| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで

作者:迷い猫
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

幻影の旋律
  交わりの時来たれり

 
前書き
と言うわけでコラボ編です。
私が大ファンの作者様、sonasさんの作品《黒の幻影》とのコラボです。

尚、このコラボは《旋律の奏者》の世界に《黒の幻影》のメンバーがいたら、と言う話しでストーリーは進行していきます。 


つまりはifストーリーです。 もしもの私です。 ……このネタは果たして伝わるだろうか
と言うわけでどうぞお楽しみください。 

 
 「ん……」

 設定しておいたアラームの音に目を開けると、すぐそばにアマリの可愛い寝顔があった。
 いつもユルユルなアマリだけど、寝ている時は更にユルユルで、その無防備な寝顔を見て僕は思わずニヤニヤしてしまう。 あるいはドキドキしてしまう、かもしれない。 その辺りはもうすぐ2年になる結婚生活を経ても変わらないので、もしかしたら一生こんな感じなのだろう。

 サラッとアマリの髪を撫でてから、僕はベッドから抜け出すと、そのままの足でキッチンに向かう。
 料理スキルを習得しているのは僕なので、日々の食事は基本的に僕が賄っている。 それどころか、僕は裁縫スキルも持っているので、普段着ている服から戦闘用の服に至るまで、その全てが僕のお手製だ。 もっとも、さすがに下着類だけは自力で用意してもらっているけど。

 んー、さてさて、朝ご飯は何にしようかな。
 SAOは基本的に洋食系のものが多く、白米と味噌汁なんて言う日本的な朝食は望めない。 あるいはアスナさんであれば、そのうち味噌の自作までしかねないので、いよいよとなったら分けて貰うのも手だろう。 キュートなアマリのお願いであれば、あの妹煩悩のアスナさんのことだから、一も二もなく了承してくれるはずだ。
 とは言え、今はまだそれもないので却下。

 一応コンプリートしてはいる料理スキルだけど、アスナさんほど真剣に研究していなかったため、さすがにオリジナルの調味料はない。 と言うか、僕もアマリも、食事の重要度が結構低い位置にあるので、そこまでこだわりがないだけの話しだったりする。

 「時間もあるから、アスナさんに弟子入りしよっかな」

 確実にやる気のない予定を呟いてから、適当な材料をオブジェクト化していく。
 さて、調理開始だ。














 「フォラスくん、今日は何するですかー?」
 「ん? んー、折角のお休みだから家でダラダラしようかなーって。 久し振りになんの予定もないしね」
 「じゃあ、偶には私とゆっくりお話するです。 最近はあんまりお喋りしてくれなかったから寂しかったですよ?」
 「あー、確かにそうかも。 ごめんね、アマリ」
 「あはー、私は良き妻なので許してあげるですよー」

 食後のコーヒーを飲んでそんな取り留めのない話しをしていたら、唐突に電子音が鳴り響いた。
 見るとアマリにも同時に聞こえていたらしく、僕たちは顔を見合わせて首を傾げつつメニューを開き、幾つかの操作をしてクエストのログ・ウインドウを開く。 その最上段、つい最近クリアしたばかりの高難度クエスト《龍皇の遺産》の項目をクリックすると、そのページの最下部に新たな一文が追加されていた。
 【龍人の鍛冶師より頼みごとがあるらしい。 彼の元へ急げ】

 「…………」
 「…………」

 きっかり5秒の沈黙は、これをどうするべきか迷ったからだろう。

 クエストに対する僕とアマリのスタンスは、基本的に『レベリングのついで』だ。 クエスト報酬やクエストボスのドロップ品が強化素材だったり生産系の素材だったりすればその限りではないけど、それでもクエストに本腰を入れたことはあまりない。
 僕たちの現在の最優先はあくまでSAOの攻略であり、それを全うするための自己強化なのだから、当然と言えば当然だろう。 迷宮区攻略に本腰を入れず、クエストの……それも隠しクエストの攻略をメインに据えているプレイヤーもいることにはいるらしいけど、そんな変わり者を除けば殆どのプレイヤーが僕たちと同様のはずだ。
 優先順位の差である。

