撃が少女のものであれば投擲物でさえ発動するしーー

 「ようやく捕まえました」

 ーー己の足による踏み込みでさえ発動する。

 両手剣の着弾によって生じた爆風にバランスを崩したゴーレムに向かい、地を強く蹴り込んだことによって発動した爆風で加速した少女が迫り、そして腕を掴んだ。
 剣のように尖ったゴーレムの腕を掴めば当然ダメージが発生するが、少女はそんなことを気にもせずに《ディオ・モルティーギ》を振りかぶる。

 「さあ、逝ってしまいましょうか?」

 ふわりと優しく笑った少女が死を齎す決殺の一撃を振り下ろす。
 が、さすがの敵もボスモンスター。 そのまま攻撃を喰らうようなヘマはせず、少女に掴まれている腕を切り離して攻撃から逃れようとする。

 そして、轟音。

 全てを飲み込む爆裂が周囲を支配した。

 爆心地の只中にいた少女は自身が生み出した衝撃波に呑まれつつも敵のHPを確認する。 吹き飛ばされたゴーレムは3本あるHPの丸々2本と最後の1本の4割が喰われ、けれどそれだけで止まっていた。

 仕留めきれなかった。
 少女は成果に快哉を叫ぶではなく、至極冷静に自分の不手際を呪う。

 たったの一撃でボスの総HPの7割以上も削っておいて、表情が晴れない理由は単純だ。
 先ほどのあれは、不意打ちであったから効果を示しただけで、2度目はないその場限りの作戦。 同じことをしようとも、ボスクラスのモンスターが搭載している高度なAIに学習され、対抗手段を取られてしまう。

 苦い顔を浮かべる少女の眼前で、その奇形のゴーレムは更なる奇形へと進化する。
 行動パターンや形態の変化。 それは一撃でHPを喰われようとも変わらず行われる。

 ゴーレムが自ら切り離した右腕が誰も触れていないのに宙に浮き、元々あった位置まで戻る。 次いで、背に生えた翼のような形状のパーツが分離して、計8本にもなる刃へと姿を変えた。 ゴーレムの僅か後ろに展開されたそれらは、全てが少女に照準を合わせるかの如く、切っ先をピタリと向けている。

 嫌な予感も束の間。

 一瞬の静寂を破るように、8本の刃が一直線に少女を目指して殺到し、そしてその身を穿つ。

 8回もの衝撃をほぼ同時に受けた少女はさすがにぐらりと傾いだ身体をどうにか立て直して眼前を睨むが、そこには既にゴーレムはいなかった。 そう知覚した時には、先ほどまでに倍する衝撃を自身の右側から受けた。

 そこから始まった怒涛の連撃に少女は抵抗する術を持たない。
 せめてもの反撃をと思い、狙いもつけずに《ディオ・モルティーギ》を振るうが当たらない。 ならば爆裂の衝撃波に巻き込もうと《ディオ・モルティーギ》を振り下ろせば早々に範囲外へと逃れられてしまう。

 微々たる速度で減少していくHP。
 そのスピードはかなり遅いが、それでも少女が有するバトルヒーリングスキルでは回復が追いつかない。 かと言ってポーチにしまってあるポーションを飲もうにも、攻撃の衝撃が意外にも強く、身体を揺さぶられて満足に取り出せない上に、苦労して取り出したポーションは何かに攻撃されて粉々に砕け散った。

 移動はどうにか視界に捉えられる。 攻撃も辛うじて視認可能だ。
 だがしかし、それに反応するには、少女自身のスピードが絶望的に足りない。

 爆裂による噴煙を幾度となくばら撒いて時間を稼いではいるものの、それも時間の問題だろう。

 それでもーー

 「それでも……」

 振り上げた右腕を切り飛ばされながら少女は言う。

 「それでも私は……」

 残った左腕を切り飛ばされながら少女は言う。

 「こんなところで死ぬわけにはいかないのです!」

 右足を踏み下ろして発生させた噴煙の中で少女は笑う。

 「あはー、間に合ったですねー」

 噴煙が晴れたボス部屋で少女は笑う。
 優しい微笑から一転、緩い笑顔を少女が……否、《アマリ》が浮かべた瞬間、地の底から響くような怒号が辺りを震わせた。

 「何してやがるんだテメェ‼︎」

 恐ろしい形相でゴーレムを殴り飛ばすリゼル。

 「あーもう! 乙女の柔肌に何てことするんだー!」

 怒り心頭に叫びながらアマリに向かって殺到する8本の刃の内、6枚までを叩き落とすレイ。

 「どうにか間に合ったな」

 落ち着いた声音で呟きつつ、裏拳の一撃を以って残った刃を弾いたリン。

 先ほど別れたはずの3人が、それぞれアマリを庇うように現れた。 
 

 
後書き
 アマリちゃんフルボッコ回。
 と言うわけで、どうも、迷い猫です。
 リンさんたちは前半パートのみの登場となりました。 後半パートでも最後の最後で登場しましたが、あれを果たして出番と言っていいのか……

 さてさて、不穏な空気漂うアマリちゃんサイドのボス戦です。
 そもそも本編でさえアマリちゃんを中心にした話を載せていないのに、コラボで載せてしまうという所業。 これぞ迷い猫クオリティ。
 《アレ》と《アマリ》と《少女》に関するあれこれはそのうち本編で詳しく触れる予定ですのでお楽しみに。

 今回のボス戦ではアマリちゃんの欠点について詳しく触れつつ、《それぞれの理由でボス戦に介入する3人》と言うのを描いています。 本当はボスを倒しきるまで書きたかったのですが、文量があまりにも多くなるので2分割の構成となった次第です。
 次話ではリンさんたちの超絶かっこいい姿を描くつもりですので是非見ていってください。

 ではでは、迷い猫でしたー



 PS.今回のボス、《奇形のゴーレム》さんはどこかの《黒の王》とは無関係です、はい。 
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