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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百話 シュザンナの4月


百話ですが、あんまり長くなく、シュザンナ母さんの回想しかありません。
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第百話 シュザンナの4月

帝国暦481年4月25日

■オーディン ベーネミュンデ侯爵邸 シュザンナ・フォン・ベーネミュンデ

 今年も又、新緑の季節が来たのですね。あれから13年が経ったのですね。

私の名前は、シュザンナ・フォン・ベーネミュンデ、銀河帝国ゴールデンバウム朝第三十六代皇帝フリードリヒ四世の寵姫ですわ。452年6月26日生まれの28歳ですわ、元々はアスカン家という子爵家の長女として生まれましたの、けれども生まれた頃は御本家が冤罪で死を賜った皇帝陛下の兄君リヒャルト大公に連座し取りつぶされた為に謀反人の係累として虐げられてきまして余り裕福ではありませんでした。

その頃、我が家では生活の為に累代の宝物を売りながら生活しておりました、けれども最終的には見目麗しかった私しか売る物がなくなり、僅か4才で危うく幼女趣味の商人に売り飛ばされる所でした。あの時の絶望感は幼い心にも凄まじい傷を付けて未だに忘れられませんわ。

けれども、455年にリヒャルト大公が冤罪だとわかり、翌年に皇帝陛下が即位なさると、皇帝陛下がリヒャルト大公の復権をして頂いた為に、我が家も復権し財産の返還などがありまともな生活を出来る様になりましたの、あの時から皇帝陛下こそ私の王子様でした。けれども私はしがない子爵家の娘でしたから普通に結婚して、出産し育てて行くのであろうと思っていましたわ。

けれど一度私を売ろうとした、お父様、お母様は再度アスカン家を浮上させようと私を磨いて何処かの有力貴族の妾として送り込もうと算段し始めましたの、そんなお父様やお母様を私は冷めた目で見るように成ってしまいましたわ。

それ以来、泣きながら皇帝陛下の御真影にお祈りをしながら過ごしましたの、密かにお父様とお母様のお話を聞いたところ、私は16歳ぐらいで何処かの有力貴族へ売られると相談していましたわ、やはり両親は私を物としか見ていないと更なる絶望に立たされました。

それ以来、両親との間に壁を作りながらも表面では良い娘を演じてきました、どうせ私の人生は16歳で終わるのですからと15歳のあの日までそう思っていました。そうですあの日が来るまでは。

あの日私が16歳になる年の468年2月1日、皇帝陛下の在位13回目の宴に私も参加させて頂きました、後数ヶ月で何処か知らない貴族の妾にされる身、この一瞬でも私の王子様でおられる、皇帝陛下に一目でもお姿を拝見したい、出来れば一言でもお言葉を賜りたいと敵わぬ思いで居ましたの。

けれども、神様は居らっしゃったのですね、恐れ多くも皇帝陛下が私をお目にかけて頂たうえに、ダンスを一緒に踊って下さいました。私は天にも昇る気持ちで皇帝陛下と夢のような時間を過ごすことが出来ましたの、けれど夢の時間はあっという間に過ぎてしまいましたわ。シンデレラの様に皇帝陛下が迎えに来てくれるのでは夢見ましたが、結局は音沙汰もなく諦めていましたわ。

けれども、最後に王子様である皇帝陛下と手を繋ぎ踊れたことを一生の思い出として、私を道具としか見ていない両親への当てつけに妾にされる当日に死んでしまおうと準備をしておりましたわ。

けれど宴から2ヶ月後の4月25日、我が家に誰かが訪ねてきて、両親が慌てて迎え入れていましたわ、私は関係ないから部屋に閉じこもって居ましたら、メイドのヘレーネが慌てて私を呼びに来ましたの、渋々応接室へ向かいますと、立派な身なりの貴族が来ていましたわ、あーこの男に私は売られるのかと思い絶望に身を砕きました。

けれども、その貴族の言葉を聞いて我が耳を疑いました、今でも覚えているあの言葉を。
『皇帝陛下が貴女をお見初めなされて、寵姫にとのお言葉ですぞ』
一瞬私は何が起こったのか判りませんでした、けれども次第に冷静になっていくと嬉しにより飛び上がりたい気分になりましたの。

両親を見ると、大変驚いた様子でしたが、実際はほくそ笑んでいるのがよく判りましたわ、貴族の妾より皇帝陛下の寵姫の方が遙かに実入りが良いでしょうからね、けれどもそんな事より私は王子様である皇帝陛下にお仕えできることが嬉しくて嬉しくて天にも昇る気分でしたわ。

私には最初嫌な貴族に見えた方が私を救い出してくれる天使に見えましたわ、両親は私の意見も聞かずに直ぐさま、返答していましたのが滑稽でしたわ。最早あの方々は養育費をくれただけですからね、育ててくれたのは乳姉妹ヘレーネの母であるマーリカですからね。その時必ずマーリカやヘレーネ達を連れて行こうと堅く誓いましたわ。

こうして私は夢のような皇帝陛下との日々を過ごせるようになりましたの。
皇帝陛下は思っていたとうりお優しい方で、全てが初めての私を労って下さいました。初めては痛かったけど凄く幸せな気分になれたのが昨日のように思い出せます。

私は、皇帝陛下の御側にいられるだけで幸せでしたのに更に皇帝陛下は私をベーネミュンデ侯爵夫人として叙して下さいました。ついでに父は伯爵に叙されましたけど、此だけはいらない感じでしたわ。父は私の権勢を利用しようとしている様ですが、そうはいきません、私はあの仕打ちを忘れてはいないのですからね。

そうしているうちに、皇帝陛下の御子を授かる事が出来たのです。あの時の嬉しさは今でも忘れられませんが、悲しさも同時に起こってきます。皇帝陛下は大変御喜びであらしゃりました。けれども生まれた来た子は死産と言われましたわ、けどテレーゼの事を考えれば、あの子も害されたに違い有りません!

あの時は死産だと言われましたが、何者かの手で害されたのです。ああ可哀想な我が子よ。
その時も皇帝陛下はお優しく私を抱きしめて慰めて下さいました、皇帝陛下の御優しさを益々感じましたわ。

そしてあの子が出来たとき、今度こそ守ってあげると誓ったのにも関わらず、もう少しで失う所でした。あの時は目の前が真っ暗になる思いでしたが、あの子が無事で有ったことで忘れてしまいましたが。あの子が自ら暗殺者を倒すなんかあり得ないけれど、あの状態では神様のお陰かもしれませんね。

それからあの子はスクスクと育ってくれました。あの子がいるからこそ皇帝陛下を誑かす寵姫が来ても安心して見ていられるのです、あの子は無邪気さの中に時より見せる鋭さを考えるに、あの子の才覚は相当な物でしょうね、けれどもこの世界にはその様な者を嫌う者が多くいるのです、親ばかのように子供の賢さや、才気を褒め称えてはあの子が危ないですからね、私も程々の演技を入れてあの子の成長を喜ぶ親になれなければと思っていますわ。

第三子の問題でも皇帝陛下のお優しさが心に染みてよりいっそうお仕えしますわ。あの子の為にも私は此処で立ち止まる事は出来ないのですから。けれどもいつか必ず、わが子達に危害を加えようとした輩を捜し出さして酬い受けさせてやりますわ!絶対に許しません!!


あらもうこんな時間なのね、新緑の緑が目に染みるわね。今日はテレーゼはお友達と出かけてますわ、それで親たちが集まって子供の成長に間する話をしますのよ。そろそろ皆さんがいらっしゃる様ですわ。
   
 
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