 「うーん、どうする?」
 「んー、このまま家でお喋りも楽しそうですけど、こっちも楽しそうですねー」
 「そう?」
 「だって、もしかしたらまた龍皇をぶっ殺せるかもしれないんですよ? 重くなったでぃーちゃんで今度こそ私がぶっ殺すです」
 「ああ、そう言うことね」

 アマリらしい理由に思わず苦笑いしてから僕も頷いた。

 「うん。 ダラダラお喋りは帰ってきてからでいいよね?」
 「もちろんですよー」













 なんだか懐かしの、けれど実際には数日振りに再会したヴェルンドさんは、誰もが予想外の姿をしていた。
 前回会った時にはなかった朱い鎧を身に纏い、背中には刀身が波打った独特な形状の大剣(確か、あの手の形状の剣をフランペルジュと言ったはずだ)と大きな盾まで装備されていた。

 まあ、ここまでは別に不思議でもない。
 彼が龍皇の直轄鍛冶師だったことは以前から知っていたことだし、元々は剛力無双の戦士だったことも、やはり前回の情報収集の際に知り得ていた事実だ。
 だから問題は、そんな彼が装備する武器と防具の全てがボロボロで、おまけに全身隈なく傷だらけと言う点だろう。 それはさながら、戦いに敗れた戦士のように。

 知り合いがそんな姿をしていることを心配して差し出したポーションを受け取ることなく、彼は唐突に語り出した。

 曰く、龍皇の城の宝物庫が何者かの手により荒らされた、と。
 曰く、持ち出された金品の中には龍皇夫妻の思い出の品が含まれていた、と。
 曰く、龍皇が封印していた《災厄の魔剣》なるものもそこに含まれていた、と。

 続けて彼はこう言った。

 「災厄の魔剣は先代の鍛冶師が打った剣だ」
 「やや小振りだが、されど斬れ味の鋭い剣だった」
 「その剣にはとある呪いがかけられている」
 「抜けば持ち主の精神を汚染し、生き物を殺すことに快楽を得るようになる」

 聞いてしまえば、それはよくある魔剣伝承だ。 要するに人格を剣が乗っ取り、何かを殺すことしか考えられない殺戮の権化と化すらしい。 前までの所有者は全員、その魔剣に魅入られ、龍人の国を脅かしたそうだ。
 だからこそ龍皇が封印し、宝物庫に保管していたらしく、今回の下手人はそれすらも盗み出したとかなんとか。

 で、本題。

 「《災厄の魔剣》を取り返してくれ、かー……。 なんて言うかど直球なファンタジーだね、これ」
 「あはー、燃える展開なのです」
 「へえ、アマリはこう言う感じのが好きなの?」
 「王道直球大好物です。 これでお姫様が攫われてたりしたら完璧ですねー。 そう言うフォラスくんはお嫌いですかー?」
 「うーん、嫌いじゃないけどあんまりね。 僕としてはもうちょっと凝った感じのストーリーの方が好きかな」
 「どんなのですです?」
 「例えば、実はお姫様が黒幕で、『龍皇様亡きこの国など滅んでしまえばよいのです』とかなんとか言いながら城を燃やし尽くす、とかかな。 もちろんお姫様の高笑い込みで」
 「それは暗い趣味です……」
 「あるいは、ヴェルンドさんが黒幕で『よくぞ持ち帰った。 褒美に貴様らをこの剣の錆にしてくれよう』みたいな。 もちろん激強なヴェルンドさんとのバトルは鉄板だね」
 「それは寝覚めが悪い趣味です……」

 馬鹿なゲーム談義で盛り上がりながら、実際のところ、そんな未来を僕たちは望んでいない。
 それらはあくまで《趣味》としての話しであって、《現実》の話しではないのだ。 ここはゲームの中だけど、それでも僕たちにとっては現実であり、その結末はハッピーエンドであってほしい。

 さて、僕たちが今いるのは70層の南西部。 とある渓谷を越えた先にある洞窟の中にあった隠し扉をこじ開け、更に進んだところにあるダンジョン。
 もちろん攻略組はおろか、僕が懇意にしている数人の情報屋すらこの場所は知らないらしい。
 と言うのも、攻略組は迷宮攻略最優先であり、一部の例外を除いてそれと無関係と断じた場所に立ち入ることはあまりなく、かと言ってそこまで攻略に本腰を入れていない中層ゾーンのプレイヤーや攻略組一歩手前のプレイヤーでは、フィールドにドラゴンタイプの強敵が跋扈するこの層を探索できるほどレベルが高くない。 万が一この層を探索できるほどレベルが高いプレイヤーがいたとしても、そもそも洞窟にモンスターが出現するわけでもなければ、鉱石が採れるわけでも、まして宝箱があるわけでもないので訪れる理由がないのだろう。
 つまりここは、いわゆる《隠しダンジョン》と言うわけだ。

 まあ、たとえ隠されていなくても、ここは敬遠されそうではあるけど。
 索敵スキル使用不可なのでソロプレイヤーには嫌われるだろうし、通路が狭いからパーティープレイにも明らかに不向きだ。

 一応、雪丸を振れるくらいの広さはあるのでいいとして(最悪、双剣を使えばいいだけだ)、はぐれないようにだけ気をつけよう。 と、そんなことを考えながらアマリの手を握ると、アマリもすぐに握り返してくれた。

 「ん……」
 「おー……」

 そのままモンスターと出会うこともなく数分後、僕たちは少し広くなった空間に出て固まった。

 「魔法陣?」
 「数字パズルですねー」
 「? ああ、魔方陣」

 口頭だと伝わりにくいボケをかますアマリに突っ込みを入れるでもなく、僕は眼前の魔法陣に目を向けた。

 そう。 魔法陣。
 ファンタジー系のゲームやアニメでお馴染みのアレが目の前にある。

 ここまでの道中に通路はなかった。
 かと言ってこの先に道があるわけでもなく、あるのは明らかに胡散臭い魔法陣だけ。
 これまで読んできた漫画や見てきたアニメ、あるいはやってきたゲームのことを思えば、これは転移系の魔法陣なのだろう。 つまり、これに乗れば別の場所に転移、みたいな。
 SAOは製作者の趣味なのか、その手のお約束を外さないところがあるのでそれを疑う必要はないだろう。 ただ問題になるのは、果たしてこれがどこにつながっているのか、だ。

 ふと隣を見ると、アマリは既にウズウズしているご様子だ。 きっと早く行きたいのだろう。
 どうせここで何を言おうと相棒を止めることは叶わないし、何より僕もちょっと楽しみだったりするので、我ながら決断は早かった。

 「じゃあ、いこっか?」
 「いくですよー」

 互いにそれだけ言って、僕たちは気負いなく魔法陣に飛び込んだ。














 「いやはや、早速後悔だなぁ、これは」

 転移特有の青いライトエフェクトが消えてから、僕はポリポリと頭を掻いた。

 予想通りあの魔法陣は転移のためのものだったようで、周囲は今までのような回廊から一転、薄暗い洞窟に早変わりしていた。
 相変わらず索敵スキルは使えないようではあるけど、そのModである《暗視》が使えるのでとりあえずは一安心だ。 この分だと、同じく索敵スキルのModである《罠看破》や《識別》も使えるだろう。 もっとも、それが事態を好転させるかと言えば圧倒的に否だけど。

 「まさか、アマリと別々に転移させられるなんてね……」

 手を繋いだまま飛び込んだはずのアマリがここにいない。 それは結構重要度の高い事実だ。

 とは言え、僕とアマリは常に一緒に行動しているわけでもないので、その点は心配ない。 別行動になろうとアマリの心配はしていないし、アマリも僕の心配はしていないはずだ。 ただ、アマリといきなり離れ離れになったことにショックがあるというだけで、別段支障はない。

 ……いや、支障はあるのか。

 「この狭さだと雪丸は使えないよね。 かと言って双剣を大っぴらにしたくないし……」

 通路が異常に狭い。
 こうなると雪丸は使えないだろう。 刺突系にのみ絞れば使えないこともないけど、それだと戦いにくいことは否めないし、何より長すぎる雪丸が邪魔で方向転換がしにくく、不意打ちに対応できない。 索敵が使えない現状でそれはあまりにも危険だろう。

 さて、こうなった場合の選択肢は少ない。

 いっそ転移結晶を使って脱出する。
 これが一番安全ではあるけど、ちょっと面白くない上にアマリを放置して帰るなんて怖すぎる。 と言うわけで却下。

 エスペーラスとマレスペーロを使う。
 あれならリーチが短いのでここでも振れるだろうけど、万が一にも誰かに見られたら面倒なのでやっぱり却下。

 体術スキルを使って先に進む。
 これなら敵に遭遇してもなんとかなるし、しかも体術スキルなら人に見られても問題ない。

 と言うか、結局は狭い環境で戦う場合のいつものパターンだ。 別に思考するまでもない。

 「まずは周囲を警戒しつつアマリと合流だね。 ……ん?」

 適当に行動指針を決めた僕の耳に、馴染み深い金属音が届いた。
 その方向に意識を向けると、かなり遠くのほうで誰かが戦っているのか、単発の音から連続的な音に変わった。 時折聞こえてくるのはモンスターの咆哮だろう。

 「やっぱり他にプレイヤーがいたみたいだね、まったく」

 双剣を装備していないでよかった。 安堵の息を吐いてから、僕は音が聞こえる方向に向かって駆け出した。

 別に人恋しいわけではない。
 ただ、そこにいるだろう彼だか彼女だかの戦闘を見物しつつ、ここに出るモンスターの情報を僅かでも集めようと思っただけだ。

 狭い洞窟を駆け抜けながら、手早く隠蔽スキルを発動。 同時にウインドウを操作して左腰に短剣をオブジェクト化させる。
 基本的に変装用の小道具だけど、この狭い環境下で使える武器は使える状態にしておくべきだ。 短剣スキルを持っていないのでソードスキルは使えないけど、それでもそれ以外にも用途はある。

 元々高い敏捷値を有する僕は、疾走スキルの恩恵も手伝って凄まじい速度が出せる。 音の発生源にすぐそこまで迫ったようで、金属音が段々と大きくなってきた。
 いくつかの曲がり道の先。 やや開けた場所が音の発生源だった。

 そこにいるのは、大きな二足歩行の狼。 ドラゴンタイプ以外のモンスターをこの層で見たのは初めてだけど、それは別に驚くことでもないので無視。 視線を合わせることで発動される識別スキルによると、モンスターの名は《ジル・ガルニエ》、レベルはこの層では破格の89。
 定冠詞がないのでボスモンスターと言うわけではないのだろうけど、中々の強敵だ。

 それに対するプレイヤーは、相反する色調の2人だ。
 1人は白。
 手に持つ純白のレイピアは息を呑むほど美しく、着ているコートもまた白い。 僕とは比べものにならないけど軽金属装備のプレイヤーで、とんでもないスピードで相手を撹乱しつつ相方が作った隙を的確についている。

 そして、その相方は黒。
 腰に差された一振りの片手剣。 細身の身体に纏う黒と紫の軽装。 その下のインナーはピッチリしていて、いくら妻帯者とは言え男の子な僕には若干刺激が強い。 そして、その手にある武器は、SAOのプレイヤーが持つはずのない()だ。

 白い少女に前衛を任せ、黒のお姉さんが弓で後方から支援する。
 SAOの常識に当てはめればいっそ異常と言っていい光景だけど、僕はその2人を知っていた。 そして、彼女たちも僕を知っているだろう。

 直接の面識はない。 けれど、ボス攻略の際によく見かける顔なのだ。
 確かキリトと仲のいいとあるお兄さんとチームを組んでいるはずだけど、今のところ彼の姿は見えない。 となると、僕と同様に相方と離れ離れにされたと見るべきだろう。

 よりによって攻略組かー
 そんな僕の気落ちを知ってか知らずか、戦闘は既に佳境に入っていた。

 プレイヤー側のピンチと言う、考えられる限り最悪のシチュエーションで……

 「あーもう!」

 一瞬の逡巡の直後、僕は岩陰から飛び出しつつ、しまっておいた雪丸をストレージから呼び出した。

 僕の見ているところでは誰も死なせない。 ただ、そのためだけに。 
 

 
後書き
ファラスくんとアマリちゃんの迷子回。

と言うわけで、どうも迷い猫です。
コラボなのに《黒の幻影》のキャラクターにセリフがないぜ! と言うとんでもない事態です。 sonasさんがお怒りでなければいいのですが……
しかも、サラッと登場した彼女たちはいきなりピンチです。 sonasさんがお怒りで(以下略

さてはて、このコラボだけで一体何ページになるのやら、完全に予想もつかない現状ですが、それでも気長にお付き合い頂ければ幸いです。

ではでは、迷い猫でしたー 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